日常的に使われる『障る』の読み方と意味・使い方を解説します。同じ読み方の『触る』との違いも紹介するので、正しく意味を理解し適切に使い分けましょう。併せて、『障る』を使用した例文・英語表現も紹介します。
『障る』の読みと意味は?
『障る』の読み方と詳しい意味、同じ読み方の『触る』との違いを解説します。読み方は同じでも、意味は全く違うことを把握しておきましょう。
『障る』は妨げる・悪い影響の意味
障るの読み方は『さわる』で、意味は『物事の妨げになる』『悪い影響を与える』です。差し支える・害になるというマイナスの意味を持っている点を覚えておきましょう。一般的には人の気分がよくないときに使われるケースが多く見られます。
『障害』や『支障』に使われていることから分かるように、『障(しょう)』には隔てる・差し支えるの意味があります。後述する『触る』と意味の区別がつかないときにイメージすると、理解しやすいでしょう。
『触る』との違い
障ると同じ読み方をする『触る』には、二つの意味があります。
一つ目の意味は、『対象物に手や体の一部などを当てる、または当たる』ことです。接触や触れるという単語を思い出せば、イメージしやすいでしょう。英語の場合、touchにあたります。
二つ目の意味は、『関わる』『関係する』です。『その件には触らないでほしい』のように使用します。障るはマイナスのニュアンスで、実際に触れる意味は持っていない点が触るとの違いです。
『障る』の使い方
障るを使った慣用句を紹介します。どの使い方にも、悪い影響を与えるという、マイナスのニュアンスが含まれていることを覚えておきましょう。
癇(かん)・癪(しゃく)に障る
障るは『癇に障る』や『癪に障る』と使われることがあります。どちらも腹が立ったときに使いますが、微妙なニュアンスが違う点に注意しましょう。
癇に障るは『相手の言動が気に入らずに、腹が立つ』という意味です。『癇』はすぐカッとなり、怒りやすい気質を表しています。癇に悪い影響を与えられ、怒っていると覚えておきましょう。
癪に障るは『物事が気に入らず、腹が立つ』という意味です。癇に障ると同じような意味ですが、微妙なニュアンスの違いがあります。
『癪』について
癪とは胸部やみぞおち・上腹部に、急に痛みがするものの総称です。『さしこみ』や『疝痛(せんつう)』ともいわれ、刺されたような激しい痛みが走ります。原因は胃けいれんや子宮けいれんなどがあげられます。
極度に腹が立ったときに、胸部や腹部が痛むことがあるため、癪に障ると表現されるようになりました。
かつて癪は女性の病気とされていましたが、胃けいれんは男性にも起こります。ですが女性の病気とされていた理由は、女性の精神が不安定になりやすい時期がある、ヒステリックになることが多い性質と、結び付けられていたためです。
気に障る
気分を害し不愉快になることを『気に障る』と表します。自分の気分を害されたときだけでなく、相手を不愉快にさせたときにも用います。
- 彼のルーズな点を指摘したところ気に障ったらしく、口をきいてくれなくなってしまった
- 機嫌が悪そうな上司の態度が気に障るが、我慢するしかない
- パソコンの画面がずっとチカチカしていて、気に障って集中できない
『カチンときた』というような、感情がいら立ったり不快に感じたりするシチュエーションで使えます。
耳障り
聞いていて不快に感じる言葉や、不愉快な音がするときは、『耳障り』と表現します。耳に入って気に障ると考えると、理解しやすいでしょう。
- 耳障りな言葉は無視して、自分のやりたいことをやればいい
- 工事の音が耳障りで、作業に集中できない
- コンサートに来たが後ろの観客の声が耳障りで、アーティストの歌が聞こえない
『手触り』や『歯触り』のように、触れるという意味で『耳触り』と用いられることがあります。こちらは不愉快というニュアンスはなく、『耳触りのいい音楽』のように表現します。
『耳障りがよい」といった表現で耳触りを肯定的な意味で使うのはかつては誤用とされていました。しかし近年では受け入れられつつあるので、違いを頭に入れておきましょう。
『障る』を英語で表現すると?
障るを使った慣用句は、不快・イライラなどの気持ちを表現しています。英語で表現したいときには、どのような単語を使えばふさわしいのでしょうか。
「気に障る」意味にピッタリのフレーズ
障るを悪い影響を与えるという意味で使う『気に障る』を表現したいときにピッタリなフレーズは、『Get under someone’s skin』です。直訳すると『何者かが皮膚の下に入る』ですが、『人を怒らせる』『困らせる』の意味も持っています。
対象人物の態度や言葉・しぐさなどが気になり、不快になったり集中できなくなったりしたときにピッタリです。someone’sをmy・your・his・herなどに置き換えできます。
ほかに『人を良い意味でぞくぞくさせる』や『魅了する』の意味もあるので、どちらの意味かは話の流れで判断しましょう。
イライラした気持ちを表す
障るが使われた『癪に障る』を英語で表現したいときは、『be irritated』が向いています。irritatedには『炎症を起こして』『ヒリヒリして』のほかに、『イライラした』『怒った』の意味があります。be irritatedでイライラするという表現ができます。
be irritatedのほかに『ムカつく』『思いどおりでなく悔しい』『不快』の意味を持つ『feel offended』も、be irritated同様、癪に障ったときの表現にピッタリです。
構成/編集部