ビジネスシーンでも度々耳にする四字熟語。特に、戦争や武術を由来とする四字熟語は、ビジネスとも相性が良く、さまざまな言葉が使われる。「徒手空拳」もその一つだ。
同僚や友人の「徒手空拳」の姿を見て、自分は避けたいと思うか、応援したいと思うかは意見が分かれるところだろう。言葉の意味を知ることでビジネスパーソンとしての教養が深まるのはもちろんだが、仕事上のあらゆるシチュエーションに当てはめて考えることで自分の身の振り方を想像するきっかけにもなるはずだ。そこで本記事では、「徒手空拳」の意味と言葉の由来、具体的な使い方、類語や英語表現について解説する。
徒手空拳の読み方と意味は?
徒手空拳の読み方は「としゅくうけん」。武器を持たずに素手で戦うことを言い、転じて、後ろ盾となるものが何もない状態で物事に当たることを指す。
「素手で戦うこと」を意味する空手用語が言葉の由来
徒手空拳は、空手に由来する四字熟語だ。徒手の「徒」は、空っぽな状態を意味しており、空拳の「空」も、同じく中身がないことを意味する。似た意味を持つ「徒手」と「空拳」を2つ合わせて用いることで、「素手で戦う」という意味が強調された言葉となっている。
なお、空手はもともと素手で戦う武術であり、拳は剣や槍などの武器にも匹敵すると考えられている。そのため、徒手空拳にも「無謀なこと」「勝ち目がない」といったネガティブな意味はなく「助けのない状態で未知の分野に挑戦する」といった前向きなニュアンスを持つ点が特徴だ。
ビジネス用語としても使われる「徒手空拳」
「徒手空拳」は、ビジネスシーンでも頻繁に登場する。例えば、資金援助を受けずに事業を始めたり、自分1人でプロジェクトを立ち上げたりと、頼れるもの(お金、身分、地位、人脈など)を何も持たない状態で物事に当たることを指す場合が多い。
「徒手空拳」の使い方・例文
・経験者のいないプロジェクトだが、徒手空拳で進めていくつもりだ。
・昨年独立し、今は事業を軌道に乗せるために徒手空拳の日々です。
・強豪校との試合に徒手空拳で挑む。
徒手空拳の類語や英語表現は?
徒手空拳と似た意味を持つ言葉(類語)は多い。それぞれの言葉の細かな意味の違いを知っておくと、誤用も防げるため、ぜひ覚えておこう。ビジネスや学業で英語に触れる機会が多い場合は「徒手空拳」の英語表現を押さえておくのも良いだろう。
徒手空拳の類語
・赤手空拳(せきしゅくうけん)
「赤手」とは、徒手空拳の「徒手」と同じく、手に何も持っていないことを指す四字熟語。言葉の意味も徒手空拳と同じ。
・裸一貫(はだかいっかん)
自分の体以外に資本となるものを何も持たないこと。「貫」とは中国・日本で使用されていた貨幣の単位で、江戸時代は一文銭が1,000枚(千文)で「一貫」となる。米1升(約1.5kg)が一貫に相当し、金額としては大きくない。
・身一つ(みひとつ)
自分の体一つ、自分一人だけであることを指す言葉。前向きな意味となるか、後ろ向きの意味となるかは文脈により異なる。
・丸腰(まるごし)
武士などが腰に刀を差さないでいる状態。転じて、武器を持っていないことを指す。空手用語である「徒手空拳」と比較すると、武士が本来持つべき武器(刀)を持っていないことから、ネガティブなニュアンスを持つ場合が多い。
・無位無官(むいむかん)
特別な地位や肩書がないことを指す四字熟語。身一つと同じく、文脈によってポジティブな意味とネガティブな意味の両方を持つ。
・孤軍奮闘(こぐんふんとう)
少数の軍勢が孤立した状態で戦うことを表す四字熟語。転じて、援助する者がいない状況で、一人(もしくは少数)で努力することを指す。「徒手空拳」と比較すると、ポジティブな意味を持つ点では共通するが、「素手」の意味はほぼなく、援助者がいない部分が強調される。
・徒手格闘(としゅかくとう)
素手を使った格闘術を指す用語。軍隊や警察組織などで訓練されている戦闘技術で、素手のほかにナイフや警棒、トマホークなどの武器を使った戦い方全般を習う「近接格闘術」の1つとされる。自衛隊で行われている徒手格闘術は「自衛隊格闘術」とも呼ばれる。
徒手空拳を英語で言うと?
徒手空拳が持つ意味のうち、「素手であること」を表現したい場合は、「being empty-handed(なにも持たずに)」「bare hands(素手)」などが該当する。
一方、「資金がないこと」を意味する場合は「penniless(お金がない)」、また、「誰の援助も受けない(なんの後ろ盾もない)こと」を意味したいのであれば、「By myself, I have nothing(自分自身以外のなにもなく)」などの表現を使うと良いだろう。
文/編集部