■連載/阿部純子のトレンド探検隊
連続テレビドラマ化された漫「正直不動産」原案者の夏原武氏と不動産のAI査定サービス「ハウマ」を提供するコラビットの対談が開催され、漫画を通じて不動産業界の真実を伝える夏原氏が、不動産売却をする際の業者の選び方や心得など、不動産売買に役立つ知識を紹介した。
【夏原猛氏 プロフィール】
ルポライター、漫画原作者。1959年生まれ、千葉県出身。「現代ヤクザに学ぶ最強交渉・処世術」、「震災ビジネスの闇」など著書多数。漫画原案者として「正直不動産」、「クロサギ」、「逃亡弁護士成田誠」などのヒットを生む。現在「正直不動産」(ビッグコミック)、「任侠転生」(サンデーGX)、「カモのネギには毒がある」(グランドジャンプ)、「裏×表交差点」(ビッグコミック増刊)、「昭和の仕事師」(実話ナックルズウルトラ)を連載中。
「正直不動産」~夏原武氏(原案)、水野光博氏(脚本)、大谷アキラ氏(漫画)による漫画。小学館「ビッグコミック」にて2017年から連載中。2022年にNHK総合にて連続テレビドラマ化され話題となる。
「営業に必要なこと以外、客に見せも教えもしない」。そんな不動産業界で、登坂不動産のエース営業マン・永瀬財地は嘘をいとわぬ口八丁で売り上げナンバー1を叩き出している。しかし、とある地鎮祭で石碑を壊して以来、嘘が上手くつけなくなってしまい、海千山千の不動産業界で、敏腕営業マンの永瀬は嘘をつかない正直営業で奮闘する。
不動産会社を選ぶ際の注意点
不動産会社を選び際に、CMなどでおなじみの大手にと考える人は多い。大手はネットワークが広く、売却の際に買い手がたくさん集まる、大手ならではの信頼感もあると思われているが、不動産は極めて地域性の高い商品。会社の規模に関係なく、物件のある場所に強いのか、その地域で長く商売をしているのかが重要になる。
大手であることがすべてを凌駕することはあり得ないと覚えておくことが大事だが、やみくもに大手を避けるということではなく、大手でも得意な分野、地域があり、その場所に得意な不動産屋が大手であったならば選択の余地がある。企業の規模を問わず、まずその土地に強い不動産屋かどうかを優先して考えることが大切だ。
不動産のポータルサイトで地区を絞って検索すれば、その地で多く物件を扱っている不動産業者をある程度把握できるので、最初の一歩として、地場の中小の不動産屋からチェックしていく。
媒介には一般、専任、専属専任の3種類あり、一般と専任は他の不動産屋と交渉ができるが、専属専任は独占的に物件を任せる契約。専属専任は不動産屋に手数料が確実に入るメリットがあるので一生懸命やってくれると売り手は思ってしまうが、売れない物件は専属専任にしても売れ残ってしまう。
早く売りたいと急いでいる場合、顧客が多く来る大手を選びたくなるが、大手に専属専任契約を任せても安心ではなく、やはり売れる場所から成約していき、場所によってはいつまでも売れ残る可能性もある。専属専任だと他の不動産屋には任せられないため、塩漬けになってしまった挙句、最悪の場合業者が買い取って自社で売るということもあり、そうなるとかなり価格は下がってしまう。専属専任を選ぶときは慎重に行う必要がある。
良い担当者と出会うには
そもそも不動産取引は面倒なものだと心構えが必要。どの会社のだれに頼むのかと最初から面倒さを感じるが、入口を間違えないようにしないと後々さらに面倒なことになり、1年経っても売れずに安く買い取られることになりかねない。
良い営業マンかどうかの見極めは難しいが、ひとつの目安としてメリットよりもデメリットの話をしてくれる人は信頼できると考えて良い。
「この立地条件、広さでこの額まで売れると言われていますが、実際にその価格での成約はほとんどなく実際には8掛けほどで決まることが多いです」。こうした話をしてくれるかどうかがポイント。希望の金額に「それなら大丈夫、行けますよ!」とメリットだけを強調する人は信用しない方が良い。
売り手は高く売りたい、買い手は安く買いたいという真逆の希望である不動産取引の間に入る不動産業者には、双方に我慢をしてもらわないといけないという調整力が必要とされるので、その点を正直に話してくれるのかどうかは担当者の質を見るポイントになる。
さらに可能ならば、その会社で売ったことがある人を探して担当者を聞き出す。不動産取引は口コミが最大の武器なので、経験者の話は重要になる。事前の情報収集、口コミで良い営業マンがいれば指名することが可能な場合もあり、大手でも最近は担当者の過去の取引を公開して、売り手が選べるシステムを導入しているところもある。
希望の金額、売却までの時間、どのような属性の人に売りたいのか、はっきりと希望を伝えると営業マンも動きやすくなる。なんでもいいのでおまかせにしてしまうとトラブルの原因になりやすい。時間がかかってもいいから希望価格にして欲しい、価格は多少下がってもいいが早く売りたいなど、譲れる部分もはっきりと伝えておくことが重要だ。