音楽や演劇などを評論する際に、「アングラ」という言葉が使われているのを見聞きしたことがないだろうか。独特な世界観を持つ作品を表現する時に使用されることが多い「アングラ」だが、詳しい意味を知らない人もきっと多いはず。
そこで本記事では、アングラの意味と由来、対義語について解説する。ぜひこの機会に正しい意味を理解して、日常会話に役立ててほしい。
アングラとは?
アングラは、地下を表す「underground(アンダーグラウンド)」を省略した言葉だ。まずは、この言葉の意味を見ていこう。
アングラの意味
アングラは、英語の「underground(アンダーグラウンド)」を省略した言葉。「アンダーグラウンド」には、地下という意味がある。そこから転じて、「地下のような日の目を見ない場所で行われる活動」という意味で使われるようになった。
アングラという言葉は、サブカルチャーを表す言葉として使用される頻度が高い。ただし、分野によって微妙に意味が異なるので、注意が必要だ。各分野におけるアングラの意味は以下の通り。
・演劇
演劇における「アングラ」は、反商業主義的な「アングラ演劇」を指す場合が多い。アングラ演劇とは、劇団や役者の思想を荒々しく舞台で表現する過激な演劇のこと。1960年代から70年代の日本においてブームになり、独特な世界観を作り上げた。業界の代表格としては劇作家の寺山修司が有名だ。
・音楽
音楽シーンにおけるアングラは「非商業的でアーティストの世界観を表す前衛的な音楽」という意味を持つ。バンド活動を行っているミュージシャンを表すケースもあるが、昨今ではヒップホップを演奏するラッパーを指して使われる機会も増えている。
・インターネット
インターネットにおけるアングラは、インターネット黎明期の1990年代から2000年代にかけて使用されることの多かった言葉だ。当時のインターネットは今ほど大衆化しておらず、限られた人しかアクセスできなかった。そのため、暴力性の強いコンテンツや言葉が飛び交うことも多く、その過激な状態を「インターネットはアングラ感が強い」と表現していた。また、過激なコンテンツを提供していたホームページは「アングラサイト」と呼ばれた。
・ビジネス
ビシネスにおけるアングラは、非合法もしくは合法とは呼べないグレーゾーンの商売を表す。法律の上限を超えた利子を貸す貸金業者、名義貸しなどのビジネスを指す場合が多い。
アングラの由来と語源
先述の通り、アングラは英語の「underground(アンダーグラウンド)」に由来する。その歴史は、1960年代のアメリカに遡る。
当時のアメリカでは、ヒッピー文化やベトナム戦争への反戦運動などが興っていた。地下に潜っていたそれらの活動は「underground(アンダーグラウンド)」と表現されることもあったと言われている。
日本国内では、1960年代後半に巻き起こった「アングラ演劇」ブームをきっかけに、アングラという言葉が使用され始めた。1960年代以降は、演劇に限らず、音楽や映画などのサブカルチャーを指して使用されるようになった。現在も、大衆的ではない作品を説明する言葉として使われ続けている。
シーン別の使い方
使用シーンによって言葉のニュアンスが微妙に異なる「アングラ」。ここからはシーン別の使い方を例文とともに紹介しよう。
演劇シーン
演劇シーンにおけるアングラは、「アングラ演劇」という名詞で使用されるケースが多い。
【例文】
「この前行った演劇は、舞台の俳優が縦横無尽に走り回っていて、アングラ演劇ならではの迫力があった」
「この公演は、俳優の感情表現が多彩でエネルギーを強く感じる。まるでアングラ演劇のようだ」
音楽シーン
音楽シーンでのアングラは、メディアで取り上げられないような過激なバンドやヒップホップのラッパーに使用されることが多い。
【例文】
「この前のバンドの演奏は、サイケデリックでアングラ感が強かった」
「あのラッパーはメジャーと契約せず、自分の表現を追求してアングラのトップと言われるようになった」
インターネット
インターネットにおけるアングラは、90年代〜00年代の雰囲気を表現したり、その当時に流行したアングラサイトという言葉で使用されたりするケースが多い。
【例文】
「90年代のインターネットは人口が少なく、匿名で本音だけを言う世界だったので、アングラ感が強かった」
「〜00年代のアングラサイトは、インターネットの普及と共になくなってしまった」
ビジネスシーンにおけるアングラ
ビジネスシーンでは、合法的とは言えない経営・業態のことを「アングラビジネス」と呼ぶこともある。
【例文】
「あそこの会社は、法律の制限をはるかに上回る金利でお金を貸すアングラビジネスを行っている」
アングラの対義語
アングラの対義語は、オーバーグラウンドとなる。underに対して、overを使用することで地上の日の当たる場所を指す。
また、オーバーグラウンドの類似表現には、主流という意味を持つアバブグラウンド、メインストリームなどがある。
文/編集部