毎晩の風呂上がりに「水シャワー」
体の冷えは「万病の元」という考えから、「温活」がブームになって久しい。特に寒い季節の今、体を温めることに留意している人も多いだろう。
その温活とは真逆に「体を冷やしなさい」とすすめるのは、ナグモクリニック東京の南雲吉則総院長だ。
南雲総院長は、毎晩の風呂上がりに「水シャワー」をするのが日課。このルーティンが、「細胞から健康になり、若返るための一丁目一番地です」と著書『体を冷やせば健康になる』(光文社)で説く。
67歳にして、「実年齢より20歳若く見える」南雲総院長は、かつて「一日一食」を提唱して一世を風靡したこともある。水シャワーも、アンチエイジングに一役買っているという。
水を浴びるのは短時間でOK
この健康法のキーワードになるのが「ミトコンドリア」。
ミトコンドリアとは、各細胞内に存在する細胞内小器官の1種。1つの細胞に数百から数千個も含まれており、その役割は生きていくのに必要なエネルギーを生み出すことだ。そのエネルギーは、体内に蓄えられた脂肪を分解し、ブドウ糖や酸素と一緒に燃焼することで生まれるという。
ミトコンドリアは、「フル稼働すれば、大量のエネルギーを長時間持続的に産生し続けることができる」と、南雲総院長は説明する。この状態を、「ミトコンドリアモード」と呼んでおり、体を冷やした時に活性化するという。するとどうなるか?
“その働きが活性化すれば、脂肪の燃焼量が増えます。そのため、太っている人は自然と痩せていきます。エネルギーの産生力が上がれば、免疫細胞の働きがよくなって感染症やがんなどを防ぐ力が高まります。細胞の生まれ変わりもスムーズになるため、若々しい細胞が次から次へとつくられていきます”(本書22pより)
そうまで言われれば、俄然興味がわく。しかし、冷たい水を風呂上がりに浴びるというのは、いかにもハードルが高い。だが、水に身をさらす時間は、ごく短時間でかまわないという。やり方は次のとおり。
1. シャワーで、ぬるま湯を背中からかける。
2. 温度を下げて、背中にシャワーをかける。
3. ぐっと温度を下げて、頭からシャワーをかける。
ブルっと体が震えたら、体の内部で熱が産生され始めた合図。体を拭きながら、全身がぽかぽかする感覚を楽しもう。
(本書62pより)
あくまでも、「ブルっと体が震えた」時点まででOK。それでも抵抗を感じるなら、「ひじから先、ひざから先」だけに水をかける「プチ水シャワー」でもよいそうだ。
空腹と散歩もミトコンドリアモードをもたらす
水シャワーとは別に、南雲総院長がすすめるのが、「定期的な空腹」だ。
具体的にどうするかというと、「お腹がグーっ」となってから食事をする。これも、体をミトコンドリアモードにする効果的な方法だという。
1日3回の食事に慣れきった我々現代人には難しいかもしれない。これを習慣づけるには、お腹がなった時に、「今、ミトコンドリアが脂肪を燃焼してエネルギーに変えているんだなあ」とイメージし、その感覚を楽しむこと。そして、何か食べたいと思ったときに、「その食事が必要」か、体の声を聞くことだという。
さらに、運動も習慣化する。といっても、ジムに通って長時間汗を流す必要はない。ミトコンドリアモードという視点では、「散歩」がベストとのこと。1日に何歩歩けばよいという決まりはない。「生活そのものが若返りのステージ」ととらえ、歩ける機会があれば、とにかく歩くよう南雲総院長はアドバイスする。
水シャワー、空腹、散歩の3点セットで、身体の健康とアンチエイジングに効くこの健康法。病気ではないが、さりとて元気でもないと悩んでいる方は、トライしてみるのも悪くはなさそうだ。
南雲吉則総院長・理事長 プロフィール
1955年生まれ。慈恵医大学卒業、東京女子医大形成外科、癌研究会付属病院外科、慈恵医大学第一外科乳腺外来医長を経て、乳房専門のナグモクリニックを開業。現在は、東京・名古屋・大阪・福岡の4院をはじめ、全国を飛び回る。慈恵医大、近畿大学の非常勤講師、韓国東亜医科大学、中国大連医科大学の客員教授として教育にもたずさわる。メディア出演多数。『体を冷やせば健康になる』(光文社)は最新の著作となる。
公式サイト:https://www.nagumo.or.jp/
文/鈴木拓也(フリーライター)