内外のデザインや走りの機能を徹底的に磨き上げたうえで、定評のある安全性能も、さらに進化させて登場した新型クロスオーバーモデル「クロストレック」。見るからにアクティブでスポーティなコンパクトボディに、たっぷりと包め込まれたSUBARU流儀は、ライフスタイルをどのように輝かせてくれるのでしょうか? DIMEの安田編集長と自動車ジャーナリスト・佐藤篤司氏が「スバル里山スタジオ」でじっくりチェックしました。
コンパクトでありながらも、ブラックのパーツ類などを装備したことでアウトドアシーンなどで存在感が光ります。
コンパクトなボディに詰め込まれたすべての機能が本格派
DIME編集長・安田(以下、安田):クロストレックってあまり聞いたことがない車名ですね?
佐藤篤司:これまで、スバルでもっともコンパクトな「SUBARU XV」というモデルがありましたが、そのグローバル名が「クロストレック」なんです。今回のモデルチェンジをきっかけに世界基準へと改名したわけです。
安田:車名にはどんな意味があるんですか?
佐藤:「クロスオーバー」と「トレッキング」を合わせて創り出されました。車の個性を端的に表現しているといえます。
安田:アクティブなアウトドアライフを快適にこなせる車といったところでしょうか。
佐藤:その通り! コンパクトで扱いやすく、思い立ったらお気に入りのギアを積み込んでレスポンス良く、スポーツやキャンプなどを楽しむフィールドへ飛び出していくには、ぴったりなんです。
安田:よく見ると所々にワイルドな使い方にも対応できそうなデザインがありますね。
佐藤:リアバンパーをちょっぴりワイルドなゴツゴツデザインにしたり、ハードな印象のプロテクター類で車体を取り囲んだり、本物としての実用性を実現しつつ、デザイン上のアクセントとしてもけっこう効いていますよね。
安田:街乗りにもいけそうですね。
佐藤:はい。トレッキングブーツも立派なシティファッションとして通用していますから、問題ありませんよね。
安田:コンパクトであっても、むしろ存在感が光る!
ちょっぴりリアを上げ、前に進むようなやる気イメージを感じさせる軽快なデザインのサイド・フォルム。
ここに注目!!「デザイナーの押しポイント」
気分が高まるデザインを見て下さい
SUBARU商品企画本部デザイン部主査:井上恭嗣さん。
自身もフィッシングを中心にアウトドアライフを徹底的に楽しんでいるクロストレックのチーフデザイナー。自身の経験から“誰もが笑顔になれるクロストレックをデザイン”した。
●ボディ全体をワイルドなパーツで囲んだのは、デザイン面でのアクセントと同時に、アウトドアフィールドでのダメージにも備えるためでもあります。単なる飾りではありません。機能をしっかりとデザインした結果がクロストレックのデザインなのです。誰もがたどり着ける自然の“さらに奥にある楽しさ求めて行動する人”のために“気分が高まるデザイン”を実現したと考えて下さい。コンパクトで見切りがよく、扱いが楽なボディは、よりハードな状況でも対応するための必然なんです。実際に見ていただければその存在感が本物だと言うことが理解して貰えると思いますよ。
前後のホイールアーチ周辺、フロントマスクなどにゴツゴツとした黒いパーツを装備。デザインだけでなくボディをしっかりとガードする本格派。
コンパクトなボディだがガードパーツを装備することでリアスタイルをワイルド感たっぷりに引き締めます。
快適なインテリアのデザインが、楽しさに直結しています
安田:機能をデザインしたと言うことですが、インテリアにもそれは言えますか?
