グローバルで100兆円規模に上ると予測される「におい検知」の市場。今、注目を集めているのが、においセンサーとAIを開発するレボーンだ。エンジニア、経営者として同社を率いる松岡広明氏に迫った。
ロボットに熱中して、やがて人間に関心を持つように。嗅覚のデジタル化に挑む。
社員数30人。外苑前のラボで研究に取り組む。
目にあたるカメラや、耳にあたるマイク、口にあたるスピーカーは付いているのが、当たり前なのに…。
臭気センサーは酢酸、アンモニア、アセトアルデヒドなど、においを発する成分を検知するもの。生き物の嗅覚とはメカニズムが異なる。嗅覚は解明されていない領域が多く、臭気成分を再現しただけで、同じにおいをつくることはできないという。
人間がどのようににおいを認識するか。明確に示す仕組みを提供できれば、おもしろいサービスになると直感した。
嗅覚は極めて個人的なもの。においを感じる強さも、感じ取る種類も、人によって異なる。同じ人でも、体調や気分によって変わるかもしれない。それを人に伝えるのは、さらに難しい。
例えば、視覚ならRGBやカラーコードのような、定量的な指標がある。香度は同じように、においを客観的な指標として表す工夫だ。
嗅覚の確かなモノサシをつくる。化学的な成分ではなく、あくまで人間の感覚に基づいたアプローチが、同社の真骨頂だ。
人間の鼻には、それぞれ異なるにおいをキャッチする400程度の嗅覚受容体がある。受容体からの情報を脳が処理することで、人間はにおいを知覚する。松岡氏らは、これを人工的なハードウェア、ソフトウェアで再現しようと試みる。
においの知覚と表現は、極めて個人的なものであり、文化や経験に左右される。だからこそ、定量的なモノサシをつくるインパクトが大きい。
官能評価やフレーバークリエイションを担当する商品開発統括の永田富治氏と。医師は特定の病気を持つ患者のにおいを、経験的に嗅ぎ分けているという。においの可視化で、より早く正確な診断ができるようになる。
食品や香粧品は理解を得やすい分野。そのほか、工場の機器やオイルのメンテナンス、麻薬探知犬や火薬探知犬の代替えなど、幅広い活用の可能性が期待される。
松岡氏は調香師や利酒師、ソムリエのしごとに代表されるような、従来的なにおいとの関わりを否定しているわけではない。絵画と写真が共存しているのと同じように、新しいアプローチによってにおいのカルチャーが育まれると確信している。
●レボーン
取材・文/ソルバ!
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