放置は厳禁！急性アルコール中毒の対処法と危険な状態の見極め方

新年会シーズンだ。お酒は適量ならば気持ちを高揚させ、会話も弾むが、一歩間違えれば命を失う可能性もある。

楽しくなってお酒をガブガブ飲んでいると、横に座っていた人がピクリとも動かなくなった――。もし、自分の横で飲んでいた人が急性アルコール中毒で危険な状態になったら、どういう対応をすればいいのか。相馬中央病院内科の齋藤宏章さんに話を聞いた。

急性アルコール中毒で呼吸が止まってしまう

急性アルコール中毒とは、アルコールの血中濃度が一気に上昇することで身体に症状が起きることだ。どのレベルになると危険なのだろうか。

「体の中にアルコールが入ると肝臓などで代謝します。人それぞれの分解能力を越えて血中濃度が上がっていくと、脳の神経細胞などに作用して、あらゆる症状を引き起こします。症状は4段階くらいにわけられ、第3段階あたりから要注意です。アルコール濃度0.1％くらいの軽い状態だと、幸せに感じたり注意力散漫になるとか、認知能力が軽く落ちたりするレベル。第二段階になると、注意力の低下や判断能力の欠如。ろれつが回らなくなったり歩けなくなったりします。第三段階になると酩酊状態に。何を言っているのかわからないとか、吐き気や嘔吐の症状も現れます。そして最後がこん睡状態。昏睡状態になると呼吸抑制が出たり、低体温症になったりして、死に至ることもあります。基本的には揺さぶっても声をかけても反応しない状態です」

昏睡状態になったら絶対に救急車を呼んでほしいという。寝ている状態とは明らかに様子が違うという。

「ひどい急性アルコール中毒になると、頭が麻痺したようになります。呼吸を司る機能が麻痺すると呼吸が止まってきますし、体温を保つ機能が麻痺すれば低体温症になります。救急車を呼んだ後もそのまま放置するのではなく、嘔吐する可能性があるため、吐いたものを喉に詰まらせて窒息死してしまわないように、横向きにしてあげてください。これを回復体位といいます。もしあまりにも冷たくなってきているようならば、寒さを防ぐように布をかけてあげるのもいいでしょう。ほか、酔っぱらって転倒して、二次被害で外傷として運ばれてくる人もいます。もし頭をぶつけていたりすると揺さぶるのは危険なので、体を横にしたらそっとしておくようにしてください」

救急隊員が来たら、どれくらい飲んだかがわかるのであれば伝え、基礎疾患などもわかる範囲で伝えるといいそうだ。とはいえ、もし救急車で運ばれたとしても、病院でできることは限られているという。

「急性アルコール中毒というのはどんなに重症でも点滴をして脱水を防ぎ、アルコールが抜けるのを待つしかありません。抜ける前に呼吸が止まりそうならば人工呼吸器挿管をするなど対処はしますが、あくまで対処療法。アルコール中毒に対する解毒薬というものはない。そのため、ひどい状態だとそのまま亡くなってしまうんです」

救急車で運ばれるレベルではなくとも、凍死や事故死、窒息死のリスクもある

もし救急車を呼ぶほどではないものの、酔いが深い人が周りにいた場合は、適切に送り届けることが大切だ。

「帰り道や帰宅後に亡くなっているというケースがあります。帰り道に眠ってしまいそのまま朝を迎えて凍死したり、酩酊状態でふらふらしているため思わぬ事故にあったり、家に帰ったものの上向きで寝てしまい嘔吐してそのまま窒息死なんてことも。救急車を呼ぶまでもないという人であっても、ちょっと危ないかもという人を放置しないことがとても大切です。家に送り届け、横向けに寝かせてあげるところまではしてあげてほしいです」

楽しくなってもアルコールは適量が肝要だ。周りに危なそうな人がいたら、お水をすすめたり、遠慮なく嘔吐することを促そう。

「日本人は比較的アルコールに弱い民族だと言われます。飲めば飲むほどお酒に強くなるなんてことはなく、遺伝的なものの影響が大きい。また、いくら強いとはいえたくさん飲んだり一気に飲めば急性アルコール中毒で危険な状態になります。口から入ったものは胃や小腸で吸収します。食べ物だと消化に時間がかかりますが、アルコールは細胞に直接溶け込むので、割とすぐに血中濃度が上がります。自分を過信せず、アルコールと付き合ってください」

取材・文／田村菜津季