InstagramやLINE、Twitter、ゲームなどのアカウント乗っ取りやなりすましが増えているといわれる。もし自分が被害にあったら、どのようなことが起きるのか、また何か損害が生じた場合に訴えることは可能か、対策手順を弁護士に聞いた。
SNSやゲームのアカウント乗っ取り被害とは?
SNSのアカウントが乗っ取られて、勝手にメッセージ送信されてしまったり、身に覚えのない投稿をされたりすることがある。またオンラインゲームのアカウントが乗っ取られて、ゲーム上のアイテムを盗まれてしまうというケースもある。
また乗っ取ったアカウントとつながりのある友人に、電子マネーの購入を依頼するメッセージが送られることもある。友人からのメッセージと信じ込んだ友人は、電子マネーを購入し、電子マネー番号を送信してしまうということも…。
ただのいたずらにとどまらず、アカウント乗っ取りを通じて金銭を騙し取るなどの行為に及ぶことから、大きな問題となっている。
アカウントを乗っ取られた!どうする?弁護士に聞いた
もし自分のSNSやゲームアカウントが盗まれ、アカウントが乗っ取られた際に、どのような対処をするべきだろうか。現在、インターネット上の誹謗中傷問題に取り組んでおり、インフルエンサーの保護・救済に尽力している弁護士の高橋 直氏に話を聞いた。
「まずは、IDやパスワードを変更し、アカウントを取り返し、すでに何かしら投稿等されていれば削除することが考えられます。すでにパスワードが変更されているような場合、SNSやゲームの運営者に報告のうえサポート等に従って適切な対応をとります」
「次に、アカウントにクレジットカード番号が紐づいているような場合にはクレジットカード会社に連絡して利用停止などを依頼します。友人・知人にスパム広告が送られることもあるため、つながっている友人・知人に連絡することも推奨されます」
2次被害が発生した場合の対処法
ただアカウントを乗っ取られただけでなく、さらに不正な行為を行われることもある。クレジットカードの不正利用やあらぬ情報を流されて風評被害にあったり、個人を特定できる画像を流出させられたりするなどだ。そうしたケースへの対処法について高橋氏は次のように回答する。
「いずれの場合も、パスワードが変更され、それなりに被害を被っていることを想定されているので、基本的な対応は変わらないでしょう。
すなわち、運営、クレジットカード会社、友人・知人に連絡したり、不正アクセス禁止法等に該当しないか警察に相談したり、被害状況によっては弁護士に相談のうえ、いわゆる発信者情報の開示請求をしたりすることが考えられます」
発信者情報の開示請求とは、プロバイダ責任制限法に基づく情報開示請求のこと。プロバイダに対して、インターネット上で他者を誹謗中傷するような表現を行う等、他者の権利を侵害した発信者の住所や氏名、電話番号等を情報の開示を求めることができる制度だ。開示には条件を満たす必要があるため、まずは弁護士等の専門家への相談が必要となる。
「画像流出、風評被害の場合、開示請求が可能な場合もあるため、弁護士への相談を優先することが推奨されます。クレジットカードの不正使用の場合、警察への相談を優先することが推奨されます」
損害賠償請求はできる?
もしアカウントが乗っ取られたことで大きな損害を被った場合、損害賠償の申し立てはできるのだろうか?
「そもそも犯人が特定できなければ損害賠償請求を行うことは困難です。もし特定できれば、次の場合には損害賠償請求が認められる可能性もあるでしょう」
1.個人情報等を投稿され流出した場合
2.なりすまし投稿等により自身の名誉権が侵害された場合
3.クレジットカードが不正利用されることにより実際に経済的損失を被った場合
もしSNSやゲームの乗っ取り被害にあった場合には、すぐにしかるべき対処をしたい。またケースによって、また犯人が特定できるかどうかによって損害賠償請求ができるかどうかは変わってくる。被害が大きい場合は弁護士か警察に相談しよう。
また、乗っ取られないための日頃の予防も重要だ。
複数のアカウントでログイン情報(ID、パスワード)を使い回さない、知人友人に安易に教えない、定期的に変更する、ウイルス感染やフィッシングメールなどの予防策をとるなどして万全の予防策をとっておこう。
【取材協力】
高橋 直氏
千葉県弁護士会所属。早稲田大学法学部卒業、早稲田大学大学院法務研究科修了。
大きな社会問題となっているインターネット上の誹謗中傷問題に意欲的に取り組んでおり、インフルエンサーやYouTuber、VTuber(バーチャルYouTuber)の保護・救済に尽力している。刑事事件にも精力的に取り組み、実績を残している。
Authense法律事務所プロフィール
取材・文/石原亜香利