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カレーなるスパイス史を学べる!?創業100周年を迎えたエスビー食品の社員向け非公開施設「スパイス展示館」に潜入

2023.02.12

■連載/阿部純子のトレンド探検隊

一般には非公開の社員向け施設「スパイス展示館」を特別公開

本年、創業100周年を迎えたエスビー食品(「100周年サイト」)では、100周年を記念してエスビー食品の原点でもある「カレー粉」を使用した記念商品を2月6日に2商品同時発売。併せて、通常は非公開の社員向け研究施設「スパイス展示館」をメディアに特別公開した。

板橋区にある「スパイス展示館」は、カレー粉やカレールウ、ガーリックパウダーなどを製造していた東京工場の機能を移転するにあたり、1984年に展示館として改装された。

エスビー食品創業者の山崎峯次郎(1974年没)と妻の春栄(1983年没)の業績や、開発の歴史を学び、スパイスやハーブの正しい知識と啓蒙を行うための社員向けの研修施設として利用されている。創業100周年を機にリニューアルされ、メディアに公開した(注※一般公開は行っていない)。

玄関を入った左手には、創業者の山崎峯次郎と、共に社業に携わった妻の山崎春栄の銅像がある。正面を見据えている像に社員は「ここに入ると見守られている気がして背筋が伸びる」と話す。

1階にある「鬼神社」は、にんにくが好物の鬼を祀る青森県弘前市の「鬼神社」の分祀。1960年にエスビー食品がガーリックパウダーを発売したことをきっかけに分祀が認められた。

2階につながる「創造の階段」は、山崎峯次郎の文京区関口にあった自宅から移築した手すりを使用。2階には同じく峯次郎の自宅の居間や春栄の執務室も移築している。居間には川合玉堂作の「在平素」の額があり、峯次郎はこの言葉を座右の銘としていた。

妻の春栄も社業に携わっており、顧問のような役割を果たしていたという。春栄の執務室も調度品、絵画も実含めそのまま移築。山崎夫妻は象の置物を収集していて、その一部が展示されている。

8万個分の巨大「赤缶カレー粉」のシンボル展示もあり、裏側には創業理念「四つの信条」が掲げられ、1972年に放送された「きょうの料理 ライスカレー物語」に出演した際の峯次郎の肉声も聞ける。

エスビー食品の歴史をつづった約10mの100年表では、ロングセラーの商品を中心に展示している。

峯次郎は17歳で上京してソース屋で働いていたが、ある時立ち寄った西洋料理店でカレーライスと出合い香ばしい香りと味わいにたちまち虜になった。自分の手でカレー粉を作りたいと、レシピもわからないまま、原料を一つ一つ解明して数えきれないほど香辛料の組み合わせを試作していき、ついにカレー粉のスパイスの黄金比率のヒントを得る。粉砕、調合、焙煎、熟成の4つの開発ポイントを追求した結果、1923年に日本初の国産カレー粉が誕生。1930年に瓶入りの「ヒドリ印カレー粉」、1933年に「ヱスビーカレー粉(白缶)」を発売した。

戦中から戦後の原料不足を乗り越え、創業以来培ってきたノウハウの集大成として1950年に発売したのが、今でもおなじみの「赤缶カレー粉」。ターメリック、コリアンダー、クミンなど30数種類のスパイスとハーブを独自の比率でブレンド。まとまりのある豊潤な香りが特長で、創業時に確立した焙煎、熟成などの製法をベースに製造されている。発売から70余年経った現在でも、カレー粉のシェア約7割と日本のカレーのスタンダードとなっている。

展示館にはその他に、「四つの信条」を体現した商品とエピソードを紹介するコーナーと、エスビー食品が長年取り組んでいるスパイスやハーブについての展示スペース「SPICE&HERB LAB」がある。

エスビー食品100年の集大成「100周年記念商品」

100周年記念商品の「カレー粉スティック」と「S&B 赤缶カレーパウダールウ」の2商品は全社員から商品案を募集して、一次、二次、三次の審査、100回を超える試食を重ね、難関を通過して選ばれた。通常の商品化よりも長い約2年の期間を要した。

2020年秋に100周年の商品を企画する部門横断型のプロジェクトが発足。全社員から商品案を公募したところ、今まで密かに考えていた「こんな書品があったらいいのに」を実現できる100年に一度の大チャンスと、約1か月で865件もの商品案が集まった。

これからの100年に同社の柱となる商品であること、ブランドの価値向上につながる商品であること、100周年までの2023年までに商品化が可能であること、この3つの条件を満たすものを審査の基準とした。

二次選考では100周年プロジェクトのメンバーによる投票が行われ、技術的な難易度の確認などアイデアのひとつひとつを厳密に審査。昨年秋に「赤缶カレー粉」を使用した2商品が決定し、社長が直々にアイデア考案者の7名の社員を表彰。営業、管理部門、工場勤務など幅広い部門の従業員が受賞した。

