自宅のお風呂場などで、カビ取り剤などを誤って使用することで塩素ガスを発生してしまい、塩素ガス中毒を起こすことがある。よく液剤に「まぜるな危険」と書かれているアレを、実際に不注意でまぜてしまうこともあるのだ。
そこで今回は、筆者の体験談を踏まえ、家庭での塩素ガス中毒の恐れや注意点を専門家に聞いた。
塩素ガス中毒になりかけた体験談
筆者は最近、塩素ガス中毒になりかけた。先日、知人の家のドアのカビ取りに訪れた清掃業者による作業中に居合わせたところ、酸性のシミ抜き剤とアルカリ性のカビ取り剤を重ね塗りしたことで塩素ガスが発生した。
はじめはまるでプールの塩素のようなニオイが気になる程度だったが、急に息が苦しくなり、せき込むようになっていった。徐々に喉が焼けるように痛くなり、目もヒリヒリと痛みはじめ、その場にいられなくなった。
業者に何が起こっているのかを尋ねたところ、重ね塗りしてはいけないものを重ね塗りしたとのこと。本来であれば、まずシミ抜き剤を塗った後、数日置いて乾いた後で、改めてカビ取り剤を塗るてはずが、今回は省略して2時間程度の乾燥で重ね塗りしたという。この程度の塩素ガス発生は日常茶飯事だという。
後日、使った薬剤と成分を調べたところ、最初に塗ったシミ抜き剤は酸性であり、「まぜるな危険!塩素系の製品と一緒に使う(まぜる)と塩素ガスが出て危険です」としっかり明記してあった。重ね塗りしたのは強力カビ取り剤で、アルカリ性。こちらも「まぜるな危険!酸性タイプの製品と一緒に使う(まぜる)と塩素ガスが出て危険です」と明記されていた。つまりまぜたら明らかに危険なもの同士をまぜてしまったわけである。
塩素ガス中毒の発生件数
数日、喉の炎症が続いただけで軽度で済んだが、今回の体験を受け、どのくらいのリスクがあるのかを調べてみた。こうした塩素ガス中毒は家庭の風呂場掃除等で使うカビ取り剤でも起き得るということだ。
化学物質や動植物の毒によって起こる急性の中毒について、応急処置などの緊急情報を提供している公益財団法人日本中毒情報センターの2021年の受信報告((11)品目別 受信件数 表11-1. 品目別受信件数 家庭用品(1/5))によると、塩素ガス発生については次の結果となっている。
漂白剤:8件
カビ取り剤:4件
住居用洗剤(カビ取り剤を除く):2件
トイレ用洗剤:1件
合計15件。件数はそれほど多くはないようだが、漂白剤とカビ取り剤については件数が多いことからリスクが高いことがわかる。