
慣用句の中には、意味はよく知られていても、使い方を誤りやすいものも少なくない。「二の舞を演じる」もその一つだ。「二の舞」とは何か、舞は「踊る」のほうが正しいのではないかなど、とっさに質問された場合に答えられる人は決して多くないはずだ。
言葉の由来や間違えやすいケースを知っておけば、他の慣用句と混同する心配や意味を取り違える心配もない。そこで本記事では「二の舞を演じる」の言葉の由来と使い方、類語や英語表現について解説する。
「二の舞を演じる」の意味と語源
「二の舞を演じる」の読み方は、「にのまいをえんじる」。前の人の真似をすることを意味し、中でも、同じ失敗を繰り返すことを言う。
雅楽の舞が言葉の由来
「二の舞を演じる」の語源は、雅楽の曲の一つ『安摩(あま)』からきている。『安摩』では、最初の舞を踊った後に、それに呼応する形で『二の舞』が舞われる。
『二の舞』は、咲面(えみめん)をつけた老爺と腫面(はれめん)をつけた老婆という二人の舞手が、『安摩』の動きをまねて滑稽に踊ることから、前の人のまねをして失敗することを「二の舞を演じる」と言うようになった。
前の人と同じ失敗を繰り返す人やその状態を指して「二の舞」あるいは「二の舞になる」とも言う。
「二の舞を演じる」「二の舞」を使った例文
・同業他社の二の舞を演じないためにも、一から事業計画を練り直したい。
・失敗の原因をきちんと分析しなければ、前回の二の舞になる。
・一時の感情で動いていては、彼らの二の舞だ。
「二の舞を踏む」「二の舞を踊る」は間違い?
「二の舞を演じる」を、「二の舞を踏む」や「二の舞を踊る」と覚えている人もいるのではないだろうか。舞踊に関連する言葉だけに「踏む」や「踊る」でも問題ないと考えがちだが、「二の舞を演じる」が正確な表現なので覚えておきたい。
とっさに忘れてしまった場合は「二の舞になる」が、二の舞を演じる状態になることを表す正しい表現になるため、知っておくと役に立つはずだ。
「二の舞を演じる」と混同しやすい慣用句
「二の舞を踏む」「二の舞を踊る」以外にも「二の舞を演じる」と混同しやすい言葉がある。いずれも漢数字の「二」が付く慣用句だが、意味は異なるため、使う時に間違わないようにしよう。
・二の足を踏む(にのあしをふむ)
一歩目を踏み出した後に、二歩目をためらって足踏みすること。転じて、思い切れずに迷う様子を指す。
・二の句が継げない(にのくがつげない)
相手の言動に呆れたり驚いたりして次に言う言葉が出てこない様子。迷いやためらいを表現する「二の足を踏む」とは異なり、呆れてものが言えない状態を指す。
・二足の草鞋を履く(にそくのわらじをはく)
異業種の職業を同時にこなすこと。草鞋(わらじ)は「ぞうり」とも読み、わらで編んだ履物を指す。一つの足に2種類の履物を履くのは困難であることから、通常は両立が難しい2つの仕事をかけ持ちする意味で使われる場合が多い。
「二の舞を演じる」の類語や英語表現
「二の舞を演じる」は、ビジネスでもプライベートでも使える便利な言葉だが、類語を知っていると表現の幅をさらに広げられる。英語を勉強している場合や仕事などで英語に触れる機会が多い場合は、英語表現もチェックしておこう。
「二の舞を演じる」の類語は?
・轍を踏む(てつをふむ)
先人のしたことを繰り返すこと。また、先人が陥った失敗を繰り返すこと。轍(てつ)とは車や馬車などの車輪が地面に残す「わだち」を指す。「轍を踏む」で、先例に従うこと、もしくは先人と同じ誤りを犯すことを表す。
同じ意味の言葉に、「前轍を踏む(ぜんてつをふむ)」、「前車の轍を踏む(ぜんしゃのてつをふむ)」、「前車の覆轍を踏む(ぜんしゃのふくてつをふむ)」などがある。
・性懲りもなく(しょうこりもなく)
同じあやまちを繰り返し、改めずにいること。嫌な過去や思い出があるにも関わらず、同じことを何度も繰り返す様子を指す。
「二の舞を演じる」を英語で言うと?
「二の舞を演じる」を英語で表現する場合は、「repeat the same failure(同じ失敗を繰り返す)」や「make the same mistake(同じミスをする)」などで表現できる。「failure」「mistake」のほか「error(誤り)」を使っても良いだろう。
文/編集部