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【深層心理の謎】比喩を用いた説明が説得力を持つのはなぜ?

2023.01.06

 考えてみれば『ガリバー旅行記』は不思議でもなんでもない話だ。身の回りのモノの“サイズ感”に混乱させられることは特に珍しいことではないだろう。

“サイズ感”に戸惑う体験が続いていた

 六本木駅で乗った都営大江戸線を中井駅で降りた。夜7時になろうとしている。A2出口に接した駅前通りを左に進む。

※筆者撮影

 大江戸線に乗った時の記憶をほかの路線と間違えることはまず無いように思える。その理由は乗ってみれば一目瞭然で、大江戸線ならではの独特な狭い車内にある。東京メトロ銀座線の車両もかなり小ぶりだが、大江戸線はそれよりさらに一回り小さい。この車両よりも小さい電車は都電荒川線などの路面電車しかなさそうだ。

 通りを進む。仕事がそれほど立て込んでいるわけではないが、部屋に戻ってからはまだやることが少しある。飲むわけにはいかないがどこかで何か食べてから帰るとしようか。

 大江戸線の車両のコンパクトさは特に他路線から乗り換えた時に実感するものだが、乗り換え利用ではなかった今日でもその小ささが妙に印象強く感じられた。けっこう久しぶりに乗ったことも影響しているのかもしれない。

 大江戸線に乗ることはささやかな『ガリバー旅行記』的な体験とも言えそうだが、思い返してみると最近は“サイズ感”に惑わされることが増えたようにも思えてくる。

 先日、ネット通販で冬用のタートルネックセーターを買ったのだが、少し大きめのを着てみたいと思いLサイズを注文してみたところ、到着したのを着てみると大き過ぎた。昨今のトレンドに乗って大きめに作られているらしく、きっとMサイズでもけっこう大きいことがわかる作りだった。

 部屋着にしてもいいので返品や交換はしないが、想定外のサイズであり“失敗”であったことは確かだ。

 服のサイズについては個人的に常にMかLで迷うところなのだが、実物を手に取ることのできないネット通販では特に判断が難しいケースが少なくない。加えてトレンドでいつもより大きめに作られていたりするとさらに難しくなるというものだ。トレンドについての予備知識が無かったことも“敗因”の1つである。

 ネット通販におけるこうした“失敗”を完全に排除することはできそうもないのだが、それでも実際に店に行くのは時間に余裕がある時のみに限られるのでネットで服が買えるのはありがたい。くれぐれも“サイズ感”には慎重を期し、ひどい“失敗”だった場合は返品・交換を見込んだうえで今後も利用していくことになるだろう。

わかりやすい比喩表現でリサイクル率が向上

 通りを進む。妙正寺川に架かる短い橋を渡って少し進めば西武新宿線の中井駅に通じている。ここで再び電車に乗って高田馬場に向かってもいいのだが、それほど急ぐ用事もないので少し川沿いを歩いてみることにしたい。橋を渡ってすぐ右を川沿いに進む。

※筆者撮影

 リアルな『ガリバー旅行記』という意味では、たとえばアメリカに行く際には現地の洋服はもちろん、食べ物などのサイズも日本とは違うことを前もって理解しておく必要がある。実際に現地の映画館でSサイズのドリンクを注文したならば日本的な感覚ではLサイズかそれ以上の量のカップで提供されてくるのだ。

 現地で現物を肉眼で見ればなかなか衝撃的ともいえる出来事だが、しかしそれは「向こうのSサイズはこっちのLサイズ」と予め見込んでおけばそれほどショックを受けることはないはずだ。

 だがそういう予備知識が無く、想定外の“サイズ感”の違いに直面すれば思わぬ誤算や失敗に繋がるだろう。またそもそも現物を見たことがなければそのサイズや量がイメージできなかったりもする。

 予備知識が無い者に向けてどうしたらサイズや量をより適切に把握してもらうことができるのだろうか。最新の研究ではそこでは「比喩」が有効な働きを見せることが報告されていて興味深い。


 消費者による電子廃棄物の持続可能な処分を促進する要因を探ります。

 一連のフィールドおよびオンライン実験を通じて、消費者の意図と行動をテストします。

 回収場所に物理的に近いことで、消費者の持続可能な処分が強化されます。

 比喩は、処理の円滑さと持続可能な処分を容易にすることができます。

※「ScienceDirect」より引用


 英・ポーツマス大学をはじめとする研究チームが2022年11月に「Technological Forecasting and Social Change」で発表した研究ではわかりやすい比喩的なメッセージは、有毒な電子廃棄物の処理への取り組みに役立つことを報告している。

 年々増えつつある使わなくなったスマホのバッテリーをはじめとする電子機器の廃棄物(e-wast)は自然環境に有毒な物質を含んでおり適切な処理が必要とされているが、残念ながら回収率は芳しくない。どうすれば電子廃棄物の適切な処分を人々に促すことができるのか。

 研究チームは消費者が電子廃棄物を安全に処分するように促す決定的な要因は何かを特定するための調査を実施した。

 社会実験の場所となった北イタリアの町で研究チームは各所に電子機器のバッテリー回収ボックスを設置して、住民100人の家にチラシを投函してその旨を知らせた。バッテリーが環境に与える悪影響と回収を呼び掛けるチラシの書面には2つのパターンがあり、1つは主に数値データで説明する書面で、もう1つは比喩的な言語表現を多用して説得するものであった。

