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業者が倒産したらどうなる?仮想通貨や株式が引出せなくなるリスクへの対処法

2023.01.23

暗号資産交換業のFTXトレーディングが倒産し、さらに顧客資産を流用していたことから、仮想通貨が引出し不可となった。同ケースと同じように、暗号資産や株式など取引業者の倒産で引出しできないことはあるのだろうか?

FTXの倒産

米暗号資産(仮想通貨)交換業大手FTXトレーディングが、連邦破産法11条(チャプター11)の適用を申請し、倒産した。さらに顧客資産は引出し不可となった。

暗号資産など顧客から預かった資産をその預かっている会社が自分のため(投資のため)に使うことは通常許されない。顧客は自分の資産をいつでも引き出すことができる権利があり、それを他で使って引出しできないという事態は許されない。

なぜ引出しできない事態になったかというと、FTXは顧客資産を関連投資会社アラメダ・リサーチに投資のために不正に流用し、顧客資産まで使ってしまっているからだ。普通許されないことだが、FTXが発行した「トークン(FTT)」(仮想の株式のようなもの)でCEOであるサム・バンクマン・フリード氏保有のものをアラメダに販売し、アラメダはそのトークンを担保にFTXから顧客資産を含む資産を引出し、投資していた。トークンはそもそもFTXが発行したものであるから、それをもとのFTXに担保と差し出しても実質自社株としかならず、FTXにとって担保的価値はないはずである。しかしながら、トークンはまだルールが定められておらず会計上自社株とならないため、外部にはわからなかった。さらに、その資金を使用して行ったアラメダの投資が損失を大きくし、取り戻せない状態となり、破綻さらに顧客資産を返還することができない結果となった。

この一連の取引に関して、バンクマン・フリード氏は逮捕、起訴された。

暗号資産交換業者の金融庁の登録制度

銀行に預けられる預金は、預金者以外の個人や法人などの貸付に充てることができる。そのため、銀行が倒産すれば預金者のお金は返ってこない可能性もあるが、預金保険制度により1金融機関ごと普通預金は1人あたり1,000万円まで保護される。保険料は銀行が支出しており、銀行が破綻したとしてもこの保険制度により預金は保護されている。また、過去リーマンショックを受けて、三菱UFJ銀行、三井住友銀行のような国際的な銀行は、リーマンショックのような大きな負荷がかかっても銀行の健全性が維持できるような厳格な金融規制を設けていることから倒産すること自体も考えづらい。

一方、投資信託などの金融商品を取り扱う証券会社は、自己資産と顧客資産の分別管理が厳格に規定されている。暗号資産などを取り扱う暗号資産取引業者やFXを取り扱う為替証拠金取引業者はそのような規定がなかったが、最近法整備が進んだ。

暗号資産においては、2017年4月施行「資金決済法・犯罪収益移転防止法等」の改正により、暗号資産(仮想通貨)交換業者が登録制となった。さらに、2019年改正では登録業者に利用者保護のため、以下が義務付けられた。

・顧客の暗号資産を信頼性の高い方法(インターネットに接続されていないコールドウォレット等)で管理
・流出のリスクがあるホットウォレットで管理する顧客資産は、別途弁済できる原資を保持
・顧客資産との分別管理(交換業者だけでなく、管理だけ行う業者にも義務付け)
・倒産時、顧客資産を優先的に返還するための規定

FXにおいても、FX取引業者は金融商品取引業の登録が必要だ。登録業者は顧客資産保護のため、相対取引である店頭取引の場合には信託銀行等へ金銭信託をすることにより、取引所取引の場合には金融商品取引所に預けることにより、顧客資産と自己資産を厳格に分別管理している。

日本のFTXは返金される予定

米FTXトレーディングが倒産したことを受けて、日本法人のFTXジャパンも倒産した。現在顧客資産は引出し不可となっているが、2月中旬には出金が可能となるようだ。

FTXジャパンは、金融庁に登録されている取引業者で、金融庁の規制を受けている。そのため、顧客資産は会社の資産と厳格に分別管理されており、倒産しても顧客資産の返却には支障を来さない状態だ。

登録取引業者の倒産をそんなに心配する必要はないが・・・

金融庁に登録されている取引業者で取引をしているならば、金融庁の規制下で顧客資産は分別管理されているはずだから、倒産してもきちんと返金されるはずだ。

ただ一方で、相場変動で価格が下落して損失を被るリスクは当然投資であることから、負うことになる。特に、暗号資産やFXは相場変動が大きく損失も大きくなりやすい。登録業者であれば取引業者の倒産を心配して取引を不安視する必要はないが、暗号資産やFX、株式は大きな相場変動により損失を被る可能性があるものであるというリスクを理解の上、損失を被っても困らない資金、リスク許容度での投資を考える必要がある。。

(参考)
2023年1月12日日経新聞「日本のFTX、2月にも返金準備 破綻から2か月」
暗号資産(仮想通貨)に関連する法整備について
20210407_seidogaiyou.pdf (fsa.go.jp)
いわゆる外国為替証拠金取引について:金融庁 (fsa.go.jp)

文/大堀たか子

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