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日本人が「子育て罰」を感じざるをえない理由

2023.01.14

「子育て罰」という言葉を聞いたことがありますか?

「子育て罰」は、子育てをすることがまるで罰であるかのような、子育てをする人に厳しい今の政治や社会を批判して使われます。

筆者も3人の子どもを育てていますが、子どもが多いほど生活が苦しくなるという現状を痛感しており、産み控えを選択する人の気持ちもよく分かります。

岸田総理大臣の「異次元の少子化対策」という発言が話題になっていますが、果たして「子育て罰」はなくなり、「子育てにやさしい社会」は訪れるのでしょうか。

「子育て罰」と感じる理由

「子どもは国の宝」と言われることもありますが、「宝」であるはずの子どもを育てている親世代の生活はますます苦しくなっています。

1)所得が増える予測が立たない

厚生労働省の「毎月勤労統計調査(※1)」によれば、令和4年11月の現金給与の総額は、前年同月比0.5%の増加と、11ヵ月連続で上昇しましたが、実質賃金は3.8%減と、8カ月連続で減少しています。

現金給与が上昇しても、物価の上昇の影響などにより、実質の賃金が減少していれば、私たちの生活は「豊かになった」と感じることはできません。

また、国税庁の「令和3年分 民間給与実態統計調査(※2)」によると、日本人の給与平均は443万円となっています。前年と比べやや伸びてはいるものの、長期的に見れば「ほぼ横ばい」の範囲です。

このような状況では、「子どもの教育費がかかる頃には給料が増加しているだろう」というような楽観的な将来予測を立てることは難しいのではないでしょうか。

2)収入が高いほど、支援が少ない

「幼児教育無償化(※3)」として3歳~5歳児の保育料は無料ですが、今でも0歳から2歳児の保育料は必要です(保育所等を利用する最年長の子供を第1子と数え、第2子は半額、第3子以降は無料などの諸条件があります)。

仮に年収1000万円前後、所得割課税額が365000円未満とすると、東京都練馬区の保育料は47,600円です(※4)。

加えて、児童手当もおよそ年収960万円を超えると特例給付の対象となり、さらに年収1200万円を超えると特例給付もなくなります(※5)。

また、児童手当のような所得による制限は「高等学校等就学支援金制度」などにも存在します(※6)。

大学進学に際しても、国の奨学金(日本学生支援機構)の奨学金にも収入の基準があります(※7)。

子どもが幼いうちは、年収が高くなるほど保育料も高くなる上、児童手当も見込めなくなり、高校、大学でも支援の対象外となる現状では、仮に収入を増加して教育費を賄おうという計画を立てたとしても「収入が増えると税金は増えるのに支援が減る」という不安から、高収入であっても産み控えを検討する家庭があってもおかしくないでしょう。

3)育児、家事、仕事の両立が難しい

「子どもは産めば終わり、あとは勝手に育つ」というものでもありません。

最低限の教育を受けるための金銭的な面でのサポートはもちろんのこと、「わが子に、より良い教育を受けさせたい」と学校外の教育にもできる限り力をいれたいと考える人も多いでしょう。

加えて、社会に出た時に困らないような基本的な生活習慣を教える必要もありますし、洗濯などの家事労働も子どもが多いほど増加します。

2人3人の子どもを育てつつ、育児、家事、仕事を両立させることは、核家族でたった2人の大人が担うには、経済的にも精神的にも体力的にも負担が大きいものです。

「子育てのために仕事を減らさなければならない」という人もおり、子育てのために収入を減らさなければならないという事態に陥れば、経済的なゆとりもますます生まれにくくなります。

仮に、収入を減らさずに多子の育児をすることを選択しても、精神的なゆとりを犠牲にしなければならない場合もあり、すべてをうまく両立させるというのはなかなか大変なことです。

そのため、多子家庭を維持しつつ、仕事、家事、子育てなどを両立することは「大変」というイメージを抱く若者も多く、様々なこととの両立のしにくさが産み控えを促進する可能性もあるのではないでしょうか。

4)教育費で老後資金が不足する

筆者には、「稼いでも稼いでも子どもに吸い取られていく」と表現した友人がいますが、一般的な収入の範囲では、「子どもの教育費だけで精一杯」という人も多いのではないでしょうか。

なかには子どもの教育費で多額の借金を抱えてしまう人もいますし、仮に何とか借金をせずに子どもを成人させることができても、「老後資金の準備が不充分」という人も多く、退職金も減少の傾向にあることから、「子育てをしたことにより、老後の生活が貧しくなった」と感じてしまう人がいてもおかしくないでしょう。

自分のために使うお金や時間よりも子どものためのお金と時間を優先しながら、国の宝ともいえる子どもを大切に育てたことで、「経済的なゆとりのない老後しか送れない」と思うと、「子どもがいる生活はプライスレス」と思う反面、どこか人生のむなしさを感じてしまうという人もいるのではないでしょうか。

「子育て罰」と感じる社会の見直しを

子どもを育てるのが経済的に苦しいのであれば、「子どもを産まなければいい」「経済的に苦しいのは自己責任だ」という人もいますが、だからこそ産み控えを選択する人も多いのであり、自分の生活がままならない状況で「日本の少子化のために」と考える人はどれだけいるのでしょう。

少なくとも、「子どもは欲しいけれど、あきらめよう」と産み控えを選択している人が、経済的にも社会的にも安心して子どもを産み育てることができる社会への変革が求められます。

※1厚生労働省「毎月勤労統計調査」
※2国税庁「令和3年分 民間給与実態統計調査」
※3内閣府「幼児教育・保育の無償化について」
※4練馬区「保育料表」
※5内閣府「児童手当」
※6文部科学省「高等学校等就学支援金」
※7日本学生支援機構

※データは記事執筆時点での情報。公開後に制度や内容が変更される場合がありますので、最新の情報についてはホームページなどでの確認をお願いします。
※情報は万全を期していますが、その内容の完全性・正確性を保証するものではありません。

文/家計簿・家計管理アドバイザー あき
著書に「1日1行書くだけでお金が貯まる! 「ズボラ家計簿」練習帖(講談社の実用BOOK)」「スマホでできる あきの新ズボラ家計簿(秀和システム)」他 

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