最近、ネットニュースやSNSでも取り上げられることの多い「ポリコレ」。見聞きしたことはあっても、何を意味する言葉なのかを正しく説明できる人は少ないだろう。
そこで、本記事ではポリコレとは何かを具体的な事例とともに解説する。併せて紹介する、企業が実施するべきポリコレ対策もぜひチェックしてほしい。
ポリコレとは
早速、ポリコレの意味や具体例を紹介見ていこう。
ポリティカル・コレクトネスの略称
ポリコレ(PC)とは、「ポリティカル・コレクトネス(political correctness)」の略称だ。「ポリティカル・コレクトネス」は直訳すると「政治的正しさ」や「政治的妥当性」という意味になる。
最近、話題となることが多い「ポリコレ」は、偏見や差別に起因した表現や認識を改めるための概念のことで、人種や性別・文化・年齢・職業などの多様性を認め、中立的な表現や言葉を用いる方針を意味する。
また、日本では、言語表現や創作物、社会制度などからあらゆる差別をなくすべきだという考え方全般を指して使われることもある。
発祥・変遷
ポリコレは、1970年代にアメリカで活発化したフェミニズムや公民権運動の中で「政治的正しさ」の厳守を求める言葉として使用されたことをきっかけに生まれた概念だとされている。
1980年代には、人種や民族・ジェンダーに起因する差別を防ぎ、政治的・社会的に公正な表現を採用することを指す言葉として、世界中に広まった。
事例
日本国内で使われる「ポリコレ」が指す具体的な事例としては、主に以下の3点が挙げられる。
1.人種表現
黒色人種の総称として使用されてきた「黒人」は差別的な言葉であるという解釈から、近年では「アフリカ系アメリカ人」という表現が採用される例も増えてきている。
しかし「アフリカ系アメリカ人」は文字通り、アフリカ系のアメリカ人にのみ使える表現であり、他の地域にルーツのある黒色人種の人を表す表現としてはふさわしくない点が課題だ。
2.職業表現
職業の名称のなかには、特定の性別を連想するものがある。
代表例としては女性を連想する「保母」「看護婦」、男性を連想する「カメラマン(写真家)」「チェアマン(議長)」「ポリスマン(警察官)」、男性と女性で名称が変更される「スチュワーデス・スチュワード(客室乗務員)」が挙げられる。
しかし、現在は「保育士」「看護師」「フォトグラファー」「チェアパーソン」「ポリスオフィサー」「キャビンアテンダント」など、男女で統一された名称が使われるようになった。
3.敬称表現
かつては、男性の名前の後ろには「くん」を、女性の名前の後ろには「ちゃん」「さん」を付けるのが一般的だった。しかし近年、名前の後ろに付ける敬称は男女ともに「さん」に統一するルールを設ける団体も増えてきている。
ビジネスでも注目されるポリコレ
ポリコレは、企業のダイバーシティ経営や人事・広報活動においても重視するべき概念となってきている。
ダイバーシティ経営とポリコレ
多様性を意味する「ダイバーシティ」に注目が集まるようになった昨今、企業には「ダイバーシティ経営」が求められている。この実現に欠かせないのが「ポリコレ」の考え方だ。
日本では、少子高齢化に伴う労働人口の減少により、高齢者採用の必要性、国籍に縛られない採用が不可欠な状況になりつつある。また、さまざまなバックグラウンドを持つ就業者の活躍により、新たな視点での事業やサービスの展開が期待できると考えられる。
このような観点から、従業員全員が気持ちよく働けるようにポリコレを意識した環境づくりに取り組む企業は増加傾向にある。
人事・広報分野で特に注目されている
企業の人事担当者にもポリコレの視点が求められる。例えば、採用活動において応募者に対して出身地や宗教、思想に関する質問をするのは差別や偏見にも繋がるため避けるべきだろう。「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」の推進のためにはポリコレを意識した採用・環境整備が必要となる。
また、広報分野でも、特にSNSでの情報発信の際にポリコレの知識が求められる。言葉選びを間違えてしまえば批判の対象となり、最悪の場合は炎上する場合も。企業のイメージアップのために行う広報活動によって、かえってイメージダウンに繋がらないように注意したい。
組織で必要とされるポリコレ対策
最後に、企業が取り組むべきポリコレ対策を見ていこう。
ハラスメント対策
職場におけるハラスメント問題は多くの企業が抱える課題の一つ。ポリコレを重視した施策の実施が、社内における偏見のないコミュニケーションに繋がり、結果的にハラスメントを未然に防ぐことにも繋がると言える。
グローバル化対策
海外企業や言語・文化が異なる相手とのやり取りの際、就業者が無意識に差別的な発言をするケースがある。これが原因で、企業間での取引や就業者同士でのトラブルに発展する可能性もあるだろう。
このような事態を防止するために、ポリコレの理解度を高める研修を実施し、コミュニケーション上の注意点を記載したマニュアルを作成するのも有効な対策の一つ。
制度の見直し・改革
福利厚生や給料制度をポリコレに対応したものにする企業も見られる。例えば、育児休暇や介護休暇、アニバーサリー休暇や宗教による必要休暇を設けるなど、さまざまな性別、家族構成、思想に対応する制度として、対象者や制度の名称・内容を検討し直すことで、従業員間の不平等感を軽減することができる。
※データは2023年1月下旬時点のもの。
※情報は万全を期していますが、正確性を保証するものではありません。
文/編集部