年初から米ハイテク株の回復基調が鮮明となっているが、この流れは今後も続くのか。
三井住友DSアセットマネジメントはこのほど、同社チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩氏がその時々の市場動向を解説する「市川レポート」の最新版として、「回復基調が鮮明な米ハイテク株と強い米労働市場をどう考えるか」と題したレポートを発表した。レポートの概要は以下のとおり。
米国では年初の経済指標がインフレ減速を示唆し長期金利が低下、ハイテク株の上昇が顕著に
米国株式市場では、年初からハイテク株の回復基調が鮮明だ。米大手ハイテク企業のGAFAM(グーグルの持ち株会社アルファベット、アップル、メタの旧社名フェイスブック、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト)は、2022年12月30日から2023年2月2日までの期間、軒並み2ケタの上昇率となっており、ハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数も好調だ(図表1)。
1月は、米12月雇用統計の平均時給や、米12月消費者物価指数(CPI)の内容が、インフレ減速を示唆するものとなり、米連邦準備制度理事会(FRB)による早期の利上げ停止、さらには年後半の利下げ転換への期待が市場で強まった。その結果、米10年国債利回りは、前述の期間において48.2ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下し、これらがハイテク株の押し上げにつながったと推測される。
ただ1月米雇用統計は非常に強い内容、年次改定要因を踏まえても雇用ひっ迫は継続の模様
こうしたなか、2月3日に発表された1月米雇用統計は、非農業部門就業者数が前月比51万7,000人増(市場予想18万8,000人増)、失業率は3.4%(同3.6%)、平均時給は前年比4.4%上昇(同4.3%上昇)となり、米労働市場が市場予想よりもはるかに強いことを示す内容となった。なお、今回は、非農業部門就業者数などの事業所調査に、年次の基準改定が実施され、失業率などの家計調査では年次の新サンプル採用が行われた。
そのため、非農業部門就業者数については、来月以降の数字で雇用の基調を確認することが必要と思われるが、直近の雇用者数の伸びが上方修正されていることを踏まえると、労働市場は一般的に想定されているよりも、実態はかなり強いと考えられる。また、失業率について、米労働省のデータによると、新サンプル採用の影響は今回ほとんどないため、昨年来、雇用のひっ迫状況は改善されていないと解釈できる。
ハイテク株は当面長期金利の動向に要注意、インフレ再加速回避なら回復基調の毀損も回避へ
今回の1月米雇用統計の結果を受け、市場では米利上げの長期化観測が浮上し、米10年国債利回りは前日から大きく水準を切り上げ、ハイテク株は急落した(図表1)。強い米労働市場を踏まえ、三井住友DSアセットマネジメントは今般、米金融政策について、3月と5月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、それぞれ25bpの利上げが行われ、FF金利の誘導目標は5.00%~5.25%で年内据え置きとの見方に修正した(図表2)。
1-3月期の米国株は、引き続き米インフレと景気減速の度合いをにらみ、一進一退となる可能性が高いとみており、ハイテク株はしばらく長期金利の動向に左右される展開が予想される。ただ、ここから三井住友DSアセットマネジメントの想定外にインフレが再加速し、一段の利上げ実施により、米景気後退が深刻なものとならない限り、年初からの米ハイテク株の回復基調が、大きく損なわれる公算は小さいのではないかと考えている。
※個別銘柄に言及しているが、当該銘柄を推奨するものではない。
出典元:三井住友DSアセットマネジメント
構成/こじへい