昨年から続く波乱の米国株マーケット。
特にハイテク株などに投資していた方にとっては厳しい時期が続いています。
もちろんS&P500などの指数全体に投資をするインデックス投資は何があっても継続すべきです。しかしそれだけでは物足りず、また興味はあるものの個別株投資で分散投資をするのは難しい、または満足できない。そのように考える投資家の方にとって検討の余地があるのが「ダウの犬」と呼ばれる投資方法ではないでしょうか。
そこで今回はダウの犬投資法の特徴と2023年に大注目の理由について解説していきます。
ダウの犬とは
ダウの犬(Dogs of the Dow)とは、ダウ工業株30種(ダウ平均)と呼ばれる米国主要業種を代表する企業で構成された銘柄から投資先の企業を選ぶ方法として、米国株に存在するアノマリーのひとつです。
ダウの犬投資法はダウ工業株価指数のパフォーマンスを上回ることを目指しており、これは1991年に米国で運用会社を経営していたマイケル・B・オヒギンズ氏が著書「Beating The Dow(ダウの犬投資法)」で提唱した投資の考え方です。
ではなぜダウの犬と呼ばれているのかというと、英語のスラングで犬はくだらない、ダメなものなどの意味を持っているように、ダウ工業株の中で配当利回りの高い10銘柄に投資をすること投資戦略です。いいかえれば配当利回りが高い銘柄とは直近の株価のパフォーマンスが悪いことが多く、その分リバウンドが期待できるというわけです。
このダウの犬投資法の王道のやり方が年末の最終取引日に、米国で「ブルーチップ」と呼ばれる優良株が集まるダウ工業平均株価指数のなかで、配当利回りが高い10銘柄を機械的に均等額分散投資する方法です。
購入後は1年間ポジションを変えずに保有しておき、翌年の年末の最終取引日に売却し、その時点で配当利回りが高い10銘柄を新規で均等額分散投資を繰り返すシンプルな投資方法、これがダウの犬投資法と呼ばれる投資戦略です。
また年に1度の売買であるため、売買コストも抑制できるメリットもあります。
なぜダウの犬投資法に注目なのか
なぜダウの犬投資法に注目なのかというと、それは米国と欧州の金融引き締め策と景気動向の行方の思惑が重なり、しばらくマーケットが落ち着かないと考える投資家が多いことが株価の値動きからも見えてくるのです。
実際、FRB(米連邦準備制度理事会)やECB(欧州中央銀行)は利上げ幅を0.75%から0.50%へと縮小することが決定しています。しかしインフレ減退が確認できた米国と異なり、欧州の場合、インフレはピークアウトしつつあるものの、低下ペースが遅いため、ECBの目標値である2%に到達するのは24年末と言われています。またロシアがウクライナに侵攻して以降、エネルギーの供給懸念や価格高騰の影響を大きく受けており、短期的な不足懸念は後退しつつも今後も継続的な供給不安が残っています。
またFRBパウエル議長もECBラガルド総裁も当面はタカ派発言を継続することが想定されており、これはマーケットにはマイナス材料です。
こうした景気後退局面と特に欧州のインフレ予測とエネルギー問題などの不確定要素が払拭されない限り、株価も不安定な状態が続くと考える投資家が一定数いると考えられます。
これらの要因から、確実に配当を得られて株価のリターンも期待しやすいダウの犬という投資戦略に注目が集まりつつあるのです。
ダウの犬の平均リターン
2000年から2018年末までのダウの犬投資法の平均リターンは約9%です。同期間のダウ工業平均株価指数は7.5%であることから、一定のメリットがあることが過去のデータでも証明されています。
あえて比較するとS&P500の過去50年の平均リターンは約9.73%であるため、長期投資であればS&P500の方が期待値は高いはずです。しかし短期で見た場合、ダウの犬も無視ができないリターンを出していることから、相場環境によっては投資手法としても検討できると思います。
またダウの犬の優れている特徴として、ルールに従ってポートフォリオを構築するだけで結果的に配当利回りを重視した分散投資が可能になることです。
またダウの犬のルール通りに2023年投資をした場合の該当銘柄は下記のとおりです。
・VZ/ベライゾン・コミュニケーションズ
・DOW/ダウ
・INTC/インテル
・WBA/ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス
・MMM/3M
・IBM/IBM
・CVX/シェブロン
・CSCO/シスコシステムズ
・JPM/JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー
・AMGN/アムジェン
ぜひ投資を検討する際の参考にしていただけたらと思います。
ダウの子犬にも注目
あまり知られていませんが、ダウの子犬という投資戦略もあります。
これはダウの犬に該当する10銘柄から株価の低い5銘柄に投資する方法です。
株価が低いため1年をかけて株価の値上がりを狙う手法ともいえます。
また過去の実績も見逃せません。2000年から2018年末までのダウの子犬投資法の平均リターンは約10%とダウの犬を上回っています。
もちろん分散投資という観点からはダウの犬が優れているものの、ダウの子犬も無視できない投資手法のひとつといえるでしょう。
おわりに
2022年は米国経済にとって厳しい時期が続きましたが、さまざまな指標を見る限り、2023年の後半から2024年にかけて景気の底入れや企業業績の見通しも徐々に回復することが見込まれています。とはいえ本格的な株価上昇までもうしばらく時間がかかることを想定するならば、ダウの犬投資法で確実に高配当を狙う投資戦略も検討の余地があると筆者は考えます。
文/鈴木林太郎
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