○「カレー粉スティック」

「赤缶カレー粉」のスティックタイプ「カレー粉スティック」(2g×5本入り、希望小売価格・税別200円)。1本あたり使い切りやすいサイズの小さじ1杯分(2g)で、個包装なのでいつでも開けたての香りが楽しめる(※袋から中身を出しやすくするため、でん粉から作られたデキストリンを少量使用)。

カレー粉のユーザーは40代以上が約75%を占めており、20~30代をターゲットにしてトライアルユーザーの獲得を目指す。20~30代では「使い切れない」「計量が面倒」「使い方がわからない」といったカレー粉への不満があることから、使いやすい小さじ配分の2gのスティックタイプに。

使い方の提案としてパッケージの裏面にスティック1本で作れるアレンジレシピを掲載。炒め物や和え物の調味料、かけるだけ、料理の下味など、スティックタイプの利点を生かし、多彩なメニューに使える。

手軽なところでは、コンソメスープに入れるだけで簡単にカレースープに。1本分すべて入れるとかなり辛くなるので、好みの量を入れて辛さをアレンジ。アンケートで人気ナンバー1となった「タコライス」はカレーの風味が加わることで食欲が刺激され、食が進むイチオシメニュー。1本で2人分作れるカレーナムルはシンプルながらカレーの風味が楽しめる、副菜やおつまみにぴったりの一品。

意外だが、牛乳とカレーの組み合わせは相性がよく、市販の味噌味のインスタント袋麺で水と牛乳を半々の量で使い、カレー粉スティック1本を加えると「味噌カレー牛乳ラーメン」に。カレー粉スティックを使ったレシピは、商品サイトにも掲載しているので、ぜひお試しを。

○「S&B 赤缶カレーパウダールウ 中辛」

パウダールウとは本格的なおいしさや香りと使いやすさを兼ね備えたパウダー状のカレールウ。エスビー食品独自の特許技術「パウダールウ製法」は、熱をかけるとおいしくなる素材と、熱をかけない方がおいしい素材に分け、2段階で仕込むことが特長。固形ルウと比べて油脂配合比率が低く、小麦粉不使用のため、深みがありながらも軽やかな味わいを表現できる。

サッと溶けやすく、ダマになりにくいこともパウダールウの利点。小分けタイプになっているので2皿分から調理可能で、子どもが独立して大鍋でカレーを作る必要がなくなった60代以上の世帯にも好評を博している。

パウダールウを使った100周年記念商品が「S&B 赤缶カレーパウダールウ」(152g・希望小売価格・税別368円)。熱をかけるとおいしくなる素材でベースとなるルウを作り、そのルウを細かく裁断。そこに「赤缶カレー粉」を混合することで熱ダメージを抑え、「赤缶カレー粉」の香りを最大限に引き出している。

国産牛のだしで旨みを、国産炒め玉ねぎで甘みを、国産米粉と国産おから粉でなめらかさを、隠し味としてかつお節だし、昆布だし、味噌を入れて味に厚みを出し、日本人が食べやすい味に仕上げている。甘味料、香料を使わずに、赤缶カレー粉のまとまりのあるスパイシーな香りを活かしている。

【AJの読み】「スパイス展示館」には昭和世代には懐かしい今は無きスナック菓子も

カレー味の料理が好きなので、我が家では「赤缶カレー粉」の400g缶を常備しているが、長年の不満が、缶が開けにくいということ。上のふたはスプーンや包丁の先で開けたりしているが、新品のときの内部のアルミの薄いふたを開けるのには特に苦労する。“公式な開け方”をエスビー食品の担当者に聞いたところ「動画がありますのでぜひ参考にしてください」。

スプーンを使えば簡単だということが判明したが、それでも開けるのも軽量も面倒、と言う人には新商品のスティックタイプが超おすすめ。お惣菜で買ったポテトサラダにかけたり、めんつゆに入れて片栗粉でとろみをつければカレーうどんがあっという間にできる。焼きそばにふりかけてもおいしい。ただし、カレー風味は食欲が増し、箸が進んで止まらなくなるので食べ過ぎには注意!

「スパイス展示館」には昭和世代には懐かしい1979年発売の「5/8チップ」が展示されていた。おやつの定番で、遠足のときはクラスのほぼ全員が持ってきていた。小さいサイズなので食べやすく、何枚も重ねて一口で食べるという禁断の食べ方もあったな……と遠い目。エスビー食品には「鈴木くん」「佐藤くん」というコーンパフのスナックもあった。現在、同社ではスナック菓子の事業は行っていないが、復活して欲しいと願っている人も少なくないのではないか。

エスビーの商品開発の歴史がわかる展示館は非常に興味深く、じっくりと見たい展示が多いが、社員向けの施設のため一般公開されていないのが残念。展示館ツアーのような動画配信があればエスビー食品ユーザーも楽しめると思うのだが、いかがだろう。

文/阿部純子

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