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お値段4万1800円!サッポロビールがジーンズを作った理由

2023.01.15

■連載/阿部純子のトレンド探検隊

黒ラベルの世界観を反映したこだわりのアップサイクルジーンズ

サッポロビールの会員制サイト「CLUB 黒ラベル」内にある EC ショップ 「サッポロ生ビール黒ラベル THE SHOP」にて、ビールの副産物から作ったアップサイクルジーンズ「黒ラベル Malt & Hops Series Yellow Stitch JEANS」(4万1800 円 送料・税込)が昨年12月に発売された。

黒ラベルのアップサイクルジーンズは、昨年4月に続き第2弾となる。初回の販売では30本限定で約1600件の応募があり大きな反響を呼んだが、第2弾は希望する人に届けられるように数量制限なしで販売する。初回は黒のステッチ(画像左)だったが、今回は黒ラベルのロゴと同じビールカラーのイエローステッチ(同右)を使用している。

「サッポロ生ビール黒ラベル」のアップサイクルジーンズとブランド戦略について、サッポロ生ビール黒ラベル ブランドマネージャー 齋藤愛子氏と、ジーンズの商品開発を担当した荒木進之介氏に話を伺った。

「ビールの製造過程で生じる副産物はこれまでも廃棄することなく、飼料や肥料などに100%有効活用していましたが、これらの用途だけではなく、ブランド価値を上げるような活用ができないかを検討した結果、身近なビールを通じてお客様のサステナブルを考えるきっかけ作りになればとアップサイクル製品に取り組むことになりました。

黒ラベルは発売から45年を超えるお客様に長く寄り添ってきた商品であり、おいしさはもちろん、世界観にも共感して選んでいただき、黒ラベルを選ぶことがお客様の自己表現にも繋がるようなブランド価値を目指しています。自己表現のアイテムであるアパレルと親和性が高く、特にジーンズは長く履いてそれぞれの味が出てくる経年変化の楽しみ方が黒ラベルブランドの目指す姿と共通していることから、ジーンズとして製品化しました」(齋藤氏)

黒ラベルのアップサイクルジーンズは、ビール作りの工程で麦汁を搾ったあとに残るモルトフィードや、ホップの収穫時に出る茎や葉などビールの副産物を素材として使用している。

さとうきびの搾りかすからデニム製品への加工で知られる「SHIMA DENIM WORKS」(沖縄県浦添市)の技術でこれらの副産物をパウダー化し、岐阜県美濃市の老舗製紙メーカー「大福製紙」がパウダーにマニラ麻を混ぜ合わせ和紙加工、さらに和紙を縒って紙の糸(和紙糸)にする。広島県福山市の「ジーンズソムリエ」で和紙糸から生地を作り、熟練の職人が手作りで仕上げた、原料加工から製造までオール国産のジーンズだ。

「ビールメーカーが作る製品となるとブランド色が出てしまいがちですが、企画を担当した荒木が、『ジーンズとしてそもそもかっこよくなければ、こだわりを持っている黒ラベルファンのお客様の期待には応えられない』と、ジーンズの魅力を追求し、デザイナーと議論を重ねて作りました」(齋藤氏)

「レザーパッチの黒地に黒の刻印というさりげなさも注目して欲しいポイントです。黒ラベルのロゴをそのまま刻印するとノベルティのような印象になってしまいますし、ビールの副産物を使って作ったことだけを前面に出したくなかったので、ジーンズらしいデザインを活かしながら、細かい部分にビールや黒ラベルに関わるモチーフを使っています」(荒木氏)

レザーパッチ、トップボタン、リベットはオリジナルで、トップボタンはサッポロビールの原点でもある『開拓使麦酒醸造所』の五稜星マークと開業年、リベットには麦のデザインが施されている。

「洗い加工をしていないリジッドジーンズですので、履き込むことでその人ならではの味が出てきます。また、和紙糸という独特の素材を使っているので、通常のジーンズとは少し違った経年変化も楽しめるのではないかと思います。

和紙から作った糸の特性で生地の厚さがある割には軽く、通気性が良いので、季節を問わず快適に履くことができます。強度確認も行っており、従来のジーンズと遜色がなく、洗濯も通常通りにできます」(荒木氏)

