小説やアニメの中で、登場人物が病に苦しむ場面や、何かに夢中になっている様子を表して使われることのある「熱に浮かされる」という言葉。日常生活で何気なく使うこともあるかもしれないが、実は誤用表現が使われることも多い。
そこで本記事では「熱に浮かされる」の意味や使い方、よく似た誤用表現も紹介する。この機会に正しい使い方ができているか、ぜひチェックしほしい。
「熱に浮かされる」とは
「熱に浮かされる」には、「病気で高熱を出している時にうわごとを言うこと」「前後を忘れて夢中になること」の2つの意味がある。
元々は病気で高熱を出したことによりのぼせ上がり、うわごとを言うことを表す言葉だったが、「のぼせ上がる」から転じて「夢中になる」という意味合いでも使用されるようになった。
「熱にうなされる」「熱に冒される」は誤用?
「熱に浮かされる」と響きが似ている「熱にうなされる」「熱に冒される」という表現を見聞きしたことのある方もいるだろう。しかし、どちらも「熱に浮かされる」の誤用表現だと考えられている。
1.熱にうなされる
「前後を忘れて夢中になる」という意味で使われることがあるが、これは誤用。文化庁が発表した「国語に関する世論調査(2006年度)」では、正しい表現である「熱に浮かされる」を使う人が35.6%、誤用の「熱にうなされる」を使う人が48.3%という結果が発表されており、多くの人が誤った認識を持っていることがわかる。ちなみに、「うなされる」は、恐い夢などを見て苦しそうな声をたてるという意味だ。
2.熱に冒される
「冒す」の意味は侵食する、とりついて駄目にすることで、通常「(病名)に冒される」という表現で使われる。このため、高熱によってうなされる様子を「熱に冒される」と言う人もいる。しかし「熱にうなされる」と同様に「熱に浮かされる」の誤った表現であるため、注意しよう。
熱に浮かされるの使い方
ここからは、適切な場面で「熱に浮かされる」を使えるように、例文を見ていこう。また、併せて紹介する類語表現もぜひチェックしてほしい。
例文
早速、「熱に浮かされる」の例文をいくつか見ていこう。
【例文】
・インフルエンザで熱に浮かされる。
・熱に浮かされて独り言を話す。
・熱に浮かされたように観客が騒ぐ。
・熱に浮かされたように寝食も忘れて一日中走り続けた。
類語表現もチェック
続いて、「熱に浮かされる」と同様のシチュエーションで使える3つの類語をチェックしよう。
1.のぼせる
夢中になることを指し、漢字では「逆上せる」と書く。他に「逆上する」「思いあがる」という意味で用いられる場合もある。
例:アイドル歌手にのぼせる。
2.熱中する
一つの物事に心を深く傾けること、夢中になることという意味を持つ。
例:ゲームに熱中しすぎて部活の練習がおろそかになる。
3.入れ込む
夢中になる、熱中する、のぼせるの3つの意味で使われる。
例:デビューしたばかりの俳優に入れ込む。
なお、反対語は「熱が冷める」。興奮がおさまる、熱した感情が冷める、のぼせが下がるという意味を持つ。
「熱に浮かされる」の英語表現
最後に、「熱に浮かされる」を英語で伝えたい時に使える2つの表現を見ていこう。
1.delirious with fever
直訳は「熱に浮かされる」。「delirious」は高熱などでうわごとを言う、ひどく興奮した、「fever」は病気による熱、興奮状態といった意味を持ち、組み合わせて使うことで「熱に浮かされる」という表現に転じた。
【例文】
・The patient is talking in the delirium of a high fever.(病人は熱に浮かされてうわごとを言っている)
2.be crazy about~
意味は~に夢中になっている、~に熱中している。
【例文】
・She is crazy about weight training.(彼女はウエイトトレーニングに熱中している)
文/編集部