佐藤:クロストレックの目指す楽しさは、使い勝手がよく、パーツのひとつひとつが機能的にレイアウトされ、直感的な操作が可能になっているというところにあります。
安田:良く出来たツールということなら、愛着も湧きますよね。
佐藤:まさにそこを狙いに室内や荷室もデザインされたクルマだと思いますよ。フォーマルにおすましして、というより、あのキャンプやフィッシングやスキーなどに出掛ける時の、ワクワクとした雰囲気にピッタリと合ったインテアリアですね。
安田:けれども、決してチープには感じない。
佐藤:別に高価な材質を使うだけが高級ではないんです。デザインやレイアウトで“上質さ”はいくらでも表現できるものだと思います。クロストレックのインテリアのデザイン、その実用性の高さは、十分に上質なデザインだと思います。
安田:機能がしっかりしていれば、居心地の良さは高級車並みということですね。
佐藤:たとえばリアシートのサイドシルにある山をモチーフにしたデコレーション。デザインの楽しさだけでなく、足を掛けたりした時の滑り止めとしての実用性も兼ね備え、実に機能的。こうした遊び心と実用の両立が高い満足度に繋がるんだと思います。
安田:快適さの基準が、まずは楽しくあれ、ということに繋がっているんですね。
遊び心もあり山並みがデザインされたリアシートのサイドに装備されたステップ。ルーフボックスやキャリアなどへの積み込み時に、とても重宝します。
フロントシートは医学的見地で大学と共同開発した、骨盤を支える構造。頭の揺れを抑えて、長距離運転でも疲れにくい作りになっている。
足元の広さもしっかりと確保されたリアシート。乗員全員の笑顔のためのスペース確保が行われています。
5人乗車時のラゲッジルーム。奥行きも約1000mm、左右はタイヤハウス間が約1100mm確保され、使い勝手はいい。
リアシートを前方に倒さなくても2人分のキャンプ用品はキッチリと収まります。
リアシートを倒すと奥行き約1400mm、高さ約700の広々押したラゲッジスペースが確保できます。
引き締まった印象のリアスタイルがスポーティでアクティブなイメージを見る人に伝えてくれます。
楽しさをしっかりと支える安全
安田:楽しさに直結するデザインの意味は理解できました。ではライフスタイルを楽しむために、クルマの作り方も含めて、中身も色々とこだわった部分があるわけですね?
佐藤:全体の開発コンセプトが実は「Fun」なんです。ドライバーはもちろんですが、乗車している全員が気持ちいい走りを楽しみながら、ずっと乗っていたいと思わせるような仕立てを、隅々まで施してあります。
安田:たとえばどんな部分ですか?
佐藤:スバル独自の先進運転支援システム「アイサイト」は、新たに広角単眼カメラを搭載し、3つの目(3眼)になったことで、視野角が従来の約2倍(128度)になりました。画像認識ソフトや制御ソフトも改良し、より広く遠い範囲まで認識できるようにしてあります。
安田:以前より2輪車や歩行者を認識する性能も向上した?
佐藤:はい。低速走行時に2輪車や歩行者を認識できる広角単眼カメラを新たに追加。歴代アイサイトのなかで最高の安全性能を実現したといいます。
安田:スバルの考える最先端の安全がたっぷりと詰まっている。いざという時の安全性や安心感の高さは、笑顔に直結しますからね。
佐藤:「e-BOXER」と呼ばれる水平対向エンジンをベースのマイルドハイブリッドシステムは、CVTミッションを含め、振動や騒音の低減が図られています。実はこうしたストレスを減らすだけで楽しさも増してきます。
安田:スバルがこだわってきた高度な安全も、Funのための必須条件として与えられているんですね。
佐藤:すべては安全が実現出来てこそ、楽しさもあるわけですから。
安田:スバルは以前から安全にこだわってきましたからね。
佐藤:はい、スバルが北米や欧州で「クレバーなイメージ」を確立できているのも、4WDの安心感とともに、アイサイトを筆頭とした最先端の装備によって交通事故の低減に努めてきたからです。
安田:最大のエコロジー、エコノミーは事故などのトラブルがないことですからね。
佐藤:おっしゃるとおりです。スバル車に共通する「高度な安全」についてはフラッグシップのアウトバックから、このクロストレックまで一切の手抜きがないことがスバルの誇るべきポイントだと思います。
ここに注目!!「エンジニアの主張ポイント」
