日本政府は、2035年までに国産車・輸入車問わず、新車販売は100%、EV(電気自動車/ハイブリッド含む)にするという目標を掲げている。これを受け、新車購入時や買い替え時にEVへのシフトを検討する人も増えてくると考えられる。
これからEV購入を検討する戸建て住宅に住む人に向け、充電器を自宅に備える方法や種類、コスト、注意点を専門家のもと、紹介する。
東京都がEVへの補助金増額/新築へのEV用充電設備義務化へ
東京都の地球温暖化防止推進センター(クールネット東京)は、東京都に住む個人に対してEVやPHEV(プラグインハイブリッド車)購入時に補助金を出している。
個人に対する補助額は45万円、再エネ100%電力メニューを契約していれば60万円。さらに後日になって自宅に太陽光発電システムを設置していたり、これから設置する予定がある場合に、個人には75万円を支給する増額を発表した。受付は2023年2月28日までとなっている。
今後、補助金を利用して自宅に設置する人は増えていくと思われる。
また、2022年12月には東京都の環境確保条例が改正され、新築建築物にEV充電設備の整備が義務化された。2025年4月に施行される。新築戸建てやマンションも含まれるため、今後は自宅に充電器を備えるのは当たり前になっていくだろう。
戸建てにEV充電器を設置する際の課題とは?
ところで、EV購入を検討する際に、同時に考えたいのが充電器の設置だ。外に充電スポットは存在するが、混雑などで自由に使えないこともある。スマホの充電と同じように、家で充電できるのであれば、わざわざ外に出かけて充電する必要はない。戸建て住宅に住んでいる場合は、充電器を自宅に設置するのが一般的と言える。
では、充電器を自宅に設置する際、主にどんな課題が生まれるのだろうか。先に知っておこう。
今回は、日頃から戸建て住宅やマンションなどに充電器設置を行うユアスタンド株式会社の執行役員 デニス・チア氏に話を聞いた。
1. 取付工事や電気契約変更について知識が乏しい
「EV購入時に自動車販売店によっては充電器を取り付けてくれる工事業者を紹介してくれることもありますが、多くの場合、自分で連絡を取らなければならないため、どこに頼めばいいかわからないという悩みが生まれます。また充電器を設置することによって、自宅の電気契約を変更しなければならない場合もありますが、関連知識が乏しいと苦労するでしょう」
2. 選べる充電器の種類が少ない、機能も限定的、価格が高い
「充電器には普通充電器と急速充電器があり、一般的に戸建てに備える普通充電器には『コンセント型』と『充電ケーブル一体型』があります。現在、国内で発売されている充電器の種類が少なく、大きく分けて以下の2種類となります」
(1)3.2kW(コンセント型)
メリット:安い。
デメリット:出力が低いため充電が遅い。充電ケーブルは毎回取り出したり、収納したりする手間が発生。充電コンセントなので、安全性は限られている。
(2)6kW以上(充電ケーブル一体型)
メリット:出力が高いため充電が倍速で行うことができるようになり。ケーブル付きなのでケーブルを収納する手間が省かれる。Mode 3充電器(※)のため安全性は担保されている。
※Mode 3充電器:充電方式の国際規格。充電設備側に制御回路を内蔵し、充電設備と車両との間で通信を行い制御する。
デメリット:価格が高い。データ取得やスケジュール充電、自動充電の機能がない。
3. 高度な充電ができない(安い時間帯に自動充電など)
「電気代が高騰している今、また今後、太陽光発電が普及し、電気代が安い時間帯と高い時間帯がはっきり分かれたとき、自動的に調整できる充電機能は今の充電器の中では、ほぼありません。また、充電データが取れるような機能もほぼありません」
戸建ての充電器の一般的な種類
上記の課題によれば、まずは充電器の種類と機能をよく理解しておくのが良さそうだ。デニス氏に戸建て住宅に設置する際に現状、候補となる充電器の種類を挙げてもらった。
●自動車メーカーではない会社のブランド
・屋外コンセント(3.2kW)(パナソニック)
・ELSEEV(6kW)(パナソニック)
・Pit-2G(6kW)(日東工業)
●自動車メーカーのEV専用ブランド
・テスラウォールコネクタの専用充電器
・BMWの専用充電器
・ポルシェの専用充電器
など
「自動車メーカーのEV専用ブランドの場合、例えばテスラを購入したら、 テスラ専用充電器が推奨されます。車の付属品としてついてくることもあります。一方、EV専用ブランドを持っていない車ブランドの場合、EVを購入したら、自動車メーカーではない会社のブランドの充電器のみの選択肢となります」
ユアスタンドでは、今後、高出力なEV充電器の販売を手がける予定だという。