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海外旅行でよく目にする「付加価値税」の起源と仕組み

2023.02.23

付加価値税(VAT)は、消費税と同様に間接税の一種です。製造や流通の過程で課税され、最終的に消費者が負担します。付加価値とはどのようなものを指すのでしょうか?付加価値税の起源や課税の仕組み、EU諸国における課税にまつわる問題点を解説します。

付加価値税(VAT)とは何か?

EU(欧州連合)やアジアの一部の国では、間接税の一種である『付加価値税(VAT)』が導入されています。海外に渡航する機会がある人は、どのような場合に付加価値税が課せられるのか、確認しておきましょう。

ものやサービスの提供にかかる税金

付加価値税の正式名称(英語)は『Value Added Tax』で、その頭文字から『VAT』と表記されるのが一般的です。海外で買い物をした際に受け取るレシートに、VATの文字が印字されているのを見た経験がある人も多いでしょう。

付加価値税は、EUやアジアの一部の国々で導入されている租税の一種です。物品・サービス提供に課される間接税であり、消費税と同等のものと認識されています。付加価値税には以下のような特徴があります。

  • ものやサービスの提供に課される
  • 担税者と納税義務者が異なる(間接税)
  • 水平的公平性(経済力の等しい人が等しい税負担をする)
  • 製造・流通・販売のすべての過程で課税される

そもそも付加価値とは?

『付加価値』とは、商品が製造されて消費者に届けられるまでの全過程(生産者→卸業者→小売業者→消費者)において、各事業者がその事業によって創出した価値を、製品やサービスに上乗せしたものです。

例えば、材料を1,000円で購入して製品を製造し、2,000円で卸業者に卸したとすると、製造者が生み出した付加価値は1,000円です。さらに、卸業者が2,000円で仕入れた製品を5,000円で小売業者に卸したとすると、卸業者が創出した付加価値は3,000円となります。

付加価値税は各過程で生み出された付加価値に対する税金であり、担税者(税金を負担する人)は最終消費者、納税義務者は事業者です。

付加価値税の起源はフランス

付加価値税は、1954年にフランスの財務官僚であるモーリス・ローレによって考案され、最初に同国で導入されました。

当時のフランスでは、自国の輸出企業に対して輸出補助金を出していましたが、GATT(関税及び貿易に関する一般協定)に抵触する恐れがあったため、輸出補助金に代わるものとして付加価値税が考案されたのです。

参考までに、フランスで付加価値税は『Taxe sur la Valeur Ajoutée』と呼ばれ、略称は『TVA』です。同じ付加価値税でも、国によって表記が異なる点に注意しましょう。

人・もの・サービス・資本が自由に行き来するEU加盟国では、域内での公平な競争を維持するために、すべての加盟国に付加価値税の適用が義務付けられています。

消費税も付加価値税も間接税の一種

電卓のボタン

(出典) photo-ac.com

日本では1989年に初めて消費税が導入されました。付加価値税や消費税は『間接税』の一種です。間接税の仕組みやメリット・デメリットを理解しましょう。

間接税の仕組み

税金は大きく、直接税と間接税に分けられます。直接税は、納税義務者が国や自治体に直接税金を納めますが、間接税は担税者と納税義務者がイコールではありません。

消費税は、『商品・サービスを消費すること』に対して課される間接税です。商品やサービスの価格に消費税が転嫁され、最終消費者が税金を負担する形になります。事業者を通じて間接的に納める税金であるため、間接税と呼ばれているのです。

間接税として、消費税のほかに、印紙税・酒税・たばこ税及びたばこ特別税・石油ガス税などが挙げられます。

参考:3 間接税|国税庁

付加価値税は商品ごとに税率が異なる

日本の消費税の税率は一律ですが、諸外国における付加価値税は、品目ごとに税率が異なる場合があります。食品や新聞などの日用品には低い税率、付加価値の高い高級消費財には高い税率が設定されるのが一般的でしょう。

EUでは、特定の商品・サービスに軽減税率が適用されています。例えば、スウェーデンの標準税率は25%ですが、新聞や運賃、文化イベントなどには6%の軽減税率が適用されます。

イギリスでは『ゼロ税率』を採用しており、食料品・水道水(家庭用)・新聞・雑誌などには付加価値税が課税されません。

参考:諸外国における付加価値税の概要|外務省

間接税のメリットとデメリット

消費税や付加価値税などの間接税は、所得の多寡にかかわらず、すべての人が同じ税率を負担します。担税者の不平等感が起こりにくい上に、目に見える影響が少ないのがメリットでしょう。

所得税のような直接税は、所得の増加に比例して税金が高くなるため、納税者の勤労意欲が削がれてしまいます。

間接税のデメリットとしては、担税者の個人的な事情が加味されない点です。所得税の場合、配偶者控除や医療費控除、障害者控除などがあり、税負担能力に一定の配慮がなされています。他方、間接税に控除を適用するのは難しく、所得の低い人ほど負担が大きくなることが懸念されます。

付加価値税(VAT)の問題点

各国のお金

(出典) photo-ac.com

EUや一部のアジア諸国で適用されている付加価値税について、いくつかの問題点も指摘されます。特にEUでは、国ごとに税率が異なるため、国家間の格差が生じているのが実情です。

同じ商品でも国によって価格差が大きい

EU加盟国に付加価値税の適用が義務付けられているのは、域内での公平な競争を守るためです。しかし、各国で付加価値税の税率が異なるため、同じ商品でも加盟国間で大きな差が生じます。

例えば、食品に対する付加価値税はイギリスが0%、ドイツでは7%、スウェーデンでは12%です。価格差の大きい商品を狙って商売を行う事業者もおり、公正な競争が阻害されていると問題視する人は少なくありません。

また、納税をせずに仕入れ税額控除だけを享受する、『カールセル』と呼ばれる脱税スキームが横行しているのも大きな問題です。

参考:諸外国における付加価値税の概要|外務省

構成/編集部

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