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精神科医に聞いた「大人の発達障害」と正しい付き合い方

2023.02.26

発達障害の人は予測することが苦手

益田先生 私たちの脳が行う最も重要なことの1つは、次に何が起こるかを予測することです。

毎日、電車に乗るときのことを考えてみてください。自分の財布がどこにあるか、改札口でのやりとり、どこに並んで、退屈な時間はスマホで何を調べたり、読むのか、脳は無意識に、ほとんど自動で行ってくれます。電車に乗るという、実は複雑な作業も、意識して考える必要もなく、僕らはただスマホの画面に集中するだけです。

これは、脳が過去の経験に基づいて予測し、それに基づいて自動で動いてくれるからできる技です。その予測から外れないからこそ、僕らは煩わしい作業を意識する必要もないのです。

このようなことは、私たちの日常生活の中で常に起こっています。例えば、ベルが鳴ったとき、脳は「これから誰かが部屋に入ってくる」「授業が終わった」と予測します。また、空に暗い雲が見えたら、脳は「もうすぐ雨が降るかもしれない」と予測します。

予測することは、次に起こることに備え、私たちを取り巻く世界の意味を理解することにもつながります。私たちの脳は、常に五感から情報を集め、それを使って予測を更新しています。時には予測が外れることもありますが、私たちの脳は経験から学び、適応する能力に長けているのです。

しかし、発達障害の人は、この予測することが苦手です。予測の精度が悪いので、日常の様々な出来事が「不器用」に見えてしまうのです。何気ない作業にもイライラしたり、驚いたり、集中力が必要だったり、ミスしてしまうのも、この予測する力が弱いからです。

マニュアル通りからはずれた動きが苦手

益田先生 もう一つ、発達障害の特性として、記憶していく知識の整理の仕方が下手だという点があります。具体的なものは覚えられても、具体的なものを合わせて抽象的な概念にしていく、応用させるようなものに変えていくというのは苦手です。

具体的なものから抽象的な知識にまとめる、という脳の工程がうまくできないので、マニュアル通りにしか動けません。少しマニュアルからずれてしまうと、混乱し、動けなくなってしまいます。マニュアルから外れても、過去の経験を交えて自分で応用したり、創意工夫するのが苦手です。

頭の中は、片付いていない家の中のようで、記憶をしていても、いつどこでその記憶を使えば良いのか分かりません。そして、片付けるのが苦手な人同様に、発達障害の人は脳内の記憶や知識の整理や片付けが苦手なのです。なので、いつまでも同じことに執着したり、忘れられず、苦しんでいたりします。

また、自己中心的な視点を離れ、別の視点に立って考えることが苦手です。いわゆる「相手の立場で考える」というのが苦手です。

なので、同じやり方を続けることに固執し、新しいやり方に切り替えるのが苦手です。新しいもの、そのものも苦手です。相手に気持ちを考えることも苦手で、相手が次に何をしたいか、何をして欲しいかを「予測」することも苦手です。

白黒思考になりやすい傾向も

――生きるのがとても苦しい感じが伝わってきます。辛そうですね。

益田先生 さらに発達障害の人は失敗しても経験から学ぶというのがとても苦手で、白黒思考になりやすい。こういうことで失敗した、じゃあ次からもうやめよう、となってしまう。

たとえば人に親切にして上手く行かないと、もう誰に対しても親切にするのやめる。極端になりやすいというか、パターンが少ないんです。

今回はこういうパターンなんだけれども、そうでない時もあるな、この人にはこうしたらいいけど他の人にはこう言ったらいいな、というのが苦手です。整理されてないので、要るか要らないか、捨てるか捨てないか、になってしまうのです。

発達障害の人は曖昧な情報、不確かな情報を、曖昧なまま、不確かなまま抱えていくことが苦手です。なので、相手の実情がわからず、情報が整理されないまま、すぐに結論を出したり、行動に移そうとします。

人間の好き嫌いがはっきりしているのも特徴で、好きでも嫌いでもなく職場の人間だからそれなりの距離で付き合う、というのが苦手です。人間関係を好き嫌いという感情の2つのカテゴリーのみで捉えがちで、複雑で多元的な人間のあり方をうまく理解することが苦手です。これらを白黒思考と呼びます。

「甘え」ではなく「特性」

――とても大変だと言うことがわかりました。その上で、発達障害に関する重要な課題を教えてください。

益田先生 問題は、世間がこういう(発達障害の)特性がある人のことを「甘え」だとか言うことです。忘れ物するのは甘えだ、人の立場に立って考えられないなんて失礼な奴なんだとか言うのですが、そうではなくて「特性」なのです。

