確定申告は1年間の所得に対する税額を申告し、納税する手続きです。所定の書類を揃えて税務署に提出しなければならないため、戸惑う人も多いかもしれません。初めて確定申告をする人向けに、ケース別の必要書類や提出方法を紹介します。
確定申告が必要なケースは?
会社員は基本的に会社の年末調整を済ませておけば、確定申告は不要です。しかし一定の条件に当てはまる場合は、個人で確定申告する必要があります。確定申告が必要となるケースを見ていきましょう。
控除を受けたい場合
会社員が確定申告する目的の一つに、還付金の受け取りがあげられます。以下のケースに当てはまる人は所得から控除を受けられ、納める税額が少なくなるため、納めすぎた分を返してもらえるのです。
ただし会社員の年末調整では以下の控除を受けられないため、個別に申請しなくてはなりません。
- 医療費や特定の医薬品購入費が一定金額以上かかった
- 住宅ローンを組んだ
- ふるさと納税を行った
- 退職して年末調整を受けていない
- 災害・盗難被害に遭った
また給与収入が年間2,000万円を超える会社員は、還付金の有無にかかわらず確定申告が必要です。
会社員以外の収入がある場合
以下のように、会社員以外の収入を得ている人は確定申告の対象となります。
- 1年間の所得が48万円以上ある個人事業主やフリーランス
- 本業の給与所得・退職所得以外の所得が年20万円以上ある会社員
- 株で一定金額以上の利益を出している人
- 不動産所得もしくは譲渡所得がある人
- 同族会社から貸付金の利子や資産の賃貸料などを受け取っている役員など
副業やアルバイトをしている会社員は、本業の給与以外の所得が合計20万円を超えると確定申告が必要と覚えておきましょう。
参考:No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人|国税庁
確定申告の際に揃えておきたい書類は?
確定申告では、さまざまな書類を揃えなくてはなりません。まずは誰でも必ず用意するべき書類を見ていきましょう。
共通して必要な書類
確定申告に必要な共通書類は以下の通りです。
- 確定申告書
- 本人確認書類
- 源泉徴収票や支払調書など所得が分かるもの
- 口座情報が分かるもの(還付金がある場合)
確定申告書にはAとBの2種類がありましたが、2023年からは一つに統合されています。本人確認書類は、マイナンバーカードまたは『番号確認書類と身元確認書類の両方』です。
番号確認書類はマイナンバー通知カードまたは住民票、身元確認書類は運転免許証・公的医療保険の被保険者証・パスポート・在留カードなどが使えます。
源泉徴収票や支払調書は、確定申告書作成の際に参照します。還付金がある人は、振込先口座の通帳やキャッシュカードなども用意しましょう。
なお2021年分より、税務関係の書類への押印が原則廃止されています。確定申告のために、印鑑を用意する必要はありません。
参考:確定申告の際にご持参いただくもの|国税庁
参考:税務署窓口における押印の取扱いについて|国税庁
参考:確定申告書等の様式・手引き等(令和4年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)|国税庁
一般的な控除関係の書類
医療費控除や寄附金控除、住宅ローン控除などを受けたい人は、それぞれの支払い金額を証明できる書類が必要です。年末調整を受けていない会社員や個人事業主は、社会保険料・生命保険料・地震保険料なども確定申告で控除できます。保険会社から送られてくる控除証明書を用意しておきましょう。
なお控除関係の書類は基本的に、『添付書類台紙』に貼り付けて確定申告書とともに提出することになっています。のりなどを持っていない人は、購入しておくと安心です。
特定の控除を受ける際に必要な書類
特定の控除を受ける際は、それぞれ所定の書類を確定申告書に添付します。よくある控除について、必要書類を見ていきましょう。
医療費控除を受けたい場合
医療費控除は、1年間に支払った医療費が一定金額を超えたときに適用されます。薬代がかさんだ場合は、特例として『セルフメディケーション税制』を選ぶ方法もあります。ただし両方同時に適用はできないため、注意しましょう。
医療費控除を受ける人は『医療費控除の明細書』に、セルフメディケーション税制を適用する人は『セルフメディケーション税制の明細書』に、それぞれかかった費用を記載して提出します。
