この世界には知られざる賢人がいる。今回ご紹介する賢人は100円ショップの商品から身近な電子機器まで「ガジェット分解」を極めようと日夜さまざまなアイテムの中身を覗きまくっている賢人だ。
SNSでガジェット分解を紹介している「まず分解。」さん。(@nicejpn)
分解に魅了され、機器の複雑な構造に感動し、日本のものづくり技術を身をもって体感している分解のスペシャリストだ。
一体なぜ分解にハマってしまったのか?そして分解の先に見えてきたものとは?数々の分解の歴史を紐解きながら、賢人の生きざまと我々の生活を潤すガジェットの真髄に迫る。
<編集部注>
分解作業のミスで機器正常に動かなくなる事があります。作業する場合は慎重に行ない、自己責任でお願いします。また、分解作業をする事で保証期間内であってもメーカー保証対象外の扱いとなることがあります。メーカー保証の期間など利用規約を確認、承諾の上作業を行って下さい。
其の構造に咽び泣く!心に残るガジェット分解はコレだ
早速だが、まず分解。さんがこれまで分解してきたガジェットで印象に残っているものをお聞きした。賢人は、あの名作をも分解している。
2016年発売。手のひらサイズで復活した名作は懐かしのソフト30本が収録されており、電源はUSB対応。いつでもどこでも楽しめるあたらしいファミコンだ。
希望小売価格は5,980円(税別)。現在は生産終了している商品だが、まず分解。さんは、なぜこれを分解しようと思ったのか?
「何故か販売前日に通販が届いてしまったので、おそらく日本で一番最初に分解レビューをアップしました。誰よりも早く分解したい、ブログに掲載したいそんな気持ちにさせるガジェットだったので強く印象に残っています」
では、その分解の様子を見てみよう。
① 裏ぶたを外す
通常の精密ドライバーで取り外し可能な小さなビスを4本外し、早速ご開帳。
② 基盤を外す
③ シールド板を外す
④ 基盤を観察する
⑤ メインCPUも観察する
⑥ ちゃんと元に戻す
専門用語が次々と繰り出されているが読者はついきてるだろうか?
そして賢人は、コントローラーの分解も当然行う。
ニンテンドークラシックミニの中身を覗いた賢人はこう語る。
「徹夜で写真50枚、3700文字の記事を作成しました。内部構造は非常に単純ながらも当時のゲームがHDMIテレビで遊べることに喜びを覚えました」
さらに、こんなものまで分解している。
東芝レグザ4Kテレビ
「同一シリーズで43インチと50インチを購入したので、両方を比較する形で分解してみました。メインの構造は同じで、液晶パネルと電源部が違うだけ、それで価格も大きく違うことから液晶テレビのビジネスモデルの一端が垣間見えた瞬間です」
「初の4Kチューナー内蔵モデルを発売直後に分解したという事もあり、多数のアクセスをいただきました」
分解でわかる設計者のこだわりが最大の魅力
想像を超える分解への想い。まず分解。さんとは一体どんな人なのか?簡単なプロフィールを紹介すると年齢は40代前半、会社員でIT系の仕事をしているという。
「趣味は電子工作、3Dプリンタ改造、カメラ、車、旅行などです。妻も趣味を理解してくれているので安心して分解を楽しめる環境で過ごしています」
そんな彼が分解を始めたきっかけとは?
「もともと親がおもちゃなどを分解して修理してくれるのを見て育ったこともあり、メカや電子基板を眺めるのが好きでした。初めて分解したのは小学生低学年の頃。親に買ってもらった音に反応するぬいぐるみを親の留守中に分解しました」
「なぜ音に反応するのか興味があり、知的好奇心を満たす分解の喜びを覚えた瞬間でした」
電池不要のTOTOエコリモコンも分解済み!
–分解して一番興奮することは?
「内部構造を見て、設計者の拘りポイントを探してみたり、全く想像していなかった構造を発見したときは嬉しくなります。最近だと電池不要のTOTOエコリモコンでしょうか。発電機構から充電回路、ボタン検出、通信まで非常に興味深い構造で、久しぶりにワクワクした分解でした」
「また、もともと分解というのは調子が悪いものを直そうと考えてやる場合もあるので、それらが修理できた時は大変うれしいものです」
ちなみに分解した後は基本的に元に戻して使うことが多いという賢人。今一番分解したいものは?
「先日購入したミシンです。まだ開封すらしていませんが、同一デザインながらも価格違い、機能違いというモデルがあり、あえて安価な方を購入しました。基板部分でどのように機能制限をかけているのか観察してみたいと考えています。うまくいけば上位機種に化けるかも!?」
–分解の素晴らしさ、魅力を教えてください
「分解することでその製品が生まれた背景や技術的な拘りポイントを見つける事が楽しいです。また似たような機械でもメーカーが違えは設計思想も全く違います。そのようなバックグランドを知ることで、家電購入の際にメーカー選択に活用することもあります」
「また、どこにお金をかけているか、設計的余裕はどの程度考えられているかなど、そういった思い巡らしをしつつブログ記事に纏めるのも楽しみの一つです。SNSなどでコミュニティが広がっていく事で、日本の若人が技術に興味を持つきっかけになれば!との思いから日々更新を続けています」
まず分解。さんツイッター
@nicejpn
ブログ
https://mazu-bunkai.com/bunkai-wp/
分解初心者の方におすすめしたい一冊
「感電上等!ガジェット分解のススメHYPER」
文/太田ポーシャ
編集/inox.