黒ラベル初の女性ブランドマネージャーが語るブランド戦略とは

今回のアップサイクルジーンズを含め、この数年で黒ラベルはさまざまなブランドアクションを打ち出しているが、背景には黒ラベル初の女性ブランドマネージャーである齋藤氏の存在がある。

齋藤氏はコロナ禍にあった2020年4月に黒ラベルのブランドマネージャーに就任。黒ラベルが展開しているキャンペーンやコミュニケーションに触れるプラットフォーム「CLUB 黒ラベル」を昨年4月にリニューアルし、コンテンツを強化や提供価値を高めるブラッシュアップを行った。リニューアル後は会員数が約10万人増加し、昨年11月末時点で会員数は約40万人。2026年までに100万人の黒ラベルファンとつながる場を目指している。

「CLUB 黒ラベル」のコンテンツのひとつ「サッポロ生ビール黒ラベル THE SHOP」は、黒ラベルブランド初のオンラインショップ。“黒ラベル体験を販売する”というコンセプトで、直接商品の黒ラベルを販売するのではなく、背景にストーリーがあり、個性や世界観を感じられるオリジナル商品を扱うのが特長だ。

「黒ラベルは発売45周年を超えるロングセラーブランド。これまでのビールの提供価値を超えて、世界観に共感して選んでいただくブランドを目指すことを大きなビジョンに掲げており、新しいチャレンジ、イノベーションを起こしていくのがミッションだと思っています。

サッポロビールはビール党のお客様が多く、中でも黒ラベルは男性が好む硬派なイメージで、ビールを長年飲んでいる違いが分かる人しか飲まないブランドという印象をお持ちの方もいます。しかし、ブランドとしての鮮度を保っていくためには絶え間なく新しいお客様を呼び込んで、ロイヤルユーザーに育てていくサイクルが必要となります。

だからといって、単純に女性層や若いお客様を取り込むといった戦略ではなく、黒ラベルのビジョンを実現していく中で、結果として新たなお客様の共感も得ることができ、こだわりを持って生きる大人そのものを増やしていけるようなブランドになりたいと思っています。

新型コロナの影響でお客様のビールに求めるニーズもこれまで以上に変化しており、タイムリーに潮流をキャッチしながらECを含めて展開していきたいと考えています」(齋藤氏)

齋藤氏は営業経験が全くなく、マーケティング一筋というブランドマネージャーとしては珍しいキャリアでもある。

「決まったキャリアを歩まないとできないということも変えていきたいと思っていましたし、入社当初に配属された東海北陸本部では、現場を見ないとマーケティングはできないという思いから営業担当者に頼んで、一緒に営業車に乗って店舗を巡ったこともありました。キャリアとしての営業経験がなかったことがハンデだとは感じていません。

私たちのチームには、自分と逆バージョンで、マーケティングを一切やってこなかった者がマーケティングの部署に来るなども全く違うキャリアを歩んできたメンバーが揃っています。マーケティングに関しては年次や性別に関係なくチャレンジできるような環境にあり、ロングセラーブランドの黒ラベルですが、メンバーは20、30代で構成されています。

歴史のあるブランドなので軸はぶれないようにしながらも、守りだけにならず攻めにも転じられることがミッションですので、アップサイクルデニムもチャレンジングのひとつです」(齋藤氏)

【AJの読み】黒ラベルのブランドパーソナリティーを具現化したリジッドジーンズ

サッポロビールでは、ビール製造工程で発生する副産物や廃棄物はほぼ再生利用されており(「廃棄物削減の取り組み」)、ビールは製造上で廃棄するものがほとんど無いサステナブルな商品ではあるが、アップサイクルされ別の製品として販売されるのはジーンズが初となる。

「黒ラベル Malt & Hops Series Yellow Stitch JEANS」はウォッシュ加工されていないリジッドジーンズ。ウォッシュ加工されたジーンズと比べるとゴワゴワしていて固さがあるが、体の動きに合わせたシワ跡や色落ちの具合など、ジーンズの醍醐味でもある自分の体に合わせて育てる経年変化が楽しめる。

ジーンズ通に好まれるリジッドジーンズと黒ラベルには「こだわりのある人が選ぶ」という共通点があり、まさに黒ラベルのブランドパーソナリティーを具現化した製品といえるだろう。

文/阿部純子

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