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うつ病で辞めた元社員に会社が「1270万払え!」と報復訴訟、裁判所が下した結論は?

2023.01.15

こんにちは。

弁護士の林 孝匡です。

宇宙イチ分かりやすい解説を目指しています。

今回は裁判例のザックリ解説です。

社員さんがうつ病になって会社を辞めたんです。

すると会社は、

「うつ病なんかウソだろ」
「1270万円の損害が出たから払え!」

と訴訟を起こしてきました。

~ 結果 ~

会社が撃沈しました。
(プロシード元従業員事件:横浜地裁 H29.3.30)

だけでなく、裁判所は社員さんの味方に。

・この訴訟提起は違法だわ
この社員さんに100万円の慰謝料を払いな

と命じました。

以下、詳しく解説します。

どんな事件か

会社は、コンピューターのソフトウェアなどの販売を行っていました。

Yさんは20代後半の方です。

入社後、どんどん心の調子が悪くなり、約8ヶ月で退職を決意しています。

以下、時系列に沿ってザックリ解説します。

H26
4.1 入社

徐々にうつ状態へと進行していったんだと思います

12.20 @居酒屋 Yさんが部長に「辞めたい」と伝える
12.21 話し合い(Yさん・Yさんの母・部長2名)
    結果、退職に向けて動き出しました

▼社長がYさんの社員寮へ (12.25)

Yさんの母から「息子と連絡がとれない」と連絡が入ったので、社長たちがYさんの社員寮へ。Yさんとの話し合いの中で社長はこんな発言を ↓

「お前は電話に出られるしまぁ、一応話もできるから、まだ軽い方なんだと思うよ」
「男がお前の年齢でうつになると、人生変わるぞ」

などと発言(裁判所は「多少配慮に欠けていた」と認定)

その後、Yさんは実家のある北海道に帰省しました。

H27
1.7 不安抑うつ状態と診断される

▼社長はYさんのうつを疑いまくり

1月21日、再び社長の発言です。Yさんの父と弟に対して、

「部長に『うつなんだ』って連絡してきたんですよ」
「こんな計画的なうつあるんですか」
「職場の誰もうつだと気が付かないぐらいな状況で…うつになるという」

などと発言。

1.8 退職届を郵送
1月末 引っ越し
2.1 転職先で仕事をスタート

▼ 社長がYさんの自宅を突き止める

執念ですね。損害賠償請求する気マンマンだったんでしょう。社長はYさんが通勤する様子も確認したと認定されています。探偵ですな。

▼会社が報復に出る

ついに会社が動き出しました。

3.17 X社がYに内容証明郵便を送る(約1188万円を払え)
5.13 X社が訴訟を提起

▼Xさんの容体がさらに悪化する

6月には、Xさんはストレス障害と診断され入院。その後、北海道に帰省しました。

裁判所の判断

会社が撃沈しました。

裁判所の判断は以下のとおりです。

▼ Yさんがウソをついていたとはいえない

診断書や通院などの経緯を見て、Xさんの「うつ病だった」との主張は真実だと認定しました。

★ ポイント

証拠なしに「うつ病だったんです!」と主張してもだいたい裁判所はスルーします。「それを認めるに足りる証拠はないグッバイ」みたいな感じで。なので、通院して診断書などをもらっておきましょう。裁判は証拠が命です。

▼ 会社に損害は出ていない

裁判所は「Xさんが業務引き継ぎをしなかったとしても、会社が主張するような損害は生じない」と判断。会社は以下の損害を主張してたんですがが、すべて撃沈しました。

× 取引先からの支払いが減額された 20万円の損害
× 取引先から増員が取り消された 1080万円の損害
× その他もろもろ 約170万円の損害

★ ていうか、会社が訴訟を起こしたことは違法だ

裁判所はザックリ「ゼッタイ無理なの分かっててYさんを訴えてるよね。違法!100万円払え!」と判断。

■ 訴訟提起が違法になるケース

 少し難しくなりますが、以下のケースだと訴訟提起が違法になります。

 訴えの提起は、提訴者が当該訴訟において主張した権利又は法律関係が事実的、法律的根拠を欠くものである上、同人がそのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たのにあえて提起したなど、裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠く場合に限り、相手方に対する違法な行為となる(最高裁:S63.1.26)

で、裁判所は今回の会社の訴訟提起は違法だ!と判断しました。1270万円という大金のを請求したことも裁判所の怒りに触れているようです(Yさんの月給の5年分以上と認定)

さいごに

「業務引き継ぎをしなかったら訴えるぞ!」と言われることがあると思うんですが、万が一訴えられても負けるケースは少ないと思います(自分しか知らないパスワードを会社に伝えずトンズラした場合などは負けるかもしれませんが)

パワハラ会社などで心身の不調を来している場合は超最低限の引き継ぎで構わないと思います。引き継ぎうんぬんでトラブったら、社外の労働組合か弁護士に相談してみましょう。

今回は以上です。

「こんな解説してほしいな~」があれば下記URLからポストして下さい。

では、また次の記事でお会いしましょう!

取材・文/林 孝匡(弁護士)
【ムズイ法律を、おもしろく】がモットー。コンテンツ作成が専門の弁護士です。
webメディアで皆様に知恵をお届け中。「こんなこと解説してくれや!」があれば、下記URLからポストお願いします。
 https://hayashi-jurist.jp(←プロフィールもコチラ)
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