イーロン・マスクの買収劇を発端とした一連の騒動や、サードパーティ製アプリの使用禁止などで、Twitterに対する懸念がじわじわと広がっている。そこで注目されているのが、TwitterやInstagramといった、現在主流となっているサービスに代わるSNSだ。次代のスタンダードになる可能性を秘めた注目のSNSを3つ紹介する。
①誰かとゆるく繋がれる『GRAVITY』
”優しいSNS”と呼ばれる『GRAVITY』は2020年12月のリリース後、じわじわと利用者を増やしているSNSだ。文章を作成し、写真を添付して投稿するという基本的な使い方はTwitterと似ているが、匿名性が高いことが特徴だ。プロフィールに使用するアイコンは、アプリ内で指定されたイラストからしか選ぶことができない。またユーザー検索結果に表示されないように設定可能だ。
また、『GRAVITY』独自の機能である探索機能では、特定の話題が設定された””星”に入ることができる。そこで共通の話題を持つ人と繋がったり、複数人で音声通話したりすることが可能だ。
Twitterなど普段使用しているSNSの「いいね」や「リツイート」といったインプレッション数を過度に気にしたり、繋がりが増えすぎたりしたことに疲れた人に『GRAVITY』は向いている。見知らぬ誰かと、共通の話題でゆるい繋がりを持つ楽しさを見つけられるはずだ。
登録時に自分の趣味やライフスタイルについてのタグ付けを行い、共通の話題を持つ人が見つかりやすいようになっている。「読書」「映画」など趣味の星や、「育児・子育て」「恋愛」といったライフスタイルの星が存在する。
②”飾らない”日常の風景が流れる『BeReal』
アメリカの若い世代を中心に人気が高まっており、App Storeアワードでは2022年のベストiPhoneアプリ賞にも選ばれたフランス発のSNS『BeReal』は、名前の通りリアルな日常を発信することに特化したSNSだ。
1日1回ランダムに来る通知でアプリを開くと、2分のカウントダウンが始まる。時間内に写真を撮影し、投稿しなければならない。自動的にインカメラとアウトカメラの双方で撮影する仕組みになっており、「自分の周囲の状況」「その時の自分の様子」をそれぞれ発信できる。取り直し回数やカウントダウンから何分遅れたかなどの情報も同時に投稿されるため、自然と一回で撮りたくなるような導線も張られている。また、友人の投稿を閲覧するためには、自分も投稿する必要があるため、閲覧するだけという使い方ができない点もユニークだ。
現在のSNSは、InstagramやTiktokのように綺麗な部分だけを切り取って””盛る”ような使い方のものが主流だ。しかし『BeReal』は等身大の自分の日常を発信できる”リアル”なSNSとなっている。
通知のタイミングは完全にランダムなため、一人のアカウントを見ても同じようなシチュエーションで撮られた写真はまずない。ユーザーの日常を垣間見ることができるのだ。
③価値ある情報が集積する『Post』
『Post』はGoogle関連企業のCEOによって立ち上げられたサービスで、アメリカの大手ベンチャーキャピタルが出資し話題になった。
SNSとウェブニュースの中間を目指したサービスで、リツイートやリプライといった基本的な機能はTwitterと同様だ。しかし文字数制限がなく、投稿する内容に対してタイトルを設定することが可能だ。
また『Post』独自の機能として、チップ制度が挙げられる。ユーザー登録すると、50ポイントのチップが自動で配布される。ポイントは他ユーザーの投稿にチップとして送ることが可能だ。送られたチップは100%投稿者に還元される仕組みになっている。また、280文字以上の長文はポイントを使用しないと閲覧ができないようになっている。
Twitterのように自由な投稿が可能な一方で、面白いと思った記事形式の投稿に対してチップを支払い読むといった使い方ができる。これにより、良質なコンテンツが集まるような仕組みを形成することが可能だ。
オウンドメディアの課題としてユーザーに閲覧してもらうまでの導線づくり、またそこからのマネタイズの難しさが挙げられる。しかし『Post』であれば、ユーザーが日常的に滞在するタイムライン上にオウンドメディアのような良質なコンテンツが流れるため、対価としてチップを支払うことへのハードルが下がることが期待できる。まさにSNSとウェブメディアの中間のような存在になれる可能性を秘めているのだ。
文章にはYouTubeなど外部リンク埋め込みが可能な他、文字の装飾もできる。追加購入のチップは300ポイントあたり4.2ドル。
取材・文/桑元康平(すいのこ)
1990年、鹿児島県生まれ。プロゲーマー。鹿児島大学大学院で焼酎製造学を専攻。卒業後、大手焼酎メーカー勤務などを経て、2019年5月から2022年8月まで、eスポーツのイベント運営等を行うウェルプレイド・ライゼストに所属。現在はフリーエージェントの「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズのプロ選手として活動中。代表作に『eスポーツ選手はなぜ勉強ができるのか』(小学館新書)。