明細書を作るためには、医療機関が発行する領収書が必要です。控除対象になるかどうかにかかわらず、病院や薬局に行ったときは領収書を保存しておくとよいでしょう。なお明細書作成に使った領収書は、5年間保存しておかなくてはなりません。
参考:医療費控除を受ける方へ|国税庁
参考:セルフメディケーション税制とは|国税庁
災害・盗難被害に遭った場合
災害や盗難で資産に被害が生じた場合、『雑損控除』を受けると所得税が軽減されます。また所得金額が1,000万円以下の人が災害に遭ったときは、被害状況によって、雑損控除か『災害減免法』適用のうちどちらか有利な方を選べます。
雑損控除を受けるときは、災害などに対して支払った金額の領収書が必要です。災害減免法の適用を希望する場合は、確定申告書に適用を受ける旨と被害状況・損害金額を記載し、損失額の明細書を添付して提出します。
参考:No.1110 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)|国税庁
ふるさと納税を行った場合
ふるさと納税は、自治体への寄附扱いとなるため『寄附金控除』の対象です。寄附金額に応じて控除や還付が受けられます。なお、以下のすべての条件を満たした人は、確定申告が不要な『ワンストップ特例制度』を利用できます。
- 医療費控除などがなく、確定申告の必要がない会社員
- 寄附した自治体数が5以下
- 期限内に寄附した自治体すべてにワンストップ特例の申請書を提出済
ワンストップ特例制度の条件を満たしていない人は、確定申告書に寄附先の自治体が発行する『受領証明書』をすべて添付して、控除を申請しましょう。
参考:ふるさと納税をされた方へ|令和4年分 確定申告特集(本番編)
住宅ローン控除を受けたい場合
住宅ローンを利用してマイホームを取得したときは『住宅借入金等特別控除』を受けられます。一般的な住宅の場合、以下の書類が必要です。
- (特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書
- 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
- 家屋の登記事項証明書
- 住宅の工事請負契約書の写しまたは売買契約書の写し
土地を買う人や補助金の交付・資金贈与を受けた人、認定住宅や省エネ基準適合住宅を購入した人は、それぞれ所定の書類を用意する必要があります。
また、会社員の場合は1年目だけ確定申告すればよく、2年目以降は年末調整で自動的に控除が適用されます。
年末調整を受けずに退職した場合
年末調整を受けずに退職し、同じ年に再就職していない人は、確定申告で納めすぎた税金が戻ってくるかもしれません。毎月の給与から引かれる所得税は、あくまでも概算です。実際の納税額は年末調整のときに計算し、過不足分を清算しています。
ほとんどの会社員は税金を多く納めているため、年末調整を受けていない人は確定申告する方が得といえます。
再就職した場合でも、再就職先が年末調整に前の会社の給与分を含めていないときは同様です。前の会社が発行する源泉徴収票をもとに確定申告書を作成し、提出しましょう。
参考:No.1910 中途退職で年末調整を受けていないとき|国税庁
青色申告で必要な書類
青色申告は、最大65万円の控除が受けられる申告方法です。副業などで事業所得がある人は、青色申告をすることで節税できます。青色申告で必要な書類を簡単に解説します。
青色申告決算書を用意
青色申告を行う際には、確定申告書だけでなく『青色申告決算書』も必要です。青色申告ができるのは、事業所得・不動産所得・山林所得のいずれかがある人で、決算書の様式はそれぞれ異なります。事業所得の場合は『一般用様式』を使うと覚えておきましょう。
青色申告決算書は、損益計算書1枚・損益計算書の内訳明細書2枚・貸借対照表1枚の4枚構成です。決算書の作成には簿記の専門知識が必要なうえに、記入する項目もたくさんあります。
確定申告の時期になって慌てないように、帳簿付けや領収書の整理などは、普段からこまめに行うとよいでしょう。簿記の知識がない人は、有料の会計ソフトや税理士に頼るのも一つの方法です。
なお、青色申告をする場合は事前に『開業届』の提出が必要です。