「eスポーツ部」を提供するNTTe-Sportsの取り組み
部活動を通じてe-Sportsのプレイスキル、ICTスキルを身に着けながら、部活で一番大切な練習による成長や勝利の達成感、仲間との連携を感じてもらう内容になっている。e-Sportsのタイトルについては、学校と相談しながら決定する。
日々の部活動は講師がオンラインで進行、ルールや操作方法といった基本的なレクチャーから始まり、個人練習、チーム練習を中心に行う。習熟度合に合わせて段階的にチーム戦術や高度なテクニックも教えていくため、eスポーツに全く触れたことのない初心者でも参加でき、しっかりと上達していきたい生徒には意欲に応えられるサポートをしていく。進行に必須となるパソコン操作、通話アプリの操作もレクチャーするため、楽しみながらICTスキルが身に付く側面もある。
渡嘉敷村でのトライアルでも全員がタイトルに初めて触る学生だったが、最初は通話アプリに苦戦しながらも学びながら操作していき、11月から開始して現在では生徒が画面共有やチャットを使いこなして講師に相談しながら、AIや全国のプレイヤーを相手にチーム戦を戦っている。
「親会社のNTTは地域密着型の事業を展開していますが、部活動にサポートが必要だという情報は受けており、eスポーツ文化の健全な普及にも力を入れていることから、若い世代を取り込むことができる部活動としてのeスポーツは有効だと考えていました。
部活動ではメンタル面でもサポートしていきたいと考えています。オンラインだからこそ意識すべき感謝、助け合いといったチームメイトとの関わり合いはもちろん、オンライン時代を健全に生きるために、自分を守るためのマナー、コミュニケーションを伝えることにも注力していきます」(NTTe-Sports 主査 金基憲氏)
「ダンス部」を提供するエイベックス・マネジメントの取り組み
同社はダンススクール授業をリアル・オンライン含め全国で1週間に1000レッスンを提供している。指導者としての在り方、コーチングメソッドなど社内で行っている研修を受けて活躍している講師がアクティブだけで400名以上在籍している。これらのネットワークをオンライン部活にも活用。渡嘉敷村でのトライアルでは、有名アーティストのバックダンサーの経験を多数持つ、TAiSHI氏が講師を担当した。
「弊社では高校生のダンスコンテストも開催しており、ダンス部の熱さは以前から感じていましたが、中学生にはなかなかタッチしていない状況でした。部活動としての課題はエンターテイメントの指導者が東京や大阪、名古屋といった大都市に集中してしまっていることで、この課題をクリアできるのがオンライン部活だと考えています。
部活動としての展開を考えた場合、ダンススクールには必須の鏡がない体育館や教室でのレッスンを想定し、軽微な設備でも行える条件が必要です。また、コロナ禍で弊社もレッスンのオンライン化が進みましたが、1対多数のオンラインレッスンはまだ構築出来ていない状態で、今の技術では東京と渡嘉敷村で同時に踊るということができないため、そのズレに対してどのような向き合い方がいいのか、トライアルの中で我々もいろいろと学ぶことができました」
(エイベックス・マネジメント アカデミー事業グループ 東日本ユニットユニットリーダー 紙上養一氏)
【AJの読み】PTAも部活もアウトソーシングの時代に
KNT-CTホールディングは、これまでの旅行サービスを中心とした事業に加え、5年後、10年後を見据えた “未来創造事業”として新規事業の開発に取り組んでいる。
「KNT-CTのグループ会社である近畿日本ツーリストでも、新規事業・サービスに取り組んでおり、当社において長年事業の柱となっている教育旅行でも、近年は修学旅行だけではなくBPO (ビジネス・プロセス・アウトソーシング)業務の取り扱いが増加しています。コロナ前は旅行業が98%ほどを占めていましたが、将来的には旅行業、非旅行業を1:1まで持っていきたいという展望を持っています」(KNT-CTホールディングス 執行役員 社長室部長 未来創事業担当 安岡宗秀氏)
旅行以外に学校現場で提供できるサービスを模索する中で、PTA業務の多くが同社グループの既存サービス内で対応可能なことから、昨年から開始したのが「PTA業務アウトソーシングサービス」。行事や会議、事務作業での人材派遣や、イベント運営、広報誌やPTA便り、総会資料の作成などについての業務委託の問い合わせが多くなっているという。
近年、教員の労働時間の長さが問題となっており、教員への負担軽減のため部活動の地域・民間への外部委託が国主導で進められているが、指導者不足、運営方法など課題が多くあり、それらの課題を解決するのが、部活動のプラットフォーム「部活動サポートサービス」だ。
年間を通じてすべてオンラインで指導できるのか、部活動費用の負担など課題もあるが、学生に人気のダンス部や、ICTスキル習得にも貢献するeスポーツ部など「生徒がやりたくなる部活動」は注目に値する。学校で堂々とゲームができる時代になったのかと昭和世代から見ると羨ましさも感じるが。
文/阿部純子