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世界的な景気後退が予測される中、2023年の日本株はどう動く?

2023.02.07

2023年、世界的な景気後退が予測される中で、日本の株式市場はどう推移するのか?

英国の独立系資産運用グループ「シュローダー」はこのほど、同社日本株式運用総責任者が予測する「2023年の日本株式の見通し」を発表した。概要は以下のとおり。

内需中心に堅調に成長する見込みの日本経済

欧米ではインフレ率の高騰を受けて金融引き締めが加速しており、2023年は景気後退が予想されている。現状は比較的軽度の景気後退との見方が多数派を占めているようだ。

伝統的な金融システムの健全性が保たれていることから、金融危機の再来はないとの見方には相応の説得力がある。ただ2023年は前年のインフレや金融引き締めの影響が遅れて顕在化するタイミングに当たる。そして未曽有の金融緩和と財政拡張の後始末が早期に終了し軟着陸できるというシナリオは少々楽観的に思える。今は姿を想定できないが、一定確率で深い景気後退に陥るケースも念頭に置きつつ推移を見守りたいと思う。

新興国ではロシアと中国情勢がどう発展していくかについても注視し続ける必要がありそうだ。ロシアウクライナ戦争の勃発と長期化は昨年最大のサプライだった。連日の報道を見るにつけ、異常事態が常態化して感覚が麻痺してしまっているところがあるが、さらなる泥沼化、電撃的な終戦等いずれであっても世界経済に大きな影響を与える可能性がある。

中国ゼロコロナ政策撤廃に伴う経済再開は明るいニュースだ。かつてのような高成長は望めず構造的成長率低下の懸念が残るものの、正常化の恩恵が確実に見込める2023年においては回復シナリオを前提にして良いと考える。

懸念材料の多い海外経済と比較すると日本経済は比較的堅調に推移すると予想されている。欧米を中心とした海外景気の悪化は日本経済にとって輸出を通じてマイナス要因になるのは間違いない。一方で、新型コロナウイルスからの脱却が見え、個人消費の回復が顕著になっている。

旅行支援もあって好調な国内旅行に加えて、水際対策の緩和を受けた海外旅行客の増加も足元で加速しており、インバウンド消費に勢いが出てきている。また、好調が続いているのが設備投資、IT投資だ。高効率化、省人化、そしてDX(デジタルトランスフォーメーション)など、日本企業の成長力、収益力を高める投資は今後も継続すると見ている。

国内外ともに金融政策への注目が集まる年に

2022年は世界的にインフレが台頭し、米国をはじめとした主要中央銀行が予想を上回るペースで利上げを進めるなど急速に金融引き締めが行われた。特に影響力の大きい米国において、対応の遅れを取り戻すべく通常の変動幅である0.25%ではなく、0.75%の利上げを短期間のうちに繰り返すなど異例のハイペースとなり、世界の金融市場に大きな影響を与えた。

12月には0.5%の利上げへペースダウンしており、先行きは0.25%の通常ペースへ戻すことが示唆されるなど、一頃の緊張感は薄れている。2023年後半以降は景気減速によるインフレ鎮静化を受けて利下げに転じるとみる向きもあるようだが、現時点でそこまで見通すことは当局にも市場参加者にとっても容易ではない。

ベースシナリオとしては、いったん利上げを停止した後には金融政策の累積効果を見定めるべく金利水準を据え置くと見るのが妥当ではないかと考える。FRBやECBの動向に注目が集まりやすい中、政策変更なしが常態化していた日銀が昨年末に唐突にイールドカーブコントロールにおける長期金利の変動幅を拡大したことから様々な憶測を呼び、俄かに日銀の動向が世界的に注目されるようになった。

長期政権となった黒田日銀総裁の交代タイミングとなる2023年の春前後に政策変更が起こりやすいということは想定していたが、それが少し前倒しになった印象だ。今後は新総裁候補の顔ぶれ、政策スタンスなどが注目材料となり、また次の一手が何になるのかなど2023年を通じて市場の注目を集めることになりそうだ。

割安度が増した株価バリュエーション

2022年はTOPIXでは下落となったが、日本株は相対的には欧米株の調整よりは下げ幅が限定的だった。それでも業績が堅調なこともあり、利益ベースのバリュエーション指標である市場PER(TOPIX、12か月先予想)は12倍程度と割安で、過去レンジの下限に近い水準にある。

業績予想の下方修正リスクはあるが、それでもPBRや配当利回り、CAPE(景気変動調整後のPER)などの中長期的な目線でのバリュエーション指標でみても割安度は強まっている。

