国税のダイレクト納付により、所得税の納税が簡単にできます。手数料の負担もないため、e-Taxを利用する人は、ダイレクト納付ができるようにしておくのがおすすめです。ダイレクト納付に必要な手続きや利用手順、注意すべきポイントを解説します。
国税のダイレクト納付とは何か?
国税庁は『e-Tax(国税電子申告・納税システム)』と連動した、国税の納付手続きである『ダイレクト納付』を利用できるようにしています。まずはダイレクト納付の概要と、納付対象となる国税の種類を押さえておきましょう。
納税申告後にすぐ国税を電子納付する方法
ダイレクト納付とは、e-Taxを使って電子申告をした後、そのまま届出済みの預貯金口座からの振替により、国税の即時納付を行う方法です。申告したタイミングですぐに納付が可能で、指定した期日に納付することもできます。
事前に税務署への届出は必要なものの、簡単なクリック操作だけですぐに税金の納付ができるので、個人事業主やフリーランスにとってメリットが大きいでしょう。インターネットに接続されたパソコンがあれば、簡単な手続きですぐに利用できます。
参考:国税の納付は、簡単・便利なダイレクト納付をご利用ください|国税庁
そもそもe-Taxとは?
e-Taxとは『国税電子申告・納税システム』のことで、所得税・印紙税・消費税などにおいて、国税の申告・提出・届出といった手続きを、インターネット経由でできる制度です。
わざわざ税務署や役所など決められた場所に出向かなくても、手軽に確定申告ができるので、多くの個人事業主をはじめ、確定申告の対象者に利用されています。e-Taxによる確定申告とともに、国税をダイレクト納付してしまえば、さらに手間を省けるでしょう。
ダイレクト納付のほかにも、インターネットバンキングや『ペイジー(Pay-easy)』を利用した納付も可能です。e-Taxに対応した会計ソフトも数多くリリースされており、申告データの作成・提出の流れを簡略化できます。
e-Taxについて知る|【e-Tax】国税電子申告・納税システム(イータックス)
ダイレクト納付の対象となる税目
ダイレクト納付の対象となる代表的な税目は、次の通りです。
- 源泉所得税
- 申告所得税
- 法人税、地方法人税
- 消費税、地方消費税
- 相続税
- 贈与税
- 酒税
- 印紙税
ほかにも、国際観光旅客税や石油ガス税、復興特別所得税などが対象となります。なお、e-Taxソフトを利用して税目や課税期間、申告区分などのデータを作成・登録し、納付内容に対応する区分番号を取得しておけば、全税目の納付も可能です。
なお、ダイレクト納付でも、指定した期日に納付する『予納ダイレクト』の場合は、申告所得税・復興特別所得税・消費税・地方消費税・法人税・地方法人税・贈与税のみが対象となります。
参考:【e-Tax】国税電子申告・納税システム(イータックス)
国税をダイレクト納付するメリット
国税をダイレクト納付するメリットとしては、所得税や法人税などの納付手続きの簡略化が可能な点と、手数料を負担しなくて済む点が挙げられます。
納付手続きの簡略化が可能
ダイレクト納付の最大のメリットは、納付手続きの手間を削減できる点です。税務署や各市町村の税務課などに出向かなくても、e-Taxにより確定申告が可能になりますが、さらにダイレクト納付を選択すれば、自宅や事務所からそのまま税金の納付ができます。
特に源泉所得税や復興特別所得税の納付をはじめ、数回にわたって手続きが必要なものに関しては、ダイレクト納付の恩恵が大きいといえるでしょう。
利用料や手数料の負担がない
ダイレクト納付では、あらかじめ指定した預貯金口座から納付されるので、振込手数料やシステムの利用料などがかからないのもメリットです。インターネットバンキングの契約も不要で、初回のみ利用届出書を提出すればよく、指定した期日での納付もできます。
なお、滞納してしまった国税を分納する場合も、これまでは納付書による支払いが必要でしたが、2022年5月からダイレクト納付の利用も可能になりました。
参考:ダイレクト分割納付の利用にあたって|e-Tax 国税電子申告・納税システム
ダイレクト納付を利用する手順
ダイレクト納付を利用するための手順を解説します。難しい手続きではないので、手順を理解した上で、余裕を持って準備しておきましょう。
ダイレクト納付が可能な金融機関に口座開設
ダイレクト納付ができる金融機関に口座を持っていない場合は、まずは預貯金口座を開設する必要があります。利用可能な金融機関は国税庁の公式サイトで確認できるので、チェックしておきましょう。
都市銀行(三菱UFJ銀行や三井住友銀行、みずほ銀行など)や地方の主要銀行をはじめ、数多くの銀行や信用金庫が利用可能で、ゆうちょ銀行でも納付が可能です。
利用者識別番号の取得
納付用の口座を開設したら、e-Taxの開始届出書を提出する必要があります。e-Taxの公式サイトより、e-Taxの『開始届出書』をオンラインで提出しましょう。
さらに届出書を提出したら、利用者識別番号を取得します。識別番号は即時発行されるので、忘れないように控えておきましょう。
利用者識別番号は電子申告に必要な16桁の番号で、なりすましの防止に必要です。すでにe-Taxを利用している人で、新たに納付の手続きをする人は、後述の利用届出書を提出しましょう。
また、ダイレクト納付の利用までに『納税用確認番号』や、納税用カナ氏名・名称の登録、さらにメールアドレスの登録なども済ませておく必要があります。詳しくは国税庁の公式サイトを確認しましょう。
参考:作成・送信する開始(変更等)届出書の選択|【e-Tax】国税電子申告・納税システム(イータックス)
ダイレクト納付利用届出書の提出
国税庁の公式サイトからダウンロードできる『国税ダイレクト方式電子納税依頼書兼国税ダイレクト方式電子納税届出書』に必要事項を記入し、署名・押印をしたら、税務署に提出します。居住地を管轄する税務署に直接持ち込んでも、送付しても構いません。
ダイレクト納付が利用できるようになるまでには、当書面を提出後1カ月程度かかるため、余裕を持って提出しておきましょう。
税務署に当該書面が受理され、ダイレクト納付が利用できるようになれば、e-Taxのメッセージボックスに『ダイレクト納付登録完了通知』が届きます。これでダイレクト納付にかかる手続きは完了です。
参考:国税ダイレクト方式電子納税依頼書兼国税ダイレクト方式電子納税届出書|国税庁
ダイレクト納付の注意事項
ダイレクト納付を利用する際には、以下の点に注意が必要です。デメリットというほどではありませんが、領収書が必要な場合や、確定申告まで時間のない人は注意しましょう。
領収書は発行されない
e-Taxを使った電子納税は、自宅やオフィスなど、インターネット環境とパソコンがあれば手続きが可能ですが、領収書が発行されない点は覚えておきましょう。
領収書が必要な場合は、これまで通り納付書を使って、金融機関や税務署の窓口で納付する必要があります。
利用開始まで時間がかかる
上記の手順で示したように、初めてのダイレクト納付の手続きには、対応している金融機関での口座開設と、届出書の提出が求められます。利用可能まで1カ月程度の期間が必要なので、十分な期間を設けて準備しておくことが大事です。
また、電子納税の利用は祝日や年末年始を除き、平日(月曜~金曜)は24時間可能で、確定申告の時期は土日も常に利用できます。ただし、機器のメンテナンスやシステムトラブルにより、利用が休止される可能性もあるので、確定申告も余裕を持って行うようにしましょう。
構成/編集部