慣用句には「耳」や「目」など、人間の身体の部位を含む言葉が多い。「耳に留める」もその一つだ。正しい意味を知り、「耳に入れる」「心に留める」のように文字の似ている言葉と取り違えないようにしたい。
そこで本記事では「耳に留める」の意味と使い方、類語や間違えやすい表現などについて解説する。
「耳に留める」の意味と読み方
「耳に留める」の読み方は、“みみにとめる”、もしくは、“みみにとどめる”。人の話などを注意して聞くことや、しっかりと聞いて記憶に残すことを指す。
「耳に留める」の正しい使い方と例文
「耳に留める」は、自分にとって大切な情報をしっかりと聞く場合や、気になる話を覚えておこうとする際に使われるケースが多い。
・友人の忠告を耳に留める。
・まだ噂話の域を出ないが、耳に留めておこう。
・その小さな声を耳に留めた人は、誰もいなかった。
「耳に留める」と「耳に留まる」はどう違う?
「耳を留める」は、対象となるもの(相手の話や言葉など)を聞いた側が、「意識的に注意を向けて聴く(覚えておく)」ニュアンスを持つ。
一方、「耳に留まる」(みみにとまる、みみにとどまる)の場合は、自然に聞こえてきた話や言葉、音楽、物音などに対して「注意が向く」「記憶に残る」という意味になる。
なお、古語には「耳留まる(みみどまる)」という言葉もあり、こちらも「耳に留まる」と同じく「記憶に残る」ことを意味する慣用句だ。
意味の取り違えに注意!「耳に留める」の類語や間違えやすい表現
「耳に留める」のように、人の身体の部分が使われた慣用句には膨大な種類がある。意味の似ている言葉も多いため、類語や誤用の表現を覚えておこう。
「耳」が付く慣用句
・耳に入れる(みみにいれる)
情報、噂話などを人に知らせること。また、自分がそれらを聞いて知ることを指す。知らせる場合、知る場合ともに、自分から行動する積極的な意味を持つ場合が多い。
・耳に入る(みみにはいる、みみにいる)
物音、人の声・噂話などが自然と聞こえてくること。「耳に入れる」と比較すると、自分の意思に関係なく聞こえてくるという受身的なニュアンスを伴う。
・耳に付く(みみにつく)
一度聞いた音や声、話などが気になって忘れられなくなること。また、同じ話を何度も聞かされて嫌になることを意味する。
・耳に残る(みみにのこる)
一度聞いた音や声、話などが忘れられなくなること。「耳に付く」の一つ目の意味とほぼ同じだが、「耳に残る」の方には、「耳に付く」のもう一つの意味である「同じ話に飽き飽きする」のニュアンスはない。
「留める」「留まる」が付く慣用句
・目を留める(めをとめる)
注意して見ること、注目すること。「目に留”め”る」という慣用句はないため注意したい。
・目に留まる(めにとまる)
注意が引きつけられ、印象に残ること。際立って見えること。「心惹(ひ)かれる」「気に入る」などのようにポジティブなニュアンスを帯びる場合が多い。
・心に留める(こころにとめる)
人や物事を気にかけること。また、しっかりと記憶して忘れないでおくこと。「胸に留める」と混同される場合があるが、正しくは「心」を使い、「胸に留める」は誤用。
なお、「胸」を使った有名な慣用句としては、「胸に納める(むねにおさめる)」がある。こちらは、口に出さず心の中にしまい込んでおくことを指す慣用句。
・心に留まる(こころにとまる)
惹かれること、気にかかることを意味する。「心留まる(こころとまる)」は、強く心が惹かれることや未練が残ることを言い表す古語。「心に留める」とは意味が異なるため、誤用に注意したい。
「耳に留める」を英語で言うと?
仕事や日常生活で英語に触れる機会が多い場合は、「耳に留める」の英語表現も覚えておくと便利だ。
「耳に留める」の英語表現
「耳に留める」の意味のうち、「しっかり聞く」を表現したい場合は「listen carefully(しっかり聞く)」「all ears(ちゃんと聞く)」などが該当する。
一方、「(聞いたことを)記憶する」の意味の方を表現するのであれば、「覚えておく」を表現する「keep in mind」や「remember」「make a mental note of~」を使うと良いだろう。
文/編集部