「ずっとのお家」という言葉を知っていますか?
ボランティア団体さんなどに保護された猫は、里親さんが決まるまで保護施設や「預かりさん」と呼ばれる仮のお家で過ごします。
そのため、家族が決まり、生涯暮らすお家へ引き取られていく子のことを「ずっとのお家が決まった」なんて言い方をするんです。
今回ご紹介するのは、人の勝手で外へ放りだされた後、本当の「ずっとのお家」がみつかったある仔猫のお話です。
ひとりぼっちで外にいた仔猫
彼の名前は「つむぎ」くん。今年の3月に生まれたマンチカンの男の子です。どうみてもまだあどけない仔猫ですが、つむぎくんはつい1か月ほど前までひとりで外を歩いていました。
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お仕事帰りのこと、comugi_nattoさんはご自宅近くで仔猫を見つけました。梅雨空の下、目はショボショボで力なく、足をひょこひょこさせているように見えましたが辺りが暗いせいではっきりとはわかりません。
雨続きということもあり心配していたら、数日後再びその仔猫を見かけます。とっさに写真と動画を撮り、ご自宅から徒歩1分ほどの動物病院の先生に相談に行きました。この辺りで飼われている子なら、先生が知っているのではと思ったためです。
予想は的中し、先生は写真とよく似た仔猫のことを知っていました。でも、もしその子なら室内飼いのはずということ。迷子かもしれないからと、先生が飼い主の方へ連絡してくれることになりました。
後日、先生から連絡を受けた飼い主の方が仔猫を動物病院へ連れてきました。ところが、その方が語る「仔猫が外にいた理由」は信じがたい内容でした。
「引越しの都合で飼えなくなるから、外で暮らしていけるように放し飼いで慣らしていた。具合が悪そうなのも気づいていたが、慣れないと外でやっていけないのでそのままにしていた」
さらに、放し飼いにしてはいけないと説明する先生に対し、「引っ越すからそれはできない、保健所へ連れていくか里親を探してほしい」と答えたということ。
これを聞いたcomugi_nattoさんは怒りがこみ上げ、どうしたらそんな酷い扱いができるのか信じられない気持ちになったといいます。
当時仔猫の体重は平均の半分ほどしかなく、そもそも生後49日経たないと販売が許可されていないため引き取られてほんの1~2か月程度で外へ放り出されたことになります。
こんな身勝手極まりない理由で、小さな仔猫はひとりで外を歩いていたのです。
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仔猫をどうするのが良いか、comugi_nattoさんは悩みに悩みました。病院で長期間のお預かりは難しく、このままではまた外へ出されてしまうか、保健所へ連れて行かれてしまうかもしれない。
マンチカンの仔猫ならきっと貰い手が見つかるだろうけど、もし見つからなかったり、探す気がなかったら…?
どんなに考えても、やっぱりどうしても放っておくことはできない。comugi_nattoさんは、元飼い主とのやり取りの末、仔猫を迎えいれることを決心しました。
こうして、仔猫はつむぎくんという名前になり、これからは優しい家族がいる「ずっとのお家」で暮らすことになったのでした。
つむぎくんとこむぎちゃん
さて、実はcomugi_nattoさんのお家には先住の愛猫さんがいます。名前は「こむぎ」ちゃん、1歳のノルウェージャンフォレストキャットの女の子です。
こむぎちゃんとの出会いはブリーダーさんのサイトで、comugi_nattoさんは一目で「こんなに可愛い生き物がこの世にいるのか」と心を奪われてしまったのだとか。
好きなものは、なんといってもちゅーる!ちゅーるへの愛と執着心は、そんじょそこらのネコチャンには負けません(笑)
甘えん坊で添い寝好き、comugi_nattoさんがお風呂に入っていると必ず入れてアピールをしにくるという無邪気なこむぎちゃん。
つむぎくんをお迎えすべきかどうか悩んだのは、こむぎちゃんと上手くやっていけるかということも理由の一つでした。
初対面では案の定、マイペースで肝が据わっているつむぎくんに対し、何倍も体が大きいこむぎちゃんがビビりまくっていたそう!
でも、10日も経つ頃にはこの通り。一緒にお水を飲んだり毛づくろいしてあげる姿が見られるようになりました。
現在はつむぎくんが感染症にかかってしまったため隔離して生活しているそうですが、この様子をみる限り仲の良い姉弟になれそうですよね。
優しいお姉ちゃんがいる温かいお家で、これからも幸せに暮らしていくつむぎくんなのでした。
ずっとのお家がみつかった仔猫・つむぎくんと、お姉ちゃん猫のこむぎちゃんをご紹介しました。
取材・文/黒岩ヨシコ
※当記事は2020年8月10日に公開されたものです