トラブルの証拠として「動画」はどのくらい有効なのか
スマートフォンが普及し、誰でも手軽に動画を撮影できるようになりました。たとえば電車内で痴漢を目撃した場合や、突然街中で言いがかりをつけられた場合などには、動画が撮影できれば有力な証拠となります。
ただし、トラブルの現場で撮影する動画は、相手に無断で撮影するケースが大半です。もしトラブルが裁判に発展した場合、無断で撮影した動画がどのように取り扱われるのでしょうか。
今回は、トラブルの証拠として有用な「動画」について、裁判における取り扱いや撮影時の注意点などをまとめました。
1. 「動画」の証拠としての有用性
動画は一般的に、客観的な証拠としての価値が高いと考えられています。ただし、近年では「ディープフェイク(Deepfake)」などの技術が発展しており、動画の証拠価値が揺らいでいる部分があるので注意が必要です。
1-1. 動画は機械的に記録される|証拠として有用
動画の証拠価値が高いと考えられているのは、機械的に記録される上に、改ざんが困難であるためです。
裁判で用いられる証拠としてもっともポピュラーなのは、「書面(=書証)」と「証人の証言(=人証)」です。
しかし、書証には作成者の主観が混じる可能性があり、かつ偽造・改ざんのリスクがあります。
人証については主観が混じることが避けられない上に、記憶の混乱なども発生し得るため、その証拠価値はいっそう不確実です。
これに対して動画は、主観を排して機械的に記録されるため、撮影現場の客観的状況を立証する証拠として有用と考えられます。
また、(少なくとも以前は)技術的に改ざんが難しいと思われることも、動画の証拠価値を高める要素の一つです。
1-2. 「ディープフェイク」などの技術発展に注意
ただし、近年では「ディープフェイク(Deepfake)」など、動画を加工する技術が急速に発展しています。
加工技術の発展により、以前よりも容易に動画を改ざんできるようになりました。今後いっそう加工技術の精度が上がると、動画が「客観的証拠」としての価値を失う可能性もあるので注意が必要です。
裁判において動画の証拠価値が争われた場合は、撮影時の状況や他の証拠との整合性などを総合的に考慮して、裁判官がその信ぴょう性を判断することになります。
「動画があれば十分だろう」と考えるのではなく、その他の証拠(書証・人証)によって補強できるように、可能な限りの対応を試みましょう。