日本語の名詞には、もともと持つ意味から転じて用いられる言葉が多く存在する。「養生」もその一つ。引っ越しの時に見聞きする機会があっても、意味を知らないという方も少なくないだろう。そこで本記事では「養生」の意味や使い方、例文などを紹介する。本来の意味や2つの使い方を理解しておけば幅広いシーンで使えるため、ぜひチェックしてほしい。
養生とは?
養生の読み方は「ようじょう」。まずは、この言葉の意味や由来について解説する。
本来の姿に維持・保護すること
「養生」の意味は、本来の姿を維持したり、保護をしたりすること。英語では、“curing”や“cure”に相当する。ただし、同じ「養生」でも、使われる対象や使用シーンによって細かいニュアンスが異なる。引っ越しや建築の現場などで行う作業に用いる場合と、人を対象として身体の健康に用いる場合があることを知っておくとわかりやすいだろう。
中国で生まれた養生思想が由来
養生の由来は、後漢時代の中国。この時代は戦国時代だったため、民衆の間に無為自然に重きを置く老子や荘子などの思想が広まり、慎み深く規則正しい生活として「養生」という考え方が誕生した。養生思想はその後、疾病予防・健康保持といった医学的分野に取り込まれながら広がっていったとされる。
作業現場における養生の使い方と例文
引っ越しをはじめとするさまざまな作業現場において養生という言葉が使われる。ここからは、引っ越し・建築などで使われる養生とコンクリート施工で使われる養生について解説しよう。
引っ越し、建築などで使われる養生
引っ越しや建築の現場で用いられる「養生」は、物やその周辺をシートなどで保護して汚損・傷を防ぐことを意味する。生活に身近なシーンでは、ドアや壁、床などをブルーシートで覆ってから引っ越し作業を行う例が挙げられる。また、建築分野においては、建材の面・角に紙やビニールなどをかけて作業することを指すこともある。
【例文】
「マンションのエレベーターの中も養生しておく必要がある」
「シートは、この養生テープで留めておいて」
「この絵画は貴重なので、必ず養生してから運んでください」
「点字ブロックを施工する時は、あらかじめ周囲を養生しておく」
コンクリート施工で使われる養生
コンクリート施工では、コンクリートが硬化するまでの間、一定の温度と水分含有量を保つことが必要となる。その管理作業全般を表す言葉として、「養生」が用いられる。この場合、ブルーシートを使うだけでなく、ヒーターや特殊な薬剤を使用するなど、状況に応じたさまざまな養生の形が存在する。
【例文】
「コンクリートが乾燥しないように、養生シートを被せてから散水する」
「冬はコンクリートの凍結が心配なので、しっかり養生しておこう」
「打ち上がりを均質にするには、適切な養生が欠かせない」
マスキングとの違いは?
ペンキなどの塗装における養生のことを「マスキング(masking)」と言う場合もある。マスキングとは、塗装場所以外に塗料がかからないようシートや養生資材、マスキングテープなどで覆うことを指す。養生とマスキングはほぼ同じ意味で使われるが、厳密には違う意味合いを持つ。養生はあくまで保護のために行われるのに対して、マスキングは塗装の範囲を限定するための作業となり、同じような作業でもその目的が異なる。
健康における養生の例文・類義語
人の健康に関する養生は、「生を養う」という意味で使われ、身体の状態を整えたり、健康を増進したりすることを指す。また、病気の回復に努める意味でも用いられる。ここでは、例文と類義語・対義語を紹介しよう。
養生の例文
健康における養生は、身体をいたわるという本来の意味での使われ方だ。
【例文】
「いろいろ養生に手を尽くしてきたが、まだ効果が見られない」
「温泉に浸かって、ゆっくりと養生してください」
「よく養生したので、痛い部分がなくなった」
「長生きするには、普段からの養生が大切だ」
養生の類義語と対義語
ここでは、養生の主な類義語と対義語を紹介する。
休養(きゅうよう)
類義語の一つ。仕事などを休んで体力・気力を養うことを指す。回復を目標として一定期間休む休養に対し、養生は日常的な健康意識としての用いられ方をする。
保養(ほよう)
類義語の一つ。休んで健康を養うことを指す。養生と同じ意味で用いる場合が多いが、「目の保養になる」のように心を慰めたり楽しんだりする場合にも使われる。
不養生(ふようじょう)
対義語の一つ。健康に気を使わないことやその様子を指す。不養生を用いた慣用句として「医者の不養生」が有名だが、これは養生することを勧める医者自身が養生をしていない様子を表している。「無養生(ぶようじょう)」も同様の意味や使われ方をする。
※データは2023年3月上旬時点のもの。
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文/編集部