誰しも一度は耳にしたことがある「目くじらを立てる」という慣用句。些細な間違いにも目を光らせる様を表す言葉だが、この言葉の正しい意味や、そもそも「目くじら」とは何かを説明できる人は多くないだろう。
そこで本記事では、目くじらの意味や語源をはじめ、言葉の使い方や例文、類義語を解説する。
「目くじらを立てる」とは?
はじめに、「目くじらを立てる」の意味と語源を見ていこう。また、そもそも「目くじら」が何を表す言葉なのかについてもチェックしてほしい。
意味
「目くじらを立てる」は他人の欠点や過ちを取り立て、非難する様子を指す。一般的に些細な間違いを執拗に責めるニュアンスが含まれるため、難癖をつける人に対して使われることが多い。例えば、細かいことを気にする人の言動に対して「そんなに目くじらを立てなくても」といったように使用する。
語源
「目くじらを立てる」の「目くじら」が生き物の「鯨」に由来しているのでは、と勘違いしている人もいるかもしれない。しかし「目くじら」は目尻のことを指す言葉。
「目くじら」は「目くじり」という言葉が訛った表現で、「くじり」は物の隅や端を表す言葉として使われてきた古語。元々は「口」と「尻」が合わさった言葉だという。言葉の終わりを指す「言葉じり」からも「じり」という表現に端のニュアンスが含まれることがわかる。
「目くじら」に「立てる」を付けることで、目尻が吊り上がっている様、つまり怒っている様子を表すようになった。
「目くじらを立てる」の使い方、類義語は?
ここからは「目くじらを立てる」の正しい使い方と類義語を紹介する。正しい使い方を理解して、日常生活の中で活用してみてほしい。
「目くじらを立てる」の例文
「目くじらを立てる」は、それほど重要ではないことを取り立てる人に対して批判的な意味を込めて使われる。
【例文】
・あの教授は、いつも小さな事に目くじらを立てる。今度の論文発表に向けて、入念な準備をしておかなくては。
・いちいち目くじらを立てる姑とは仲良くなれない。
・そんなに目くじらを立てるようなことではないだろう。
「目くじらを立てる」はこのように、上司や教師、姑など自分より上の立場の人に指摘を受けた状況で使うのが一般的だ。
「目くじらを立てる」に似た意味を持つ言葉
「目くじらを立てる」と似た意味を持つ言葉に、「目角を立てる」「目口を立てる」の慣用句がある。「目角」も「目くじら」と同じく「目の端や目尻」を示し、「目口」は「目と口」のことを指す。どちらも「目くじらを立てる」と同様に、他人の欠点や些細な間違いを非難する意味だ。ちなみに、「目角」単体では「怒った目つき」を表すことも併せて覚えておこう。
他人の間違いを非難することを表す「揚げ足を取る」も、「目くじらを立てる」と類語関係にある。「揚げ足を取る」の場合は、特に人の言い間違いや言葉じりをとらえて非難することのみを指す点で「目くじらを立てる」と異なる。
また、「粗探し」を類語として思い浮かべる人もいるかもしれないが、「粗探し」は人の欠点や過失を探すという意味を持ち、「非難をする」という意味までは含まない。
「目くじらを立てる」の英語表現
最後に、「目くじらを立てる」の英語表現もいくつか確認しておこう。
代表的な表現として挙げられるのが「欠点を咎める」の意味を表す「find fault with」という表現。「He finds faul with small matters」と「with」の後に「small matters(些細なこと)」を付け足すことで、より些細なことに難癖をつけるニュアンスが出せる。ちなみに「些細なこと」の英語表現には、他にも「trivial matter」や「minor matter」などがある。
また、「scold over」には叱るという意味があり、「scold over a minor matter(些細なことで叱る)」の定型文として使用できる。
他にも、「make a fuss(大騒ぎをする)」という言葉も「目くじらを立てる」の英語表現として使える。例えば、「Don’t make a fuss about littte thing」とすると「小さなことで騒ぎ立てるな」という意味になる。make a fussには、騒ぎ立てる、構いすぎるの意から転じ、ちやほやすることを表す場合もある点も併せて覚えておきたい。
文/編集部