そして2022年の急激な円安時に株価が上昇しなかった結果、他通貨、とりわけ米ドル建てでみた日本株の割安さは際立っており、海外投資家にとっては相対的に魅力的な投資対象に映る。

正常化が進む市場の物色動向

2022年の日本株市場は前年に引き続き、運用パフォーマンスにおいて投資スタイルの影響が大きく出た年になった。グロース株は世界的な金融引き締めを背景に不振だった一方で、バリュー株は年間通じて好調に推移し、とりわけ12月の日銀の金融政策変更を受けた銀行株、保険株の大幅上昇が目立った。

現在は2020年までの極端なグロース株優位相場でグロース株とバリュー株のバリュエーション格差が2000年のIT相場ピーク時を超える水準まで高まり、その正常化が進む途上にある解釈している。2年連続で同様の展開となったこと、海外で景気後退懸念の高まりや金融引き締めペースの鈍化が見られることから2023年にグロース株の反騰があったとしても全く驚かないが、未だ格差は大きく開いたままで2000年のピークに近い水準にある。

結果として中長期で見るとバリュエーション格差の観点では、バリュー株優位の展開が継続する可能性が高いとみている。こうした物色動向は、グロース株に対する過度な成長期待が見直されたこと、そして金利上昇で高バリュエーションが正当化できなくなったことなどで説明ができるが、株式のアクティブ運用に携わるものとしては、やはりバリュエーションが投資判断において重要であることが再確認されたと考えている。

前回バリュー株優位に転換してから反転するまでには10年弱の期間を要したことも記憶しておくべき重要な事実だ。

株主還元拡充とコーポレートガバナンス改善

2022年4月に新しい市場区分として東証プライム市場がスタートしたが、当初期待されたほどの抜本的な改革にはならず、海外投資家の評判も良いとは言えない。

それでもコーポレートガバナンス改善として求められる方向性は明確になり、実際に持ち合い株式の解消や上場子会社の整理が起こり、そして情報開示や経営の株主に対する姿勢にも変化が見えてきている。そのような中、特に小型株で長年株価が割安に放置されていたような企業で、積極的な株主還元方針の発表や自社株買いの実施、さらにはバイアウトなどにより株価が急騰するケースが散見されるようになった。

市場全体としても自社株買いが2022年度は過去最高水準で推移しており、日本株の投資魅力を高める大きな要素の一つと言える。ここ数年、大きなテーマとなっているESG投資において、これまで重要視されてきたG、ガバナンスはもとより、昨今ではE、環境やS、社会的な問題に市場の関心が高まっている印象がある。

気候変動や人的資本、人権などの問題は企業経営においても重要度の高いものであり、企業価値を大きく左右するものだ。右に倣えで通り一遍の対応をしている企業がある一方で、遠い将来を見据えた上でESGの意義を深く理解し、持続可能なビジネスモデルを研ぎ澄ませている頼もしい企業も存在する。

明確で合理的な資本政策、外部環境に依存しない事業の競争力の確立、先見性があり環境変化に対して柔軟な経営方針なども強く求められており、意識の高い企業においては既に改善傾向が見られている。そうした企業群がリード役となって日本株全体の企業価値向上に繋がることを期待している。

実行の手段やタイミングはどうであれ、市場原理に逆らって続けている現行の超金融緩和政策は修正が迫られることは必至と念頭に置いておくべきだ。変更があった際には12月のように一時的には株安、円高が進む可能性が高いが、インフレ率を考慮した実質金利では金融緩和が維持される見込みであり、過度にネガティブ視する必要はない。

本質的には経済正常化を反映した前向きな変化と捉えるべきと考える。ごく例外的な非常時を除いては、株式市場やREIT市場におけるETFの購入も含めて日銀が市場介入を弱める方向に動くことを歓迎したいと思う。

日本においてもインフレ率が高まっており、賃上げが進まないと実質所得の減少が消費の下押し要因となるリスクがあるが、日本企業の業績も堅調で労働分配率が低水準に留まる中、春闘の賃上げがどの程度の水準で妥結するのか注目に値する。長期にわたったデフレからの脱却が果たされ、継続的な賃上げにつながる好循環に向かうことできれば、日本経済の大きな転換点になるかもしれない。

2022年度の企業業績は順調に推移してきた。2023年度は円安効果によって嵩上げされていた部分が剥落することを織り込む必要があるが、経済正常化の恩恵で回復する個人消費、堅調な設備投資、遅れて発現するコストアップ分の価格転嫁による効果などが期待できることから大崩れはしないとみている。下振れリスクがあるとすれば主に海外要因だ。

<解説>
前田 建氏(日本株式運用総責任者)

【本資料に関するご留意事項】
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出典元:シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社

構成/こじへい

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