安全とFUNの両立がクロストレックの真ん中にあります
商品企画本部プロジェクト・ゼネラル・マネージャー毛塚紹一郎さん。
車名に掛けているわけではなく、実際に毛塚さんはかなりハードなトレッキング、ノルディックウオーキングをこなす本格派。
●開発が始まってすぐにコロナ禍になりました。せっかくの新車の開発なのに当初は誰もが沈みがち。しかし「これではいけない」と言うことで、まさに一念発起するかのような気持ちで開発に取り組みました。そのときに開発コンセプトの中心に置いたのが安全とそして“Fun”だったのです。クロストレックの主要市場のアメリカでも、さらに日本でも「楽しさ」を誰もが心から求めている。こういう気持ちを大切に、忘れずに開発した結果が、新型クロストレックとして結実したと思います。とにかく乗ってみて経験して下さい。走り出した途端に軽快さ、フラフラ感のない地に足の着いた感覚を瞬時に感じると思いますよ。
左右2つのステレオカメラに加えて、新たに広角単眼カメラが搭載され、3つの目(3眼)となった新世代アイサイト。
日本とアメリカ市場におけるスバル車の安全性の高さを示すひとつの資料です。販売台数100万台あたりの死亡事故(日本は死亡・重傷事故)の発生件数を示した表組み。日米どちらの市場においてもスバルは業界平均を下回っており、とくにアメリカでの数値を見ると、直近では主要ブランドの半分程度という低い水準となっています。
リアゲートを開けると内側に装備されたLEDランプが上から手元を明るく照らしてくれます。ちょっとしたアイデアですがラゲッジに荷物を積み込むときや作業の時などに、とても役に立ちます。
静粛性を追求したCVTミッションのシフターとカップホルダーなどが機能的にレイアウトされたセンターコンソール。
みんなでどんどん使ってこそ、輝きが増してきます!
安田:これだけライバルが多く存在する中で「Fun」を合い言葉に個性を確立するのは大変ですね。
佐藤:デザイナーもチーフエンジニアもリアルにアウトドアを楽しむ人たちが、自分たちが本当に欲しくなるクルマを追い求めたそうです。売れすじのクルマですから重責もあったと思いますが、それでも苦しいながらも、それなりに楽しかったのでは、と思うのですが……。
安田:確かに人々の心を動かすような商品は、机上の計算や議論だけでは生まれないと思います。少しばかり古くさい言い方になるかもしれませんが“計算尽くではなく、好きだからこそ手を抜かずに作る事が出来た”と思いますね。
佐藤:そう言えば、毛塚さんも井上さんも、取材中なのにクルマ自慢だけでなく、クロストレックでなにをするか? と言った遊びのアイデアを出し合い、盛り上がっていて実に楽しげでしたね。
安田:となると、メインターゲットは?
佐藤:価格的にも若くアクティブなカップルが中心と聞いていますが、せっかくの楽しいクルマ、それだけじゃ、ちょっぴり勿体ないですよね。
安田:同感です。気になったらアクティブに行動あるのみ。まずはディーラーで要チェックですね。
コンパクトさや走りの良さが、さらに一歩踏み込む気分にさせてくれます。新たな発見があるかも知れません。
スペック
車両本体価格:3,322,000円(リミテッドAWD/税込み)
<SPECIFICATIONS>
ボディサイズ全長×全幅×全高:4,480×1,800×1,580mm
車重:1,610kg
最小回転半径:5.4m
最低地上高:200mm
駆動方式:4WD
トランスミッション:無段変速CVT
エンジン:直列3気筒ターボ1,995cc
最高出力:107kw(145PS)/6,000rpm
最大トルク:188N・m(19.2kgf・m)/4,000rpm
モーター:交流同期電動機
モーター最高出力:10kw(13.6PS)
最大トルク:65N・m(6.6kgf・m)
WLTCモード燃費:19.3km/l
問い合わせ先:SUBARUコール 0120-052215
TEXT:佐藤篤司
男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで“いかに乗り物のある生活を楽しむか”をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書「クルマ界歴史の証人」(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。