■連載/ゴン川野の阿佐ヶ谷レンズ研究所
直感的に分かる3ダイヤルを採用
FUJIFILMのAPS-Cミラーレスの最新モデルX-T5の魅力と言えば、銀塩一眼レフカメラを思わせる伝統的なインターフェイスである。写真に精通していればトリセツを見なくても、直感的にダイヤルの役割を理解できるに違いない。例えばシャッター速度と絞り値を素早く視認できるためノーファインダーのスナップ撮影の時に便利だ。また、2個のコマンドダイヤルをカスタマイズすれば、EVFをのぞいたままでも快適に操作でき、二刀流の使い方が選べる。
今回は新発売のマクロレンズXF30mmF2.8 R LM WR Macroと超広角のXF14mmF2.8Rの2本のレンズを使い、FUJIFILMのGFXシリーズとXシリーズを愛用する写真家、小平尚典氏と伴に、昭和レトロ建築と植物園を回った。
3ダイヤルオペレーションと名付けられた操作ダイヤル。左からISO感度、シャッター速度、露出補正ダイヤル
手前にはプッシュ操作対応のコマンドダイヤルも装備。シャッターダイヤルの下部に静止画と動画の切り替えスイッチがある
14mmF2.8には被写界深度目盛があり、例えば絞りF8なら1m〜∞までピントが来ることを目視できる
背面のボタン類が大型化され押しやすくなった。右端はラウンド形状を採用
液晶モニターは3軸チルト。ヨコ位置で素早くローアングルにでき、タテ位置でもチルトできる
SDカードスロットはデュアルスロットになり、バックアップ撮影に対応
別売のハンドグリップ「MHG-XT5」を付けるとホールド性が向上する
ハンドグリップを付けたまま電池交換が可能。またアルカスイス互換のプレートとしても使える
電子シャッターを使えば、1/1万8000秒の超高速シャッターが切れる
4020万画素はノイズが少なく階調性にも優れる
APS-Cサイズフォーマット機のメリットはフルサイズに比べてボディもレンズも小型化できることだ。デメリットは画素数と背景のボケ味である。しかし最近ではAPS-Cサイズも高画素化を果たしている。X-T5も4020万画素と3000万画素を超えて、一気に4000万画素を実現している。
狭い面積で高画素化すれば個々の画素の面積が少なくなり、理屈ではノイズに弱くなる。ということで、今回は光の弱い屋内で撮影したのだが、階調性もノイズに関しても良好だった。動かない被写体であれば感度を上げるより、シャッター速度を下げた方が手ブレ補正機能の恩恵で、高画質に写る。逆に屋外のマクロ撮影では、そのままの設定で撮影していたら、風の影響で被写体ブレを連発してしまい、慌てて設定を見直した。
円形の吹き抜けがある中央ホール。暗部がつぶれずに滑らかな階調性が得られた
FUJIFILM X-T5 XF14mmF2.8R 1/60sec、F2.8、ISO200
2階から見たホール。タイル状になった1階の床の模様が繊細に描き分けられた
FUJIFILM X-T5 XF14mmF2.8R 1/7sec、F5.6、ISO200
旧公衆衛生院院長室、床は寄せ木細工。窓から差し込む強い太陽光と暗い室内を破綻なく描写
FUJIFILM X-T5 XF14mmF2.8R 1/13sec、F5.6、ISO200
らせん状の階段。床や手すりに石材が使われ、有機的な曲線で構成されている
FUJIFILM X-T5 XF14mmF2.8R 1/30sec、F5.6、ISO200
階段状に机と椅子が配置された旧講堂。20mm相当の超広角レンズながら歪みが感じられない
FUJIFILM X-T5 XF14mmF2.8R 1/15sec、F4、ISO200
下の階への明かり取りのためガラスブロックを使った床。明るさの違いで様々な表情を見せる
FUJIFILM X-T5 XF14mmF2.8R 1/30sec、F3.2、ISO200
45mm相当の等倍マクロレンズ。小型軽量でインナーフォーカス採用と使い勝手はよい
絞り込んで使うのがマクロの常識だが、絞り開放にすると背景のボケがキレイだった
FUJIFILM X-T5 XF30mmF2.8 R LM WR Macro 1/550sec、F2.8、ISO200
上の画像を100%で切り出すと、4020万画素の実力が実感できた
FUJIFILM X-T5 XF30mmF2.8 R LM WR Macro 1/550sec、F2.8、ISO200
マクロレンズは無限大までピントが来るので一般撮影にも使える。切れ味のいい描写だ
FUJIFILM X-T5 XF30mmF2.8 R LM WR Macro 1/150sec、F2.8、ISO200
奇妙な形のムサシアブミの実。これはもう少し絞り込んだ方が良かった。
FUJIFILM X-T5 XF30mmF2.8 R LM WR Macro 1/150sec、F2.8、ISO200
水に濡れた赤い実をVelviaモードで撮影。鮮やかな赤と緑が再現された
FUJIFILM X-T5 XF30mmF2.8 R LM WR Macro 1/80sec、F2.8、ISO200
普段使わない45mmの画角はスナップに使うと新鮮に感じられた
FUJIFILM X-T5 XF30mmF2.8 R LM WR Macro 1/600sec、F2.8、ISO200
新たに追加された「ノスタルジックネガ」を使うと退色したような雰囲気が得られる
ノスタルジックネガを使った曇天の屋外でのスナップ。実際より色褪せた街が浮かび上がった
FUJIFILM X-T5 XF30mmF2.8 R LM WR Macro 1/125sec、F3.6、ISO125
写真・文/ゴン川野