イベントにおけるファンの熱狂ぶりの例えとして「立錐の余地もない」という表現が使われることがある。人が密集していることを指す言葉だが、正しい使い方や語源まで理解している人は少ないかもしれない。
そこで本記事では、「立錐の余地もない」の使い方、その類語を紹介する。この機会に「立錐の余地もない」の使い方をマスターしておこう。
「立錐の余地もない」とは?
「立錐の余地もない」の読み方は「りっすいのよちもない」。まずは、この言葉の詳しい意味や語源について理解しておこう。
意味は「人や物が密集していること」
立錐とは、木に穴をあける道具である「錐(きり)」を立てることを指す言葉。つまり、「立錐の余地もない」とは、錐の細い先が立てるほどのほんのわずかな隙間(余地)すらないほど狭い土地である様を意味する。転じて、「ほんのわずかな隙間すらないほどぎっしり混み合う状態」の例えとして使われるようになった。
「立錐の余地もない」の語源は?
「立錐の余地もない」は、中国の歴史家、司馬遷によって書かれた歴史書であり、伝記文学の傑作とも言われる『史記』の「滑稽伝」に由来する。
同書の「いまや秦(しん)六国(りっこく)の子孫を滅ぼして立錐の地さえないようにした」の一節から広まった表現とされている。
「立錐の余地もない」の使い方
では、実際「立錐の余地もない」は、どのような場面で使われるのだろうか。ここからは、具体的な使い方と言い換え表現を例文とともに紹介する。
どのように使う?
先述の通り「立錐の余地もない」は、人が密集している状況を表す時に使える。具体的な使い方は以下の通り。
【例文】
・コロナの自粛明けもあいまって、2年ぶりに開催された野外フェスは、会場の端までファンで埋め尽くされ、立錐の余地もないほどの大盛況ぶり。感極まる一日だった。
・有名アイドルグループが来日するという噂を聞きつけ、会場のある駅内ではファンの群衆で溢れていて、まさに立錐の余地もない混雑だ。
「立錐の余地もない」の言い換え表現は?
「立錐の余地もない」には似たような表現がいくつかある。ここからは、わずかな隙間もないことや、人が密集している様子を表したい時に使える類語を見ていこう。
・置錐の地無し
読み方は「ちすいのちなし」。「置錐」は錐を置く場所を指す。
例文:「このところ急速に都市開発が進んでいる。自宅の周りの公園には、子どもが気軽に遊べる遊具がおける置錐の地も無くなってしまった」
・錐を立つる地なし
読み方は「きりをたつるちなし」。「立錐の余地もない」や「置錐の地無し」と同じく、錐を使った例え表現だ。
例文:「増税直前の大型スーパーは、安いうちに買いだめしておこうと急ぐ買い物客で、錐を立つる地がないほどに人が押し寄せ、レジの店員は疲労困憊の様子だ」
・針を立つる所なし
読み方は「はりをたつるところなし」。こちらは錐と同様に細い「針」を使って、わずかな土地や隙間もない様を表す慣用句だ。
例文:「毎朝、通勤ラッシュの電車内は超満員で針の立つる所がないほど混み合う。朝からどんよりしてしまうのも無理はない」
また、例えば通勤ラッシュ帯の満員電車の車内など、人が密集していることを表す表現としては「すし詰め状態の」「芋を洗うような」「身動きの取れない」などもよく使用される。
「立錐の余地もない」を英語で表現すると?
「立錐の余地もない」を英語で伝えたい時に使える表現としては「tightly packed」や「jam-packed」などが挙げられる。
【例文】
The live house was tightly packed with audience.(そのライブハウスは観客でいっぱいだった)
I hit the morning rush hour and the train was jam-packed.(朝の通勤ラッシュにぶつかり、電車は人でぎゅうぎゅう詰めの状態だった)
文/編集部