これが耳栓の最終形態か!?
リモートワークが普及してから、“雑音”との付き合い方に悩む人が増えた。
当初は、自宅の部屋が静かすぎて、落ち着かないという人が多かったようだ。
なにしろ、コピー機の作動音や人の話し声など、オフィスの音を再現したアプリが登場したくらい。適度なノイズがあった方が、仕事がはかどることがあるのはたしかだ。
しかし、リモートワークに慣れてくると、今度はちょっとした耳障りな音が気になり始める。
近所の新築住宅の工事、家の前を走る軽トラ、隣室のテレビの声など。しかし完全な静寂は、違和感があって落ち着かない。なので、夜になるとわざわざカフェに行ったりする。
筆者も、そうした雑音のコントロールに悩まされてきたひとりだ。
聴覚過敏ではないが、カフェでノートパソコンに向かっていると、BGMや来店客の声が気になって仕方なくなる。
自宅の書斎にいると、エアコンの送風音がうるさいと思えることがある。そこでさまざまな耳栓を買って試してみたが、これはというものが見つからない。
■耳栓の専門メーカーが開発
そんなおり、偶然見つけたのが「dBud (ディーバッド)」という耳栓。スウェーデンのリーディングカンパニー、EARLABS社が開発した注目の製品だ。
初代「dBud」は2018年に発売され、当年のレッド・ドット・デザイン賞のオーディオとヘルスケアの2部門で受賞。
その後、小型軽量化をはかったうえで、耳へのフィット感を改善した二代目モデルが昨年末頃に発売。日本では、国内総代理店 PLUSULTRA(株)が取り扱っている。
製品構成はシンプルで、耳栓本体とマカロン型の収納ケース、そして耳穴にフィットさせるためのイヤーチップからなる。基本的にカナル型イヤホンによく似た外観だ。
本体は、非使用時に首にかけておけるリーシュ(紐)が付いており、リーシュ自体は着脱可能。首かけ時にずり落ちないよう、耳栓同士がマグネットでくっつく仕様となっている。
イヤーチップの素材は、メモリーフォームとシリコンの2種。それぞれ、3サイズ(S、M、L)と5サイズ(XS、S、M、L、XL)用意されている。
本体は、指でボタンをスライドさせることで、「開いた設定」か「閉めた設定」かを選べる。
前者の設定では、人の声の周波数を減衰させるとともに、それ以外の周波数をさらに減衰させる。
つまり、周囲の雑音を抑えながら、人の声は聞き取れるので、会話は問題なくできる。
一方、後者の設定では、全周波数帯域で非常にフラットな減衰となる。つまり、耳に入ってくる音のゆがみが少なく、音量を大幅に抑えながらもクリアな音を体験できるという。
普通の耳栓だと、高音と低音の減衰が均一でなく、音がこもってゆがんでしまう問題がある。ここが「dBud」の大きなアドバンテージだ。
アコースティックフィルターをスライドさせて設定を変更可能
使いかたは従来の耳栓と全く同じ。 本体のLとRの表示に注意して、左耳と右耳にしっかり装着する。
イヤーチップが合っていないと、耳へのストレスになるばかりでなく、肝心の効き目が薄れてしまうので、妥協せず適合するものを選ぶ。注意すべきはそこだけだ。
■実際に使用してみて
リモートワーク歴の長い筆者が実際に使ってみた。
今住んでいるところは閑静な住宅街だが、古い暖房機の音が大きく、時折近所の車がアイドリングしっぱなしで耳障りに感じることがある。
どのイヤーチップがぴったりするか若干の試行錯誤ののち使ってみると、そうした雑音が驚くほど減衰する……ただし、完全に音が消失するわけではない。
もしそうなってしまえば、静寂すぎて今度は落ち着かなくなってしまうだろう。減衰のレベルがちょうどいい塩梅なのである。
次は、駅前の繁華街に出かけ、混雑するカフェの店内にてノートパソコンで作業してみた。少々ビートの激しいBGMが流れ、近くの席から若い女性の会話が自然と聞こえてくる。
まず、「開いた設定」で装着すると、BGMがおとなしくなり、会話が少し静かになった。
耳をそばだてれば、どんな話をしているかわかるが、意識しなければ気にならないレベル。
ここで「閉めた設定」にすると、さらに静かになる。1人で作業するぶんには、「閉めた設定」をデフォルトにしていいだろう。
カフェで一仕事終え、雪の降りしきる外に出る。駅前は、バス、乗用車、電車の音が混じってノイズに満ちている。
再び「dBud」を装着すると、一瞬で喧騒がやわらぐ。はじめて、今まで当たり前のようにノイズに囲まれながら、街歩きをしていたことに気づく。
それは表面的に意識していなかっただけで、実は心のストレスになっていたのだ。
そう実感すると、「dBud」を手放せない気持ちになった。これは、ただの耳栓ではない。生活の質をアップしてくれる、有用な掘り出し物である。
「dBud」は、国内総代理店 PLUSULTRAのオンラインストアにて購入可能。興味を持ったらチェックしてみよう。
・公式オンラインストア:https://plusultra-dbud-earplugs.jp/
文/鈴木拓也(フリーライター)