相手の銀行口座番号がわからなくても、個人間で、銀行口座を使った送金が利用できる「ことら送金」という。サービスが登場した。
どのような利便性があるのだろうか。他のキャッシュレス決済サービスが持つ送金機能とどう違うのか。本記事でまとめる。
■ことら送金のイメージ
引用元:ことら送金サービス紹介サイト
銀行が提供しているアプリから送金ができる。利用には送金者、受取者の双方がことら送金に登録している必要がある。
10万円以下の銀行振り込みを安くできる送金サービスの切り札?
2022年10月11日より「ことら送金」というサービスが始まった。送金手数料が無料で、10万円以下の金額を個人宛に送金できるサービスでさる。
使い方は、「ことら送金」というスマホアプリを利用するのではなく、ことら送金に対応する銀行のスマホアプリを使って、ことら送金を選択して利用することになる。
通常の銀行振り込みと比べて、受取人がことら送金の登録済であるという条件がクリアできて、10万円以下の金額であれば、携帯電話番号やメールアドレスを指定しての送金ができるというサービスだ。
また、他のキャッシュレス決済サービスと異なり、「ことら送金」にチャージして送金するのではなく、銀行振り込みの時と同じように現金そのものを送りあうので、受け取り後現金にできないという心配はない。
■ことら送金の利用シーンイメージ
飲み会代の清算や、プレゼント代の割り勘など個人で、ちょっとしたお金のやり取りをするのに適している。
■ことら送金が利用可能な銀行のアプリ
2023年1月27日現在でことら送金に対応している銀行は、31銀行で、ネット銀行は含まれていない。メガバンクは対応に含まれているので、送金手数料を少しでも安くしたい場合に重宝する。対応する銀行は、ことら送金サービス紹介サイトで確認できる。今後利用可能な金融機関の拡充予定も示されている。
LINE PayやPayPayによる送金との差別化ポイントは「現金化コスト」か?
個人間の送金サービスは、キャッシュレス決済の一機能としても利用できる場合が多い。代表的な決済サービスで、個人間で送金できるサービスを下表にまとめた。
■各キャッシュレス決済サービスの送金機能と手数料の比較表
いずれのサービスでも各サービスの残高を送りあう形なので、銀行口座に出金する場合は、各サービスからの出金指示が必要となる。送金可能な額は、1日当たり10万円ほどなので、ことら送金と遜色はない。
また、原則、本人確認書類の提出や住所などの情報登録を行なって、認証を得ないと送金や銀行への出金サービスを利用することができない。この点も本人確認を行なわないと口座を開設できないので、ことら送金と同じである。
手数料の視点では、送金手数料は無料だが、キャッシュレス決済サービスから銀行に出金する場合には、100円から200円程度の手数料がかかる。無料で銀行口座に戻す方法もあるが、キャッシュレス決済ではなく、銀行振り込み決済を含めた現金が必要になるシーンが多ければ、ことら送金を使う機会が想像できる。
■キャッシュレス決済での送金イメージ(LINE Payの例)
メッセージやり取り画面上で送金の履歴が残るし、メッセージ付与などもできるので、ユーザー同士の使い勝手は悪くなさそう。
キャッシュレス決済サービスでは、現金を持たずに支払いができるという特長に加えて、独自のポイント還元施策が利用できるという特長がある。これによりお得さを感じた消費者が使っているというのが実情だろう。
そのため同じキャッシュレス決済サービスを利用するユーザー同士で送金し合うほうが便利に感じることもあれば、銀行口座での現金の管理をしたいユーザーは、ことら送金を使った方がお得に送金し合えることになる。一長一短なので、自分と受取人が一番お得になる送金方法を利用するに限る。
今後、PayPayやLINE Payがことら送金を利用する機会はあるのか?
ことら送金の説明では、相手のアプリを気にせず送れます。という触れ込みでサービス利用を促進している動画があった。(下図)
技術的には、キャッシュレス決済サービス事業者がことら送金のインフラを利用することもできそうだが、銀行決済と、非銀行なキャッシュレス決済サービスが、直接現金のやり取りとしての送金で繋がることはあるのだろうか。
今後の動向に注目したい。
取材・文/久我吉史