トップは自社の戦略、考えを人前に出て話すべき
法林氏:今回は、3社のCEOが来日した際の話だけれど、冷静になって考えなきゃいけないのは、日本のキャリアのトップも結局同じだということ。2022年の7月に通信障害が起きた時、KDDIの髙橋社長が会見できっちり話せて良かったという話をしたけれど、それも同じこと。12月にStarlinkをKDDIの基地局のバックホール回線として使うことになった時も、髙橋社長が出てきて自ら話した。ソフトバンクも宮川社長が四半期ごとの決算会見で説明している。
人前で話すってことは経営者として大事なことで、自分の会社が何をやっているか言えなきゃいけない。そういう意味で言うと、まぁ、日本のナンバーワンキャリアは1年に2回ぐらいしか決算会見で話してくれない。
房野氏:上期と通期ですね。
法林氏:そうなると残念感がある。
石野氏:ドコモの決算会見は質問の数も1人1問で、5、6人への指名で終わる。すごく短い拘留時間ですよね。
石川氏:最近、挙手しても指名してくれない……
法林氏:先日発表された「dスマートバンク」についても、方向性や考え方、将来へのビジョン……まぁ、将来のことはなかなか話せない要素ではあるんだけど、プレゼン以外にもうちょっとそういう説明、社長としての考えを話した方がいいと思う。もしNTT持株との兼ね合いがあるんだったら、NTTグループとしての方向性を話すべき。要するに、ドコモをフロントエンドにしてやっていきたいと思っているわけだから、それぐらいのことは言わなきゃいけない。それができていない。
一方で、ピチャイさん、ナデラさんはちゃんと話している。「話していないのは誰ですか?」という話です。それをいえばザッカーバーグも話していないけど。
石野氏:みんな、ちょっとオンライン会見に頼りに過ぎというか。担当者がササッと会見するみたいな、簡易的なものに頼り過ぎている感じがするなっていうことはありますね。
法林氏:サービスはたくさんあるので、それぞれの担当者が話すのはもちろん必要なんだけど、やっぱりトップにいる人が前に出て、自社のことを話す必要がある。テレビに出てもいいし。アピール力がないと、ちょっとダメだなって思う。
石野氏:重みがなくなっているというか。日本でも海外でもオンラインで担当者が気軽に会見を開けるようになって、1つ1つの重みが減っているなって感じもします。久しぶりにiPhoneの発表会をリアルで取材したら、実際のモノもわかるし、細かい説明をいっぱい聞けた。去年、現地に行ってそういうコミュニケーションの大切さを改めて感じたので、だからCEOたちはみんな日本へ来ているんだろうなって思いました。まぁ、ピチャイさんがGoogle Pixelの発表会に来たのは、たまたまタイミングが合ったからだと思うんですけどね。でも、ちゃんとPixelのことをひと通り話して去っていくのを見て、さすがだなと思いました。
房野氏:各社が日本へ投資をするのは、やはり円安も関係ありますか?
石野氏:円安の関係はある。
法林氏:投資しやすいし、効果は大きい。
房野氏:日本はいろんなものが整っているし、いいのかなと。
石野氏:インフラが整っているのは大きいし、円安だし、地政学的にもそうですかね。アジアの中で考えると、アメリカ企業が中国にデータセンターを置くのは難しいじゃないですか。韓国とか日本は場所としても良かったりする。日本は経済力が落ちた落ちたと言われていますし、世界地図をメルカトル図法で見ると国土が小さく感じますが、日本の国土って本当は結構広い。人口も1億以上と普通に多いじゃないですか。
石川氏:日本はそこそこの市場規模だし、それに加えて日本で評価される製品は世界中で売れるっていう相乗効果もある。3社だけじゃなくて、中国メーカーも一生懸命、日本市場を開拓しようとしている。人知れず来日して、プライベートでヨドバシカメラとかへ行って買い物でもしてるんじゃないかと(笑)
房野氏:コロナ禍も落ち着く方向を見せていますし、偉い方々はどんどん日本に来ていただきたいですね。
法林氏:渋谷のスクランブル交差点で写真の1枚でも撮ってみろって思うわけですよ(笑)
石野氏:クックさんはお寺にも行っていましたよね。
房野氏:観光しているようにしか見えなかった。
石川氏:あそこはスティーブ・ジョブズが出家しようとした寺なんですよ。
石野氏:観光じゃん、ジョブズの思い出巡りじゃんって、正直思ったけど(笑)
房野氏:私は時々Twitterで「いいね!」を押しましたけどね(笑)
……続く!
次回は、CESについて会議する予定です。ご期待ください。
法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。
石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。
石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。
房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。
構成/中馬幹弘
文/房野麻子