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カチカチ山、さるかに合戦はどう変わった?時代と共に移り変わる「日本昔話」のコンプライアンス事情

2023.01.23

実は残酷?時代と共に変化した「日本昔話」のコンプライアンス事情

ここ数年で、バラエティ番組や漫画における表現の規制はますます厳しくなった。

そんなコンプライアンスの波とは一見無縁に思える「日本昔話」だが、実は大きな影響を受けていることをご存じだろうか?

誰もが知る日本昔話にもコンプライアンス事情があり、時代と共に内容や表現が少しづつ見直されているのだ。

そこで今回の記事では、有名な日本昔話のなかでも特に今と昔で大きく内容が変化しているものを比較してご紹介する。

※本記事で紹介しているのはあくまで一説であり、日本昔話の内容や由来は地域や発行元、時代などによって様々です。

※内容の一部に残酷な表現があるため、自己判断のうえご覧ください。

日本昔話は口承文芸

そもそも昔話とは、民衆の間で代々語り継がれてきた口承文芸だ。民話の一種だがはっきりとした時代や作者は不明で、「むかしむかし、あるところに…」といったどこかの誰かの物語として語られる。

日本昔話のイメージ2

日本最古の物語として有名なのが、かぐや姫の原型である「竹取物語」だ。平安初期に作られたといわれ、かぐや姫に求婚する5人の貴族たちは壬申の乱に関わった実在の皇子や大臣をモデルにしたと考えられている。

ジブリ映画の原案にもなったほど超有名な竹取物語でも、地域や時代によって細かい部分に違いがある。

桃太郎しかり、浦島太郎しかり、日本昔話とはいずれも伝承によって変化し続けていく物語といえるのだ。

時代と共に変化した日本昔話① 「さるかにばなし(合戦)」

昔と今で内容が大きく変わっている日本昔話といえば、「さるかにばなし(合戦)」が有名だ。

日本昔話のイメージ4

そもそも「さるかに合戦」というタイトルが現代では「さるかにばなし」になっていることに驚く人も多いだろう。

昭和生まれの筆者にとっては「さるかに合戦」だが、現代っ子には「さるかにばなし」として馴染んでいる。「合戦」のまま出版されている絵本もまだあるにはあるが、「戦い」という表現があまりよろしくないらしい。

【さるかにばなしの昔と今】

カニは猿が木の上から投げた柿で甲羅を砕かれて死んでしまう

カニは猿が木の上から投げた柿があたって気絶するが、一命をとりとめる

子カニと仲間が協力して猿をこらしめる

子カニと仲間が協力して猿をこらしめる/または寝込んでしまったカニのために仲間だけで猿をこらしめる

カニの仲間は臼と蜂と栗と牛の糞

カニの仲間は臼と蜂と栗と昆布

仲間たちが猿をこらしめた後、敵討ちのために子カニが猿の首をチョン切る

こらしめられて改心した猿が謝り、みんなで仲良く柿を食べる

現代バージョンの場合、親子カニが登場することもあれば、登場するカニは1人だけで柿を投げられて寝込んでしまったカニのために仲間だけで猿をこらしめるパターンもある。

個人的には牛の糞のメンバーチェンジが1番の衝撃だ。汚いという理由なのかとも思ったが、実は有名な4人以外にも昔から様々なパーティが存在していたそうだ。昆布もその1人で、他にも蛇や包丁、卵、杵、菜箸などのパターンがあるという。

日本昔話のイメージ3

昔は「死んだ母カニの敵討ち」という意味合いが強かったものが、「いじわるな猿をこらしめて改心させる」といったスト-リーになっているところには時代の流れを感じる。かつては恐らく、身内の仇討ちの成功が美談として語られたのだろう。

時代と共に変化した日本昔話② 「カチカチ山」

本当は怖い日本昔話の筆頭として知られるのが、この「カチカチ山」だ。

日本昔話のイメージ1

その不気味さは、ネットで「カチカチ山」と検索すると「カチカチ山 サイコパス」や「カチカチ山 カニバリズム」など物々しいキーワードが並ぶほどだ。

もし残酷な表現が苦手な方は、この先は読まないことをおすすめする。

【カチカチ山の昔と今】

タヌキはおばあさんを騙して殺してしまう

タヌキはおばあさんを殴って気絶させる

皮を剥いでおばあさんに化けたタヌキは、おばあさんの肉を煮込んだ「婆汁」をおじいさんに食べさせる

あの手この手でタヌキをこらしめたウサギは、最後に泥船でタヌキを溺れさせ仇を打つ

あの手この手でタヌキをこらしめたウサギは、最後に泥船でタヌキを溺れさせ反省させる

タヌキは助けを求めるも、ウサギに櫂で叩かれ溺れ死んでしまう

タヌキはウサギに櫂で叩かれて改心し、助けられる

タヌキがみんなに謝って仲直りし、おじいさん、おばあさん、ウサギ、タヌキで仲良く餅を食べる

結末などは筆者もうろ覚えだったのだが、改めて昔版のあらすじを見るととても小さな子供に読み聞かせたいものではない。これはマイルドに改訂されるのも無理はないように思う。

本によっては、婆汁を食べたおじいさんが感想を述べるシーンや、タヌキがおばあさんの骨をおじいさんに見せて正体をバラすシーンなどもあるという。

現代版ではタヌキの残虐な行動は根こそぎカットされ、おばあさんは殴られて寝込むだけで死なないことも多い。

また、昔版のウサギは数回にわたってタヌキに制裁を加え、助けを求めるタヌキを許すことなく、最終的に追い打ちをかけて殺してしまう。そんなウサギの行動について現代では「やりすぎ」という意見も多いらしく、タヌキを許すストーリーに見直されている。

さるかにばなしもそうだが、改心した悪役をみんなが許して平和に仲良く共生するというのが今風のハッピーエンドなのかもしれない。

物語のコンプライアンス事情

伝統的な日本昔話でも、多くの人の目に入る以上避けて通れないのが表現の見直しだろう。

今回紹介したさるかにばなしとカチカチ山は2023年時点のものだが、数年後、数十年後にはまた違った物語になっている可能性もある。

もし興味のある人は、その他の日本昔話についても調べてみると意外な発見があるかもしれないのでおすすめする。

文/黒岩ヨシコ

編集/inox.

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