■連載/阿部純子のトレンド探検隊
近畿日本ツーリストは、昨年8月からスタートしたPTA業務アウトソーシングに続く学校サポート事業として、2023年度に「部活動サポートサービス」を開始する。
時代と共に子どものニーズも多様化し学校に入りたい部活が無いと感じる生徒も少なくない。また、従来の部活動では教員の長時間勤務や休日出勤が常態化していることもあり、学校の働き方改革を踏まえた部活動が必要になってきている。
こうした状況を踏まえ、スポーツ庁・文化庁の有識者会議「部活動の地域移行に関する検討会議」での提言をもとに、2023年度から2025年度末までの3年間を改革推進期間と位置付け、休日の運動部・文化部活動から段階的に地域や民間へ移行するようガイドラインが制定された。
近畿日本ツーリストが行った各自治の教育委員会へのヒアリングで、部活動におけるさまざまな課題が浮上したが、特に多かったものが「指導者の確保」、「学校内外を含めた活動場所の確保」、「生徒のニーズに合わせた受け皿の確保」だった。
離島でも第一線の講師の指導が受けられる「オンライン部活」を導入
同社が培ってきた事務局運営のノウハウやパートナーシップを活かして作られたのが、こうした課題を解決する「部活動サポートサービス」だ。
住んでいる地域にかかわらず専門的な指導が受けられる部活動ソリューション「オンライン部活」、部活動運営に必要な事務局業務を代行する「部活動運営事務局」が主たるサービス。既存の部活動を運営事務局でサポートしながら、生徒の求める部活動を行うオンライン、AI、ICTを活用した多彩な部活を提供する。
教育委員会へのヒアリングで多かった意見は、既存の部活動をどのように地域・民間に移行していくのかといった課題。学校が担っていた既存部活を地域・民間に移行するにあたり、受け皿として指導者は協力企業、地域住民、協議団体、地域クラブに、場所としては総合型地域スポーツクラブ、公民館、学校が想定される。
同社の新型コロナのワクチン接種事務局の委託事業の経験を活かした「部活動運営事務局」が指導者、場所、参加者の手配・管理を行い、教育委員会が行うべき部活動の受け皿をまとめる業務を受託して行う。
部活動にとって欠かせない要素のひとつが指導者。スポーツ庁・文化庁がガイドラインを制定する上で行った意見募集の中には、教員の業務軽減を歓迎するといった一方で、過疎地域では部活を依頼できる人材が不足しているため3年間で移行達成は難しいという意見が多数あった。
指導者を遠方から毎日派遣するのは現実的ではないため、多彩な部活動のニーズに応える手段としてオンラインによる遠隔指導を取り入れる。オンライン部活の特長は住んでいる地域に関わらず専門的な知識を受けることができるということ。地域のリソースに縛られず指導者不足を解消して、全国の中学生に対して平等で専門的な指導を提供できるサービスを目指している。
オンライン部活として、NTTe-Sports提供のeスポーツ部、エイベックス・マネジメント提供のダンス部、一般社団法人ドローン大学校提供のドローン部、LAVA International提供のヨガ部と、4つの企業、団体と協業を開始している。
部活の指導者が少なく、中学校にあるのはバトミントン部のみだった沖縄県の渡嘉敷村立渡嘉敷小中学校でeスポーツ部、ダンス部のオンライン部活のトライアルを実施。離島での悩みを解決しつつ、生徒自身が選択できる部活動を提供したいという意向があり、トライアルを開始した。