タッチ決済クレカVS交通系ICカード
「外国人旅行者の増加を見越した決済システムの改革」ということは、パンデミック真っ只中の2020年から思案されていた。
しかし、新しいキャッシュレス決済システムは皮肉にもCOVID-19の感染拡大と共に広がっていく。人同士の接触を極力避けるために現金は敬遠され、徹頭徹尾ソーシャルディスタンスを保てるキャッシュレス決済が爆発的に普及した。
そうした状況も今は昔の話になり、キャッシュレス決済分野の源平合戦は新たな展開を迎えている。
それは一言で言えば「タッチ決済クレカVS交通系ICカード」だ。
もしも首都圏内全ての私鉄でタッチ決済クレカが使えるようになったとしても、JRでそれが使えなければ「クレカだけで生活」ということは難しいのではないか。が、タッチ決済クレカを首都圏のJR路線に導入するためにはいくつかの壁がある。最も大きな壁は「通信速度」だろう。
交通系ICカードの最大の武器は「通信速度・処理速度」である。早い話が、認識パッドにカードをかざしたら即座に決済処理され、利用者の歩行を止めないということだ。これがなければ、朝と晩のJR新宿駅に大渋滞が生じてしまう。
交通系ICカードを「日本特有のガラパゴス化」と捉える声もあるが、平日朝の山手線や中央線の寿司詰め列車を一度でも体験しないとこの問題は語ることはできない。
都心の鉄道もタッチ決済クレカ対応に?
が、それでもJR東日本、しかも東京23区のJR駅がタッチ決済クレカ対応の改札機を導入する可能性は決して低くないと筆者は考えている。
東急電鉄の一部沿線では今年夏から、タッチ決済クレカで乗車できる仕組みの実証実験を計画している。当初は田園都市線を中心にした一部の駅でのオペレーションだが、2024年春には東急線全駅で同様の実験を行う予定だ。もちろんこれはあくまでも「実験」であり、結果次第では計画自体が白紙になってしまう可能性もあるだろう。
しかし、「都心の鉄道事業者が実証実験を行う」ということ自体に多大なインパクトがあり、その結果が良好であればJR東日本も腰を上げるのではないか。
「クレカだけで都心・首都圏の鉄道を乗り回せる」という近未来像の実現には、まだ数年の時間がかかるだろう。が、その仕組みは少しずつだが着実に構築されている。
【参考】
「江ノ島電鉄」全駅で、タッチ決済による乗車を開始-PR TIMES
「江ノ電バス 羽田空港リムジンバス」でVisaのタッチ決済を導入-PR TIMES
「大崎駅・武蔵小山駅・大井町駅・品川シーサイド駅-羽田空港」でVisaのタッチ決済による実証実験を開始-PR TIMES
西東京バスの空港連絡バス「青梅・羽村・福生ー羽田空港線」でVisaのタッチ決済による実証実験を開始-PR TIMES
ニュースリリース-東急電鉄
取材・文/澤田真一