■連載/阿部純子のトレンド探検隊
下着なしで穿けるショートパンツ「ととのうパンツ」は、インナーに「ふんどし」の形状を採用したおうち時間を快適に過ごせるリラックスアイテム。昨年7月に実施されたクラウドファンディングの先行予約では達成率1974%と高い関心を呼び、2022年のグッドデザイン賞を受賞した。
「ととのうパンツ」の開発・販売をしているプラスチャーミング代表取締役の中川ケイジ氏は、「日本ふんどし協会」会長で、日本伝統の下着であるふんどしの普及活動に長年取り組んでいる、ふんどし界の第一人者だ。
ふんどしの形状をインナーに採用したノーパンOKのショートパンツ
「締め付けの強い下着を着けて眠ると脳が緊張と捉えてしまって、睡眠の質を下げるとも言われています。海外ではパジャマ=下着という感覚で、パジャマの下には何も着けない人も多いですが、日本人はパジャマの下に締め付けのある下着を着けている人が大半です。
日本ふんどし協会では、睡眠時や家でリラックスしているときだけでも締め付けのある下着から解放され、ふんどしを着けることで健康を促進する提案を行っています。
おかげさまでこの10年近くでふんどしに対する理解が深まり、男性のみならず、健康や美容のために着ける『ふんどし女子』も増加しました。
僕自身、今はすべてふんどしにしていて、一度着けるともうパンツには戻れません。しかし、ふんどしは着けづらいというイメージもありハードルが高いと思っている方も多くいます。ならば、ふんどしの形状を採用したノーパンで穿けるショートパンツを作ってしまおう!という発想で生まれたのが『ととのうパンツ』です。ま、僕自身が欲しいから作ったというところもありますが(笑)」(中川氏)
素材は吸水性があり、肌にやさしいダンガリーコットンを採用、内側のインナーは縫い目が直接肌に当たらないシームレス加工を施している。実用新案を取得した独自の立体構造で、中央がふんどしの形状になっており、性別を問わずストレスを感じない仕様に。
「ととのうパンツなら歩いていても、寝返りを打っても風が通るので、普段着やパジャマとして使うと快適です。購入者の4割が女性で、女性下着は締め付けるものが多いので、家でくつろいだり、睡眠の際は解放感のあるととのうパンツにしたいという女性が多いのでしょう。通常の下着と比べると鼠径部の締め付け感やムレが無いため、ととのうパンツを一度穿くと、もう普通のパンツに戻れないという人も多いですよ」(中川氏)
ととのうパンツを製造しているのは、裁断から縫製、検針までほぼ全ての工程を自社工場内に有している、福島県田村市のアブクマソーイング。同社は1990年以降、積極的に障がい者や高齢者を雇用し県知事賞や県協会賞の受賞歴がある。東日本大震災で甚大な被害を受けたが、同社の持つ技術力と復興支援も込めて製造を依頼している。
商品の発送は、長野県長野市の多機能型事業所Re.co.が担当。障がいや働きづらさを抱えながらも働く喜びを感じ、社会に貢献できる仕事をすることを目指し活動している事業所で、一つ一つ丁寧に梱包、配送を行っている。
カラーは7パターンで、それぞれインナーの色も異なる。男女兼用でサイズはSからXLまでの4サイズ。価格は1万3200円。右側には鍵や洗濯時に便利なループと、リップや小銭、鍵など小物を入れる小さなポケット、左側にはスマホが入るサイズのポケットが付いているので、コンビニなど近所の外出にも便利。
寒い時期でも着たいという要望を受けて、ロングタイプも今年4月に発売予定。マクアケの先行予約ではショートパンツを上回る3128%を達成。セットアップでパジャマにしたり、テレワークや部屋着としてもコーディネートしやすい。
【AJの読み】ふんどしの快適さと着けやすさを兼ね備えた解放感抜群のショートパンツ
2月14日が「ふんどしの日」であることから、2015年にバレンタインギフトにふんどしを贈るイベントが小田急百貨店新宿店で開催され、筆者も取材をしたが、会場では日本ふんどし協会がセレクトした100種類以上の“おしゃれふんどし”が揃っていた。
当時はまだ「キワモノ」として見ていた記憶があるが、今ではタレントやモデル、アナウンサーなど著名人にもふんどし愛好者が増えている。
「ふんどしが支持されたのは、家にいるときぐらいは、締め付ける下着から解放されて、できるだけ気持ちよく過ごしたいというニーズがあったからだと思います。8年前にふんどしのイベントをやったときは驚かれることが多かったですが、今はふんどしの良さが認知されてきて、快適な下着として受け入れられるようになったと感じています。
コロナ禍でおうち時間が多くなったことも影響しているかもしれません。マスク不足の際に、手作りマスクを作る人が増えましたが、同時期にふんどしも手作りする人が増えて、ふんどし協会でも手作りふんどしの作り方を公開していました。手ぬぐいに紐付けるだけの簡単な構造なので作りやすいこともあったかもしれません」(中川氏)
それでも、ふんどしはどうやって着けるのかわからない、トイレのときはどうするの?など、手を出しづらいと思っている人も多いだろう。そのハードルを下げたのが「ととのうパンツ」。ふんどしの快適さと着けやすさを兼ね備えた心地よいパンツだ。
近所の買い物や散歩などちょっとした外出でも穿いて行けるが、最初は「こんなにすーすーするの!?」と“ノーパンの威力”に驚く人もいるそうだが、後から普通の下着を着けると「えっ?」とギャップを感じるほど解放感があるため、ハマる人はとことんハマるとのこと。
また、昨今のサウナブームでととのうパンツはサウナギアとしても注目されている。ととのうパンツのモデルを務めるタレントの清水みさとさんは、昨年12月にサバンナの高橋茂雄さんと結婚。高橋さんは自家用サウナを3つも所有するサウナ好きで知られるが、清水さんもサウナ・スパ健康アドバイザー、サウナ・スパプロフェッショナルの資格を持ち、フィンランドサウナアンバサダーを務めるサウナ通で、二人の結婚は「サウナ婚」とも言われ話題になった。清水さんは自宅やサウナシーンでととのうパンツを愛用しているそうだ。
文/阿部純子