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これ、肉でしょ…果物で作られた次世代肉「フルーツミート」を食べてみた

2023.01.29

「フルーツリエット」は、想像を超えた“肉感”!「これ、肉だわ」

これが、ジャックフルーツを使ったリエット風の一品。ちなみに「リエット」とはフランス料理で、豚のバラ肉や肩肉を豚の脂で柔らかく煮込んでペースト状にしたもの。ほぐれてトロトロになった豚肉の濃厚な味わいを楽しむ料理で、果物で代替できるとはとても思えないのだが…。

一口食べて、思わずつぶやいた。「これ、肉だわ」

リエットは脂肪分が多いので、作りたての温かい時はゆるゆるで、冷めると固くなる。また繊維を粗目に残したり、ほぼペースト状にしたりとお店によって違いがあるが、これは作りたてのような柔らかめのリエット。そして長時間煮込んで丁寧にほぐした高級店のリエットのようにデリケートな食感だ。

何より、肉そのものの旨味を強く感じる。ドン・キホーテのスナックにあった甘みもフルーツ感も皆無。本当に同じフルーツからできているのだろうかと、さらに疑問は深まる(その謎は後に解明)。

「フルーツガパオ」は香辛料と大豆ミートの合わせ技

つづいて「フルーツガパオ」。ガパオそのものの香辛料の香り。

たっぷりのフライドオニオンがトッピングされている。目玉焼き、ライスとよく混ぜて食べると、こちらもお肉そのもの。ガパオ風の香辛料が使われているので、それだけで問答無用で、舌と脳が肉だと認識させられる感じ。ミンチ肉風の弾力もあって、食感はさらに肉に近い。

店長の矢野裕之さんによると、フルーツミートに大豆ミートを加え、香辛料や調味料を加えて軽く温めているだけだという。「フルーツリエット」も、基本的にはペースト状のフルーツミートに香辛料を加え、盛り付けてオレンジ風味のオリーブオイルとレッドペッパーをトッピングするだけ。調理で肉に近づける工夫は特にしていないようなので、フルーツミートという食材そのものに、肉に近い味があるのだろう。

いったいどのようにして、あの複雑な甘みのジャックフルーツが、肉そのものに変身するのか。製造元のSustainable Food Asiaに聞いてみた。

勝手に育つ“アジア最大の果実”ゆえの悲劇

Sustainable Food Asiaは、「地球と⾝体にやさしい、新しい⾷のスタンダードを創造する」をコンセプトに掲げてサステナブルな⾷を発信・研究すべく、2022年1月に設立された会社。同社によるとフルーツミートが生まれた背景には、アジアの⼀部の地域で問題になっているジャックフルーツの廃棄による環境破壊問題があるという。

ジャックフルーツは“アジア最大の果実”とも呼ばれ、長さ70cm、重さ40~50kgに達する巨大なフルーツ。熱帯地方では肥料などを使わなくても勝手にどんどん育つ。

ジャックフルーツは、完熟すると甘くて美味。ドン・キホーテのスナックに使用しているのは、この完熟の甘いジャックフルーツなのだろう。

一方、未熟の状態だとほぼ無味だが、食感が肉と酷似しているという特長があり、東南アジアでの伝統的な料理ではカレーに入れることなどもあるという。

「しかしその多くは廃棄され、深刻な環境破壊を引き起こしています。我々は未熟なジャックの皮以外全てを活用して代替⾁という全く別の⾷品にアップサイクルすることで、大量の廃棄課題を解決することができると考えています」

フルーツミートが一般化すれば、廃棄による環境破壊を防げるだけではない。アジア、中東、アフリカ地域などにおける食肉需要の増加に伴う環境破壊を防ぐこともできる。さらに大豆や麦などの商品作物の大量生産に伴う環境への負荷拡大も避けることができ、人口増加に伴う飢餓問題も解決できる。一石二鳥どころではない多くのメリットがあるのがこのフルーツミートだという。

食物繊維たっぷりで低カロリーで糖質と脂質はほとんどゼロ

環境問題以外にも、メリットは多い。ジャックフルーツは、大豆ほどタンパク質は多くないが、食物繊維が豊富。しかも低カロリーで糖質と脂質はほとんどゼロという健康的な食品。肥満に悩む現代人がまさに求めているフードであることも、欧米で注目されている理由のひとつだ。

ではどのようにしてジャックフルーツを、肉風に加工しているのか。「未熟なジャックフルーツを活用し、特許取得している特殊な製法を用いることで、無添加でも自然に赤みの発色を実現しております。また、ジャックフルーツの繊維質が食肉に近いため、その特性を活かす形で加工を行っております」(Sustainable Food Asia)

※画像提供:Sustainable Food Asia

調理前のフルーツミート。
※画像提供:Sustainable Food Asia

企業秘密もあるのか作り方はいまひとつわからないが、つまりは化学的な添加物を使わなくても、肉に近い食感に加工できるということなのだろう。「PUBLIC HOUSE Yoyogi Uehara」の矢野店長の話によると、店にはペースト状で届き、それに香辛料や調味料を加えればほぼ完成するので、厨房での調理は非常にシンプルとのこと。

イスラム圏でもブレイクの可能性

「人口拡大が続き、2050年には100億人近くまでの人口となると言われる中、食料課題は世界の課題となっています。食肉をはじめ、私達の愛する食生活が、知らず知らずに環境負荷を与えていたりする現状を否定するのではなく、培ってきた食文化を大切にしながらも新しい選択肢を増やすことでこれらの課題を解決したいと考えております」(Sustainable Food Asia)

矢野店長によると「来店されるお客さまで、フルーツミートをご存じの方はほとんどいない」とのこと。筆者も、ドン・キホーテのイベントに参加しなければ、その存在を知らなかっただろう。

代替肉にはいろいろな食材が使用されているが、それぞれ一長一短。大豆はタンパク質が多くヘルシーだが、大量生産の過程での環境負荷や、遺伝子組み換え大豆の使用も課題となっている。きのこも食味が肉と酷似しているが、大量生産が難しく、コスト面での問題がある。麦などのグルテンを用いる代替肉もあるが、食味の点での魅力が課題…。

となると、

・農薬などを使用しなくても大量に自生するためコストが安い
・大量に供給可能
・農薬など、栽培に伴う環境への負荷がない
・食材そのものが糖質・脂質がほぼゼロで低カロリー、食物繊維が多く、ヘルシー
・無添加で加工できる

…などのメリットが多いジャックフルーツは、人間にとっても地球にとっても理想の代替肉に思える。環境問題に関心が高い層ばかりでなく、豚肉は禁忌とされているイスラム圏でもフルーツミートがブレイクする可能性があるという。

2023年は、フルーツミートに要注目だ。

取材・文/桑原恵美子

取材協力/
Sustainable Food Asia株式会社
カフェ・カンパニー株式会社
株式会社グッドイートカンパニー
PUBLIC HOUSE Yoyogi Uehara

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