昨年、2022年はトヨタが誇る上級SUV、ハリアーが誕生して25周年になる。そのタイミングを機に登場したのが、これまで同クラス、同プラットフォームでクロスカントリーキャラクターに振られたRAV4にあって、ハリアーになかったPHEVモデルである。PHEV=プラグインハイブリッドは、プリウスなどでも今ではなじみ深いハイブリッドと電気自動車=EVの中間的な電動車となる。つまり、エンジンを積んではいるものの、バッテリーに外部充電できるクルマのことだ。
PHEVならではEV走行可能距離の長さ
このPHEVモデルは、すでに人気のあるハイブリッドモデルと、ボディサイズや2.5Lの4気筒エンジンは同一。エンジンの最高出力、最大トルクもほぼ同じである。ただし、ハリアーのフラックシップという位置づけであり(だから最上級のZグレードのみの設定)、パワートレーンはハリアーHV E-Four(電気式四輪駆動)のものをベースに、フロントモーターの出力アップ、バッテリーの大容量化が図られ、専用のPCU、DC/DCコンバーターの採用などによって、システム出力306psを達成している(システムそのものはRAV4 PHVと基本的に同じだという)。駆動方式がE-Fourのみなのは、そうした大パワーを確実に路面に伝えるためにほかならない。
ちなみにWLTCモード燃費は20.5km/L。ハイブリッドE-Fourの21.6km/Lに届いていないが、それには理由がある。つまり車重で、ハイブリッドE-Fourの1740kg~に対してPHEVは1950kgに達し、200kg以上重くなっているからだ(主に搭載バッテリーによる)。しかし、2t近い車重の4WD車でWLTCモード燃費20.5km/Lは立派というしかないだろう。
PHEVならではのポイントがEV走行可能距離の長さだ。ハリアーPHEVの場合93kmとされ、実質でも90km程度のEV走行を体験することができた。
そんなハリアーPHEVを走らせれば、もちろん充電済みならEV走行に徹する。ハイブリッド車でも出足がEV走行となるのだが、その距離が圧倒的に長く、そのタイミングがより頻繁となるのである。1日、30kmぐらいの走行なら、3日間は電気自動車として使えることになる。
感動したのはオールシーズンタイヤを履く(225/55R19)、路面を問わない乗り心地の良さ、上質さである。最新の新型プリウスのPHEVモデルをサーキットで走らせた経験もあるが、同じ19インチでも(幅が異なる。プリウスは195/50R19)ハリアーPHEVの乗り心地はかつてのクラウンのような滑らかで重厚な高級サルーンを思わせるタッチを示してくれるのだ。プリウスの場合はいきなりのスポーティーなキャラ変もあって、段差越えなどでやや硬い・・・という印象を持ててしまうところなのだが・・・。ハリアーはハイブリッドモデルでもトヨタの上級サルーン的乗り味が自慢だが、その上をいく極上の快適感があるということだ。これは、1950kgもの車重、その低重心化に合わせた足回りのよりコンフォート寄りのセッティングが可能になり、施されているからだろう。
しかも素晴らしく静かだ。EV走行時のロードノイズの遮断もまずまずで、とくに全体的な遮音性能が功を奏している。具体的にはウインドーのアコーティックガラス(2枚のガラスの間に遮音フィルムが挟まれている)の採用も効いているはずだ(もともとハリアーは乗用車的に静かなSUVだが)。荒れた路面でも車内がこもり音でザワザワしない点も褒められる。
操縦感覚はマイルドな仕上がり
操縦感覚については、フラッグシップ、快適感重視というキャラクターもあり、ハリアーのハイブリッドに比べ、やや穏やかな印象を持てた。交差点やカーブでのロールはしっかりと抑えつつ、ステアリングフィール、フットワークともにジェントルというかマイルドになっているというわけだ。これなら同乗者もまた、極上の快適感を享受できることになる。RAV4とは違うハリアーの立ち位置を、最大限に上質化した、装備もまた最上の(先進運転支援機能はノア&ヴォクシーや新型プリウスほどの新しさはないが)ハイエンドグレードが、このオールマイティなPHEVモデルと言っていい。
クラウンが現状、スポーティテイストもあるクロスオーバーのみの展開だが、かつてのクラウンのロイヤルグレードのような乗り味を今、望むのであれば、このハリアーPHEVは選択肢としてリストアップしていいかも知れない。
文・写真/青山尚暉