日本の慣用句には、遠い将来のことを百年と表すものが多く存在する。「百年の計」もその一つ。新年に「一年の計は元旦にあり」という言葉を使うことはあるが、「百年の計」は日常生活で見聞きする機会はあまりないかもしれない。
そこで本記事では「百年の計」の意味や使い方、似た意味の言葉などを紹介する。意味や使い方を知っておけば、幅広いシーンで活用できるはずだ。
百年の計とは?
百年の計の読み方は「ひゃくねんのけい」。まずは、この言葉の意味や由来をはじめ、使い方や例文も紹介していく。
遠い将来までを見据えた計画のこと
「百年の計」は、百年ほど遠い将来までを見据えた計画を意味し、遥か先のことまで考慮に入れた周到な計画を表す言葉として使われる。前向きな意味合いを持つ「百年の計」は、長い時間を掛けてまで行わなければならないといった、否定的なニュアンスで用いられることはない。
由来は中国の書物
百年の計の由来は、中国春秋時代の斉の政治家、管仲によって書かれた『管子』とされている。ただし管子は、篇によって書かれている思想や言い回しが異なることから、実際は何人もの筆者による論文をまとめたものとする説もある。
『管子権修第三』には「一年之計莫如樹穀、十年之計莫如樹木、終身之計莫如樹人(一年の計は穀を樹うるに如くはなく、十年の計は木を樹うるに如くはなく、終身の計は人を樹うるに如くはなし)」という一節があり、文中の「終身之計」がのちに「百年之計」という言葉に変化したようだ。
なお、同文中の「一樹一穫者穀也、一樹十穀者木也、一樹百穫者人也(一樹一獲なる者は穀なり、一樹十穫なる者は木なり、一樹百穫なる者は人なり)」から「一樹百穫(いちじゅひゃっかく)」という四字熟語が誕生している。
百年の計の使い方・例文
「百年の計」は、遠い将来までを考えた計画として用いられるが、長い時間を掛けて人を育てることを表したい時に使われる場合もある。例文をいくつか見ていこう。
【例文】
「成果を上げるには、百年の計を立てる必要がある」
「百年の計があってこそ、柔軟な対応が可能になるのです」
「百年の計は国家だけでなく、地方や企業にとっても大切なものだ」
「百年の計は子を教えることにある」
「国家百年の計は教育にあり」
「百年の計」を含む言い回しとその意味
次に、百年の計を含む言い回しとその意味を見ていこう。
百年の計は人を植うるにあり
「百年の計は人を植うるにあり」は、有名な故事成語の一つ。管子の一節「一年之計莫如樹穀、十年之計莫如樹木、終身之計莫如樹人(一年の計は穀を樹うるに如くはなく、十年の計は木を樹うるに如くはなく、終身の計は人を樹うるに如くはなし)」から引用された言葉で、遠い将来まで計画を立てるなら人材を育てることに尽きるということを意味している。
国家百年の計
「国家百年の計」は、国家における百年の計を意味する慣用句。国家が立てる、遠い将来までの計画のことを指す。ちなみに、「国家百年の大計」と表す場合もあるが、特に大きな意味の違いはないとされる。
百年の計に似た意味を持つ言葉は?
遠い将来までを見据えた計画を表す「百年の計」には、似た意味の言葉や言い回しがいくつも存在する。ここでは例としてその一部を紹介しよう。
・長計(ちょうけい)
遠い将来のことまで考えた、先の長い計画のこと。百年の計と同義で使われる。
・遠計(えんけい)
遠い将来についての遠大な計画のこと。こちらも百年の計と同義で使われる。
・鴻図(こうと)
大きな計画や遠大な計略、もくろみのこと。計画の大きさに重点が置かれた言葉で、遠い先を見通した計画を意味する百年の計とは若干ニュアンスが異なる。
・深謀遠慮(しんぼうえんりょ)
中国の『文選』を由来とする四字熟語。先のまた先のことまで深く考え、周到に計画を立てて準備することを表している。百年の計と同義で使われる言葉の一つ。奥深い見通しを持ったはかりごとを意味する「深謀」に加え、遠い先のことまで考え抜くことを意味する「遠慮」が組み合わさることで、より具体的な様子が表現されている。
・遠謀(えんぼう)
遠い将来まで見通した計略のこと。百年の計と同義で使われる。
「百年」を用いた慣用句
「百年の計」は、「百年」を遠い将来として表現している言葉の一つ。最後に、「百年」を同義で使用した慣用句を紹介しよう。
・百年の恋も冷める(ひゃくねんのこいもさめる)
長い間続いた恋でも一瞬で冷めてしまうこと。恋人の嫌な面を見てしまった時の様子を表す場合に用いられる。
・百年の不作(ひゃくねんのふさく)
取り返しのつかない失敗、不幸のこと。例えば、「悪妻は百年の不作」という言葉で、悪妻を持って結婚に失敗してしまうことを表現する。
文/編集部