独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE<ナイト>)は、製品使用時における着衣着火の事故リスクの低減を目指すため、事故原因や事故防止のためのポイントや発生時の対処法などを発表した。
ガスコンロなどの炎や電気ストーブなどの熱源により衣服が燃えたり、焦げる「着衣着火」は、ガスコンロのように炎が出る機器だけでなく、電気ストーブなどの炎が出ない熱源を持つ機器に衣服が接触したりすることでも発生する可能性があり、やけどや火災や死亡事故が多く発生しているという。
特に冬場は、卓上コンロや暖房器具を使う機会が増えることに加えて、厚着で着火に気付きにくくなるため一層の注意が必要だ。
事故原因及び被害者の傾向
消防庁のデータによれば、着衣着火による死者は過去5年間(2017年~2021年)で492人となっており、毎年100人前後の方が亡くなっている。
実際、NITEにも2017年度から2021年度までの5年間に20件の事故が通知されている。製品別では、ガスコンロの事故が最も多く発生。事故の原因として消費者の誤使用や不注意などによる事故が8割を占めている(原因不明及び調査中を除く)。また事故は高齢者の割合が高く、死亡事故はすべて70歳以上の人となっている。
事故を防ぐためのポイント
ガスコンロや電気ストーブなどの使用時は衣服と炎や熱源との距離を意識して近づき過ぎない
ガスコンロで加熱中の鍋を赤外線カメラで見た様子(右が赤外線カメラの画像。緑の部分が炎)
ガスコンロなどの炎は、目には見えていない部分にも存在するため、目に見えている炎から離れていても着火する可能性がある。特に冬の時期は重ね着などで衣服の厚みが出るため、衣服の過熱や着火に気付きにくくなる。
衣服と炎や熱源との距離を常に意識して近づき過ぎないように注意する必要がある。火を消したつもりでも残火が生じている可能性があるため、しっかり消火を確認する。火が出ない電気ストーブや白熱電球などの製品も油断せず十分注意が必要。
火を扱う時は裾や袖が広がった〝だるだる〟〝もふもふ〟の衣服や紐付きの衣服などを避ける
調理中で炎が近くにある場合は、マフラーやスカーフなど長く垂れ下がる可能性のあるものは外して、裾や袖が広がっている、毛先が長い、毛羽立っている紐が付いているような衣服の着用はできる限り避ける。
特に化学繊維は、溶けて皮膚に張り付いてしまうのでやけどの被害が大きくなる可能性がある。調理時にはエプロンやアームカバーを着用することで、裾や袖の広がりなどを抑えることができる。
難燃・防炎仕様の素材は、炎が接しても着火しにくくまた燃え広がりにくいので、調理中の着衣着火の防止につながる。
着衣着火が発生した時の対処方法
直ちに水や消火器で消火を行い、周囲の人に助けを求める(すぐに服が脱げる場合は脱ぐ)。近くに水場や消火器がある場合は、着火場所に水をかけるなどして消火する。また衣類を素早く脱ぐことができる場合は服を脱ぐ。
ひとりでは対処できない場合もあるため、周囲の人に大声で助けを求める。
ストップ、ドロップ&ロール(止まって、倒れて、転がって)を行う
服が脱げず、近くに水や消火器がない場合は、「ストップ、ドロップ&ロール(止まって、倒れて、転がって)」を実践する。
パニックになって走るなどすると、風によって酸素が取り込まれて火の勢いが大きくなってしまうおそれがあるので、まずはその場で止まること。
体と地面の間にできるだけ隙間がないように地面に倒れ込み、燃えているところを地面に押しつけるようにしながら左右に転がることで消火させる。両手で顔を覆うようにして顔へのやけどを防ぐ。慌てず、落ち着いて対処する。
https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/press/2022fy/prs230126.html
構成/KUMU