すごく意地悪なことをしているとか、我慢が足りないとか、人をバカにしているから失礼な態度を取ってやろうとか、そういうわけではなくて「特性」なのだ、ということをまず前提としてお話したいと思います。

また、これらは程度の問題であり、大なり小なり、発達障害以外の人にもあるのですが、それらの中で、程度が甚だしいものをグレーゾーンと呼んだり、障害と呼びます。それは身長や運動神経に個人差があるのと同じで、発達障害傾向も多くの人間が持つ特性であり、その程度には差があるということです。

そして、発達障害に関しては啓発不十分なところも多いです。

世の中の人は発達障害に関して、まだよくわかっていない点が多いのではないかと思います。一方で、「うつ病」はだいぶ一般化して、うつ病と診断することには抵抗感がなくなったドクターはたくさんいますが、発達障害と診断することに抵抗があるドクターはたくさんいるような気がします。

僕はうつ病、双極性障害、統合失調症というのは、慎重に診断を付けるべきだと思います。その上で、発達障害の方がまだパーセントも多いし気軽に付けられる。ですが、まだまだ社会が「発達障害」に慣れてないんだろうなと思います。

発達障害を受け入れることがポイント

――では発達障害に対して正しい知識を得ることが大切だというのが益田先生の主張なのですね?

益田先生 そういう人もいるんだ、という知識が大事です。L G B TQと同じで、そういう人たちもいるのだ、と知識として理解することが重要です。ニューロダイバーシティという思想や動きがあるのですが、僕は世界を出来るだけフラットに捉え、みたいものを見るのではなく、そのままの現象として受け入れ、正しく動くことが個人や社会にとって、有益ではないかと思います。

発達障害傾向のある人は目立つので、ちょっと失礼なことを言ってしまうとか、空気が読めないことをして周りからいじめられたり、目をつけられるということも結構多いなと思います。それで会社を辞めてしまう、という感じです。

本人は精一杯やっているのに、誤解されてしまうなんて可哀想じゃないですか。

辞めたらまた就職が難しくなって、次に入れるところはよりブラックな場所ということもあったりします。

また、発達障害の人というのは感覚過敏があったり、人より疲れやすかったりするので、身体を動かしたり、何かの作業をする何かを作るというのも結構苦手だったりします。

発達障害の人のイメージとして「職人のように淡々と同じことをやれるからいいじゃないか」と思われがちですが、興味の偏りも結構大きいし、指先も不器用なのでなかなかピタッとはまることも少なかったりします。だから結構きついです。

なので、人格を否定するのではなく、彼らの苦しみを理解し、一緒に生きていくスタンスが重要だと思います。

発達障害を疑ったらまず観察してみる

――なるほど!私は学生時代、バイト先で何回指示しても忘れる人にキレたことがありますが、もしかすると彼は発達障害だったのかもしれません。私のようなミスを犯さないためにも、職場では発達障害を疑われる人にどう接して行ったらよいでしょうか。

益田先生 まずは相手をしっかり観察するということです。発達障害と一言で言っても、それぞれ得意不得意が違うので、どこが苦手で、どこが長所かを見極め、業務を任せていくことが重要だと思います

――わかりました!発達障害の心当たりがある人は実際に精神科医から発達障害であると言う診断を受けた方がよいのでしょうか?

益田先生 心当たりがあるだけでも受診するのは良いと思います

また日常に支障があったり、転職が続いたりなど、金銭的に困っていたり、福祉の援助が必要と考えるひとも、受診してもらえればと思います

――ありがとうございました。

発達障害の特性を知り、理解し合うことで、働きやすい環境が実現すると教えてくれた益田先生。先生のYouTubeチャンネルもぜひ参考にしたい。

益田裕介(ますだ ゆうすけ) 先生

早稲田メンタルクリニック院長
精神保健指定医、精神科専門医・指導医
岡山県出身、防衛医大卒。
2019年12月14日よりユーチューブチャンネル「精神科医が心の病気を解説するCh」を配信開始。日々、精神疾患や治療法、カウンセリング技法などの解説を行なっている。チャンネル登録者数は32万人を超え、1日の再生回数は平均20万回以上(2022年7月時点)。また、患者さん同士がオンライン上で会話をしたり、相談ができるオンライン自助会を2022年3月24日より主催・運営するほか、精神科領域のユーチューバーを集めた勉強会なども運営している。

文・取材/柿川鮎子

編集/inox.

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