青森りんごを配合した「RINGO-TEX」はANAの特別塗装機に採用
特別塗装機「ANA Green Jet」のヘッドレストカバーに採用された『RINGO-TEX』
青森りんごのフードロスやグローバルにまたがるSDGsの課題を解決するため、りんご粉末配合の合成皮革『RINGO-TEX』を開発したのが、2022年5月に青森市で法人設立したのが青森発のベンチャー企業「appcycle」だ。
フードロスのりんごを活用したヴィーガンレザー事業のほか、りんご農家の支援事業にも取り組んでいる。創業者の重野由佳さん、藤巻圭さんの二人は、青森出身。国内外で活躍しながら、故郷の課題の解決に取り組んでいる。
乾燥させたりんごの残渣。
開発した『RINGO-TEX』は、青森のりんご加工品製造などから出るりんご残渣をアップサイクルし配合した国産合成皮革だ。残渣の乾燥時は、従来の加熱乾燥より二酸化炭素の排出を抑えた乾燥方法を採用するなど、製造工程においても環境に配慮している。
プロトタイプが完成し、2022年10月には、サステナビリティをテーマにしたANA(全日本空輸)の特別塗装機「ANA Green Jet」のヘッドレストカバーに採用された。国際線のプレミアムエコノミーと国内線のプレミアムクラスで、体験することができる。
プロトタイプができ上がってすぐに採用が決まり、会社として初のOEM、また初めての納品になったという。現在は、企業向けのOEMを中心に開発しているが、2023年中には、自社ブランドもローンチ予定だ。
プロトタイプから、いきなりOEMを実現した『RINGO-TEX』。その素材感は、従来のレザーとはどのように異なるのだろうか。
「基本的には従来の合成皮革と同等の物性を目指して製造しています。りんごが配合されることで石油由来原料の使用を抑えることができ、環境に配慮した製品を選ぶ選択肢の1つとなればと思います」(藤巻さん)
生分解性100%の製品から、日本国民のひとりひとりが手軽に持つことができる安価な製品まで幅広く展開し、一人でも多くの人にエシカル製品に触れてもらいたいと考えている。
「これまで動物皮革や合成皮革を持てなかったという人に対しても提案できるダイバーシティな製品です。これによって、ファッションを含む多くの人の生活に彩りを与えることができればと思います」(藤巻さん)
年内ローンチを予定しているオリジナルブランドも気になるところだ。
ユーザーにとってもメリットがあるアップルレザー
アップルレザーが環境に配慮した地球にも人にもやさしいプロダクトであることは分かったが、使用感はどのようなものなのだろう。『RINGO-TEX』と『りんごレザー』が、ともに話すのが、レザー(本革)と比べて軽量であること。
ものを入れるバッグは、バッグ自体が重いというのはデメリットになる。その点は、従来のビニールやプラスチック合成樹脂などを採用した合成皮革と手触りや質感は似ているようだ。しかも、一般的な合皮に比べ強度、耐久性、耐水性もあるという。
「肌触りはしっとり。マットで上品な質感です。製造中はアップルパイの香りがします」と、『りんごレザー』を開発した伊藤さん。愛情たっぷりに育てるわが子のように話してくれた。
環境に配慮し、軽量、丈夫であることから長く使え、ますます地球にやさしいアップルレザー。新開発素材ということもあり、価格がまだ高めというところが、市場に広まるまで時間がかかりそうだ。
ただ、SDGs達成に向けて、エシカル消費を意識する人は増えている。消費は投票。アップルレザー購入者が増えることで、ほかのフルーツなどを原料としたヴィーガンレザー開発も進むかもしれない。
海外に比べ遅れていると言われるヴィーガンレザー開発だが、日本のものづくりは丁寧できめ細やか。高品質なヴィーガンレザーなら日本製と言われるようになることを期待している。
・SORENA
https://sorena39.com/
・appcycle
https://appcycle.jp/
取材・文/林ゆり