 その後、住民の動向が追跡されたのだが、興味深いことに比喩的な文章が記されたチラシを投函された住民のほうが回収ボックスを利用する確率が有意に高まっていたのである。

 バッテリーが自然界に廃棄されると「オリンピックプール140個分の水」が毎年汚染されると書かれているチラシを読んだ住民のほうが、数値で「約3億5400万リットルの水」が汚染されると記されたチラシを呼んだ住民よりも、リサイクルへの関心が高まり実行に移す傾向が強まったのだ。

 よくあるたとえで言えば東京ディズニーランドの広さが「51万平方メートル」であると説明されるよりも、「東京ドーム11個分」であると比喩的に表現されたほうが広さのイメージがつかみやすくなるのだろう。

 数値を出されるよりも、アメリカのドリンクは「Sが日本のL」や、今のトレンドでこのセーターのサイズが「1サイズアップ」していると聞かされたほうが確かにイメージしやすいと言える。セーターを買う前にそうした指摘を小耳に挟んでいなかったのは残念至極だ。

町洋食のボリュームを驚きながらも堪能

 川沿いの道を進む。周囲は完全に住宅街だが、この小川のおかげでなかなか趣がある。

※筆者撮影

 駅前通りから歩いて最初の橋にやってきた。左に伸びる路地には西武新宿線の線路の踏切りが見える。その先のほうにはいくつか飲食店らしき明かりも見える。左折して線路を渡ることにしたい。

 歩いていると10メートルほど先にある踏切りの信号が点滅し警報音が響きはじめた。小走りになる。

 踏切りに侵入した時点ですでに遮断機のバーが下りはじめていたが、小走りのまま無事に渡り終えた。本気めのダッシュをせずに済んだのはよかった。

 踏切りを渡り終えた先はちょっとした商店街になっていて、左には美容室にもんじゃ焼きの店、右には接骨院にいかにも老舗の炉端焼き居酒屋が並んでいる。

 居酒屋の先には路地を挟んで洋食店があった。なぜ洋食店とすぐにわかったのかといえば、店先に長いシェフ帽子をかぶった恰幅の良いコックさんの人形が置いてあるからだ。身長は1メートルくらいあるだろうか。大衆的な“町洋食”の店であることは一目瞭然である。入ってみることにしよう。

 店内はL字型のカウンターがあるだけでいたってシンプルで小ぢんまりとした空間だ。外観もそうだが年季が感じられる店内も“昭和感”で溢れている。

 カウンターの内側が厨房になっていて男性が1人で切り盛りしているようだ。先客は2人でいずれも中年男性だった。好きな席に着くようにと促されて、店の中ほどのスペースに着席する。

 カウンターの目の前の台の上に水が入ったコップを置かれて注文を聞かれる。厨房の壁に貼ってある写真付きの「おすすめメニュー」の中からハンバーグとグリルチキンのセットをお願いした。最近はなるべく揚げ物を食べないようにしているので消去法の結果のメニューである。

 台の上のコップを手に取ってカウンターテーブルに置く。1人で切り盛りされているのだがら、料理もこの台の上に置かれて提供されることは明らかだ。半セルフサービスといった感じだろうか。

 揚げ物を絶対に食べないということはないのだが、食べなくて済む選択があるのなら極力それを選ぶようにはしている。カキフライなどはむしろ好物ではあるが、1年のうちにせいぜい3回くらいありつければ良しというスタンスでいたい。

 料理がやってきた。目の前の台の上にご飯に味噌汁、お新香に続いてメインディッシュが置かれる。1つずつカウンターテーブルに置いて並べてみるとなかなかすごいボリュームであることがわかる。さっそくいただこう。

※筆者撮影

 ハンバーグのソースは見た目からは意外なほどにあっさりとした味付けでこれはこれでいい。グリルチキンはよく見ると2枚もある。否応なくご飯がすすんでいきそうだ。

 ハンバークの欠片を口にした直後にご飯をひと口運ぶのだが、何気なく器に盛られたご飯の量を見定めてみるとけっこうな量である。カウンターテーブルの目の前に立てかけてあったメニューに「ライス大盛り無料」の文字が記されてあったことは確認していたのだが、注文時には何も言わなかったのでこのご飯は普通盛りということになる。少なくとも自分が知る限り、世の普通の店での大盛りかそれ以上だ。

 休むことなく食べ続ける。グリルチキンのほうもなかなか美味しい。……しかし問題はその量だ。ひょっとすると食べきれないのではないかという考えがよぎらないこともなかったが、ご飯を半分以上食べ進めたところで何とか完食できそうな手応えは感じられてきた。

 迂闊にもしご飯の大盛りをお願いしていたら残すことになる可能性はきわめて高いだろう。だが少なくともこのお店の常連さんたちはこの量を前提にして通っていることは間違いない。ガリバーの“巨人の国”ではないが、これもまた“サイズ感”に惑わされる体験である。

 まぁ慌てることもない。ゆっくり味わいながら食べ進めたい。食べ終えて店を出たら電車には乗らずに腹ごしらえを兼ねて歩くことにしようか。

文/仲田しんじ

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