『アルゴリズム取引』とは、どのようなものなのか詳しく知らない人もいるのではないでしょうか?そこで、意味や内容・種類を紹介します。メリットや問題点についても把握し、自分が望む投資方法なのか見極めるのに役立てましょう。
アルゴリズム取引って何?
アルゴリズム取引とは、具体的にどのような取引を指すのでしょうか?投資に詳しくない人でも理解できるように分かりやすく紹介します。
コンピューターが自動で金融商品を売買する方法
アルゴリズム取引は、基本的には投資信託会社や機関投資家などが使っている株やFX(外国為替証拠金取引)の取引方法です。あらかじめ設定されたアルゴリズム(手順や計算方法)に従って、コンピューターシステムが自動で株やFXの取引を高速で繰り返し行う方法を指します。
コンピューターシステムは、株価や価格推移・出来高・テクニカル指標などに応じて最適な発注タイミングで自動取引するようにプログラミングされています。例えば、「この会社の株が何円になったら何株売る」というようにプログラムするなどです。
なお、キーワードやニュースなどをトリガーとして売買を行うように組み込まれている場合もあります。
個人向けのアルゴリズム取引もある
証券会社などが顧客獲得のために、個人向けのアルゴリズム取引を提供しているケースもあります。IT技術の進化によって取引ツールの機能が向上し、機関投資家が行うような高度な取引が行えるようになったことも大きな理由の一つです。
近年では、AI(人工知能)を活用したものも登場しており、個人でもアルゴリズム取引がしやすくなっています。チャートを追っていなくても取引ができるようになり利便性が増しましたが、うまく使いこなせないと思わぬ損失を生む可能性もあります。
アルゴリズム取引の種類
アルゴリズム取引には、いくつか種類があります。代表的なものを特徴と併せて見ていきましょう。特徴を知ることは、それぞれのメリットやデメリットを知ることにもつながります。
アービトラージ系
アービトラージとは『裁定取引』のことで、同一または同等の商品の価格差を利用して売買差益を得る取引手法です。同じ商品でも取引所によっては、一時的に微妙な価格差が生まれることがあります。このような場合に、安い取引所で購入し高い取引所で売却して利益を得ます。
仕組みがシンプルなことや価格変動によるリスクがないのがメリットです。ただし、市場で裁定機会が発生するのは、ほんのわずかの限られた瞬間であるため、速さが求められます。市場を分析しつつ、裁定取引の機会を探す必要もあります。
イベント反応系
社会や経済の動向や情報が、株価の動きに影響を与えることは珍しくありません。イベント反応系とは、市場価格に影響を与えると思われるキーワードをトリガーとして取引を行う手法です。あらかじめ必要なキーワードを設定し、キーワードが出たときに自動で取引するようにプログラムされています。
一般的なキーワードは、雇用や物価・景気・金融政策に関するものなどです。社会に大きな影響を与える人物の発言が、トリガーとして設定されているケースもあります。
社会や経済の動向に素早く反応できるため、有利なポジションを取れるというメリットがあります。利益を出すためには、情報の選別や収集方法、解釈の仕方などをしっかりと見極める必要があるでしょう。
マーケット・メイク系
マーケット・メイク系は、市場に売り注文と買い注文の両方を同時に提示し売買をし、価格差を利益として得る方法です。例えば、94円の買い注文と95円の売り注文を提示し、他の投資家と提示した額で買いと売りが成立すれば、差額が利益になります。
株価が94円と95円の間で変動している限り、利益が出るのがメリットです。しかし、95円で売却する前に株価が急落し、94円よりも安い株価でしか売れずマイナスになってしまう可能性もあります。急落時に売り抜けられるように、素早い対応も求められるでしょう。
アルゴリズム取引を使うメリット
コンピューターシステムやプログラム技術の向上やAI技術の進化により、日本のみならず世界でアルゴリズム取引が注目されています。具体的にどのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
感情に左右されないトレードができる
アルゴリズム取引は機械的に取引するため、心理的な影響がなく、感情に左右されずに取引ができるのがメリットです。特に投資においては、感情を持つことが危険といわれています。
人間には感情があり、どんなに冷静な人でも、感情に左右され間違った判断をする可能性があります。例えば、株価がさらに上がることが予測できるときでも、「急落して損をしてしまうのではないか」という不安感から利益の確定を急いでしまうことは珍しくありません。
また、大きな損失を出してしまった場合に、取り戻そうと焦る気持ちから取引を続け、さらに大きな損失を出してしまうようなことも起こります。
アルゴリズム取引であれば、感情的に取引することがないため、前述のような過ちを起こすことがありません。
チャートを見る時間がなくても取引ができる
自動で取引をしてくれるため、忙しい人でも効率的に投資ができ利益を上げられます。従来の方法とは異なり、チャートを見て動向をチェックしたり分析したりする必要がなく、負担が少ないのがメリットです。
また、特定の条件下で取引するようにプログラムされているため、条件を満たしたときに素早く注文でき、タイミングを逃しにくいというメリットもあります。
投資に興味があったものの多忙で向き合う時間がなかったという人でも、手軽に始められるのは大きな魅力といえるでしょう。
市場に流動性が生まれる
アルゴリズム取引は、人間がチャートを見ながら手動で注文をする必要がありません。昼夜を問わず自動で取引が行われるので、市場に流動性が生まれ活気が出ます。
市場の流動性が高まれば、注文通りの価格で約定されることが多くなるので取引頻度が上がり、さらに流動性が高まります。
アルゴリズム取引の問題点
アルゴリズム取引には、投資家にとってプラスになることが多いですが、決して万能というわけではありません。問題点もあるので、実際に投資する前に確認しましょう。
価格の乱高下を引き起こす
『フラッシュクラッシュ』と呼ばれている価格の暴騰や暴落を引き起こすことがあり、大きな損失につながる可能性があります。
何かしらの要因で価格が一気に動いたときに、世界中のアルゴリズムがそれに反応し、短時間で売りまたは買いが発生します。コンピューターシステムが、設定した条件に合えば反応し自動で注文するようにプログラムされているためです。
実際に過去に何度かフラッシュクラッシュが起きています。中でも有名なのが、2010年にアメリカで起きたものです。ダウ工業株30種平均が前日終値と比べて約1,000ドルも暴落し、直後に急騰して元の水準に戻りました。
個人投資家にとって不利
アルゴリズム取引を含む高速で行う取引は、個人投資家には太刀打ちできないといわれています。機関投資家は資金も豊富で、最新のAI技術を搭載したプログラムを用いて日々取引を行っているのが一般的です。そのような状況下では公平な取引ができず、個人投資家が不利になります。
そのため、一部で機械的な取引を規制する動きもあります。欧州では、アルゴリズム取引を行う投資家の登録制が導入済みです。日本でも登録制の導入や体制設備などに関わる措置が検討されています。
アルゴリズム取引に興味がある人は、今後の動きに目を向けましょう。
構成/編集部